北園克衛のコンクリート・ポエトリー

画像1 北園克衛という昭和53年に75歳で歿した詩人がおります。詩人よりもむしろ写真家やデザイナーとしてその業績は重んじられているかもしれません。彼の詩は視覚詩、あるいはコンクリートポエトリーと称される、言葉の意味よりも言葉(文字ではない)の形でポエジーを伝える詩を作りました。しかし、その詩による試みは初期の段階で終わっているようです。有名な詩は、処女詩集『白いアルバム』の中の「図形説」という章に納められています。
画像2 これがその詩の一部です。ネットから拝借しました。「貴婦人」という詩です。写真では横に五号4倍のクワタを並べてみました。おおよそ五号で25文字ぐらいの小さな形の詩です。
画像3 面白いことに、思潮社が出している現代詩文庫では、北園克衛の詩集『白いアルバム』は掲載されているのですが、図形説の部分は掲載されていません。これは面白い現象です。北園克衛の詩における最大と言っても過言ではない作品部分がごっそりと抜け落ちています。それは現代のデジタルチックな印刷では表現できないということなのでしょうか。
画像4 前にも紹介しましたが、デザイナーの山口信博氏が北園克衛の詩を活版印刷で再現する作業をデザインの起源がタイポグラフィー(文字)にあると考えて行ったとのことでした。彼はそのとき8ポの活字を使っています。ここでネットの画像を見る限り、それと詩集『白いアルバム』の寸法を考えると、図形説は主に五号活字で作られたものと推測できます。
画像5 少しずつ、版を組んでいきます。問題は、ここに括弧や罫線を入れてゆくと形が歪みやすくなるので、如何に数値の合うカチッとして版を組むことができるのかということになります。
画像6 出来上がりです。しかし、誤植、罫線が点線だったり、校正すると色々と間違いがあります。
画像7 スタンプインクでとりあえず吸い取ったものです。これから、新字体を旧字体に替えて、誤植を直して、本刷りにいきます。

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