お堅くない貴方へ贈る「ガンダム 水星の魔女」のススメ
今日2024年7月2日で、アニメ「機動戦士ガンダム 水星の魔女」の最終回放送から、1年が経ちます。
この機会に、「興味は有るけど、まだ観てない」という皆さんへ、簡潔に作品を紹介します。
あらすじ
「その魔女は、ガンダムを駆る」
人類が宇宙へと進出した未来。
巨大企業グループを母体とするアスティカシア高等専門学園では、人型機動兵器「モビルスーツ(以下、MS)」の性能試験を兼ねて、学生同士の決闘が行われていた。
その勝者は、グループ総裁の娘ミオリネ・レンブランの花婿となり、莫大な富と権力を得る。
ある日、辺境の星、水星からやってきた転入生の少女スレッタ・マーキュリーは、事情を知らず参加した決闘に勝利。ミオリネと婚約者の間柄になる。
だが。スレッタが駆るのは、禁忌の存在として歴史の闇に葬られたはずのMS、GUND-ARM……「ガンダム」だったのである。
学園ガンダム!?
ガンダムと言えば「巨大ロボに乗って、宇宙戦争する話」というのが、一般的な認識と思います。
しかし水星の魔女は、何と学園物なのです。
もちろん裏には、グループの覇権を巡る企業の思惑や、宇宙へ移った富裕層と、地球に取り残された人々との対立など、シリアスな背景が有り、平和な学園物のままでは終わりません。
それでも、過去作の、突如として戦争に巻き込まれたり、最初から兵士だったりの主人公と比べても「転入生の少女」である主人公のスレッタは、感情移入し易く、歴代でも間口の広さは指折りと言えます。
未来の学園で繰り広げられる、恋、友情、バトル!
構えること無く、スッと入り込める作品です。
百合ガンダム⁉
あらすじでも触れた通り、主人公スレッタは、ヒロイン、ミオリネと婚約することになります。
女性同士です。
第1話「魔女と花嫁」のラスト、
「私、女ですけど」と驚くスレッタに、ミオリネは言います。
「水星って、お堅いのね。こっちじゃ全然ありよ」
このインパクトは非常に強く、放送当時「百合婚」「百合ガンダム」などのフレーズが、SNSのトレンドを埋め尽くしました。
その後、本編内でも、恋のライバルや、2人の婚姻を快く思わない者が現れますが、誰一人、2人が同性であることを問題にはしません。
同性婚が、一つの、当たり前の選択肢と認識されている未来の話なのです。
これは、極めて重要なポイントです。
水星の魔女の物語は、「スレッタとミオリネの関係」と「呪いのMS、ガンダムを巡る因縁」の2つが柱になっていると言えます。
この要素は緊密に絡み合っていて、何せ、かつてガンダムを禁忌のMSとして封印、開発者たちを粛清したのは、ミオリネの父親なのです。
「過去の因縁を知らずに出会い、惹かれ合ったスレッタとミオリネが、ガンダムの呪いに立ち向かっていく」。それが水星の魔女の物語。
ですので、「同性婚、全然あり」という大前提を受け入れないことには、物語を理解するのは不可能です。
ガンダムほどのビッグタイトルで、主役の同性婚を主題とするのは、あまりに斬新な試みだったので、放送時「水星って、お堅いのね」を本気にしなかった……スレッタとミオリネはあくまで友情であり、恋愛は男性と行うと決めつけていた人は、一定数いました。
最後までその思い込みに囚われてしまった中には、作品のアンチと化したのもいます。
これから視聴する方は、第1話の「水星って、お堅いのね。こっちじゃ(同性婚)全然ありよ」の台詞を、「そういう世界観なんだ」と素直に受け止めて欲しい。
それができない、どうしても同性が惹かれ合うのを認められないという方。はっきり言います。観ない方がいいです。
ガンダムの知識は有った方がいいか
過去のシリーズ作品の知識は、無くてよいです。
ガンダムシリーズには膨大な作品が有り、大別すると、初代と同じ世界観の「宇宙世紀シリーズ」と、別の世界観の物語である「オルタナティブ(ファンの間ではアナザーガンダムとも)」に分かれます。
水星の魔女は、後者のオルタナティブ作品群に該当し、他のシリーズと世界観や物語の繋がりは、一切有りません。
ですので、ガンダム=人が乗って動かす巨大ロボぐらいの認識で十分です。
水星の魔女自体が、ガンダムシリーズのファン層の刷新、世代交代を目的に作られた作品であることは、製作陣も公言しています。
それもあって、私個人としては、むしろ過去作品の知識は、無い方がいいとさえ考えています。
放送当時から、視聴者として想定されてない、「お呼びでない」古参シリーズファンが、過去作品と比較して非難したり、女性主人公や同性婚といった新しい要素を受け入れず、特定の男性キャラを「真の主人公」と過剰に持ち上げたり。
そんな「お堅い」人々を見てきましたので、新規でこれから視聴する方には、ガンダムの知識、そこから来る固定観念などは、無い方がむしろ良いと思うのです。
既にシリーズの知識が有る方も、特に「ガンダムは少年の成長物語」のような先入観は、捨ててからの視聴をおすすめします。
プロローグから観るか、第1話から観るか
少し具体的な話をすると、水星の魔女には、第0話とも言える、プロローグが存在します。
これは本編の前日譚で、過去のガンダムシリーズのような、シリアスな作風となっています。
これを観て、従来通りの作風と思っていたら、第1話が学園ガンダムだった……この衝撃も、水星の魔女がスタートダッシュに大成功した、大きな要因でしょう。
そのインパクトを味わう為にも、プロローグから観てほしい……とは思いますが、人によっては、そこで切ってしまう懸念も有ります。
ですので、先に第1話から観るのも有りでしょう。逆にプロローグを観て、従来通りの作風を期待し、本編が合わなかったという人もいます。
ですが、ここまでの紹介文を読んで下されば、元々そういった従来のガノタに向けた作品ではないと、理解して頂けると思います。
お堅くない貴方へ
まとめると、水星の魔女は、学園物、女性主人公、同性愛と、これまでのガンダムシリーズのイメージを覆す試みに挑戦した作品であり、それが成功したかは、各視聴者の判断に委ねられるものでしょう。
そして、これから視聴するなら、上記の要素に惹かれるかで判断するのが良いと思います。
水星の魔女は、SNSを宣伝に活用した作品の、成功例として挙げられることが多いです。
視聴者を巻き込んでの考察や展開予想での盛り上がり。カップリング論争など負の面も大きかったですが、リアルタイムのあの熱狂は、唯一無二だったかもしれません。
ですが、最終回から1年が経った今、こうも思うのです。新しい試みを数多く取り入れた、水星の魔女は、本当は「時が経つほどに、評価が上がるタイプ」なのではないか?
雑音が多すぎたリアルタイムより、今から、まっさらな状態で観る人の方が、楽しめるのでは?
先入観、固定観念に囚われることの無い、「お堅くない」貴方へ。
ぜひ、水星の魔女を見て下さい。完璧な作品とは思っていません。それでも、これが現代の1つの最先端だと、自信を持っておすすめします。
そして叫べスレミオ最高!と‼