通り雨

池袋。灰色の街。まるで屋外でも室内で、晴れも曇りも関係ない空。

ちょうど2年前のことだ。
1人きりで池袋訪れることになった。
目的は、池袋にあるカウンセリングルームで、WAISという知能検査で何らかの診断をしてもらうことだった。
私の人生がうまく行かない原因を知りたくて仕方なかったからだ。


当時の私は一人暮らしをしているのにも関わらず貯金で暮らしていて、半ば引きこもり状態だった。正直外に出るのが辛かったけれど、どうにか重い腰を上げて池袋へ向かったはいいものの、駅へ着いた途端に空模様が一変し、ゲリラ豪雨になった。
もちろん傘はもっておらず、雷の鋭い光と鈍い音から逃げるように、美容室の軒下に避難した。約束の時間まで時間を潰すのは、かなり苦痛だった。

カウンセリングルームにて、先生に事前調査として経歴等を語ったのちに検査が始まった。
自分の能力を数値化し、向き合うのは恐ろしかったけれど、このままじゃいけないと踏み出した一歩だった。褒めてあげたい。

結果は数週後判明するとのことで、検査が終わって帰宅することになったものの、外はまだ土砂降り。
カウンセリングルームからビニール傘を買うためにコンビニに向かうにも、200mほど距離がある上に、いくつか横断歩道渡らなければならなかった。
雨が止む気配はないので、土砂降りに打たれながら赤信号を待つことにした。
歩道には信号待ちの、傘をさした人々が多くいて、私だけがずぶ濡れだった。私に傘を差し出してくれる人はいなかった。

自分の能力を数値化するという苦行のあとだったので、誰かからの優しさがほしかったけれど、与えられることはなかった。
その時の景色はいまでも鮮明に思い出せるほど、なんだか切なかった。

数週後、結果がカウンセラーの方から告げられた。特に何にも該当しないというのだ。(平均)
発達障害でも、境界知能でもない…。

どうせならなにかに当てはまれば、同じカテゴリのなかで生きていけるのに。手掛かりが見つからなくてまた振り出しに戻った気持ちになった。


誰とも共有してない私だけの思い出。当時は途方に暮れて、思い悩んだけれど、時間が過ぎると、愛おしい思い出になる。

それと、雨に濡れて困っている人がいたら傘にいれてあげる。これを学んだ。

最近、雨の日に駅から帰宅する際に、前を歩く人が傘をさしていなかったから、「私の傘に入りますか?」と聞いたら、すごく喜んでくれた。
相合傘で、コンビニまで送ってあげた。
最後に「嬉しかった。あなたにもいいことがありますように」と言ってくれた。

いいことあったよ!

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