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インクルーシブ保育士の卵たち⑥【リード文同じ:3分で読めます】

私は佐渡保育専門学校の講師を務めています。
3年次の担当科目「インクルーシブ教育・保育実践」では,障害のある子どもに配慮したユニバーサルデザインの保育が実践できるよう,指導案作成と模擬保育を課題としています。
学生は順番に,メインの保育者として,サブの保育者として,2人でチームを組んで20分間の模擬保育を行います。
他の学生は子ども役です。毎回,子どものキャラクターを決めて「それなりに」演じていきます。
「かしこい子」「ふつうの子」「良い方にも悪い方にも引っ張られやすいニュートラルな子」といった具合です。
障害のある子ども役は,毎回,講師の村田が担当し,学生達を困らせたり,戸惑わせたりします。「ASD(カナーまたはアスペルガータイプ),AD/HD(のび太またはジャイアンタイプ),愛着障害」と,村田が演じる子どものタイプは毎回異なります。
授業最終日には,3年間を通して得られた様々な気づきや考えを学生に書いてもらいました。
それを読むと,「学生はここまで育つのだ」と,親バカかもしれませんが,嬉しくなります。
以下に,そのレポートを掲載します。稚拙な文章表現も散見されますが,お許しください。

障害のある子どもを含めた保育を行うときに大切にしたいことを2つの立場から述べてください。
1.全体での活動の中で
子ども達が「今」何ができるのか,何が足りないのか考え,次のステップに進むために必要なことを提示し,経験させてあげることが,保育者の役割だと私は考えます。
障害のある子どもへの配慮は,他の子ども達のためにもなります。けれど,前述の考えを基にすると,どうしても「できない子」に合わせがちになると思います。「できる子」への配慮,例えば制作が早く終わったときのプランなども考える必要性があると考えます。子ども達の個々を受け止めて,伸ばしながら,全体として成長できるようにすることが大切だと思います。
また,活動というと,主活動のことを大きく考えがちですが,一日を通しての活動,排泄や午睡に対しても,ユニバーサル保育を考える必要があると思います。
「障害のある子ども」なのではなく,そういう「個性をもった子ども」なのだと受け止めていけるような保育を行うことが必要だと考えます。
2.個別の対応の中で
加配の先生がつくことで,障害のある子どもがやれることは増えると思います。しかし,活動の中でマンツーマンになりがちで,依存になってしまう可能性も秘めていると感じます。そのボーダーの見極めを加配の先生に一任するのではなく,担任の保育者も共に考え,実践していくことが重要だと考えます。
また,それに伴い,保育者間の連携,コミュニケーションの必要性もあると感じました。保育者同士が信頼関係を築くことができなければ,子どもとも信頼を結ぶことはできないと思います。
障害のある子どもの対応は,そのとき,そのとき直面した時に必要になります。その判断をするためには,知識が必要になります。任せられる所は任せながら,同じ目標をもち,統一した対応をしていくことが大切なのではないかと私は考えます。

いかがだったでしょう。
これを書き,卒業していった学生たちは,現在,保育士として保育所や施設で働いています。
障害や困難なことのある子ども達と出会ったとき,このレポートを書いた自分の志を思い出し,インクルーシブな保育実践を積み上げていってほしいと願っています。

第6回をもって,このシリーズは一旦終わります。

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