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199 2023年5月3日FOMC 利上げ打ち止めの可能性示唆

パウエル議長の発言から;ー
前回(3月22日)のFOMCでは、「SVB等の破たんの影響を見極めたい」ということだったが、今回は、その後起きたFRCの破たんなどを受けて、「(1)今後特に注目するのは信用の引き締まりや中小銀行の信用基準」と言っている。
また、今回のFOMCでは、
(2)今回の利上げで、利上げ打ち止めの可能性を示唆した。
(3)前回同様、今回も「賃金がインフレの主な要因であるとは考えていない」と述べた。インフレの要因は、「供給が固定され、柔軟性ない状況に置かれている」ときに需要が強すぎることとし、「商品の需給が正常な状態に戻ればインフレ率が下がるだろう」と述べた。
(4)パウエル議長は毎回言っているが、今回も、市場が織り込んでいる利下げの可能性について「インフレ率がそれほど早く下がることはないだろう。そのような状況下で利下げに転じることはない。」と市場の利下げ予想とFRBの考えは違うと言っている。

以上のように、FRBはこれまでの金融引き締めで需要が減速し、インフレが沈静化していくと期待しているが、市場が考えているような速いスピードは全く考えていない。
今回のFOMCの内容はほぼ(というか全く)市場の予想通りで、FOMCの結果は直接的に、金利、為替、株式、商品市場に影響を及ぼさなかった。しかし、前日発表された求人件数の予想以上の減少や、いくつかの銀行における多額の預金引き出し、株価大幅下落を受けて、金利低下、ドル安、原油等商品価格下落、株式相場全体の下落が起きている。
なお、これまでなら金利低下は株式相場に好材料だったが、今回の反応はよくわからない。金融不安のリスク回避か、雇用環境軟化⇒需要減少⇒企業マージン低下⇒減益 の連想か?

===パウエル議長のFOMC後の記者会見================ 
2023年5月3日、政策金利を0.25%引き上げ、新誘導レートを5-5.25%とすることを決めた。保有資産の圧縮(量的引き締め)も続ける。

米銀行セクターの状態は3月からおおむね改善し、健全で強靭だ。
米経済は控えめな成長。住宅市場は金利の高騰が影響し弱い。
しかし、労働市場は依然として逼迫(労働者の需要は依然として供給を大きく上回る)している。23年1〜3月にかけ、月平均の就業者数は34万5000件だった。失業率は3月、3.5%と非常に低かった。
半面、労働需給が改善している兆候もみられる。特に25〜54歳の労働参加率はここ数カ月で上昇した。名目賃金の上昇率も緩やかに鈍化する兆しをみせた。

3月の個人消費支出(PCE)の物価指数は前年同月比4.2%上昇した。変動の激しい食品とエネルギーを除くと4.6%上昇した。
インフレは昨年中盤から幾分和らいだものの、目標の2%に抑えるまでの道のりは長い。金融引き締めが効果を発揮するまでには時間がかかる。

与信環境の引き締まり(銀行の貸し渋り)により米経済はさらなる向かい風にさらされるだろう。過去1年ですでに与信環境は引き締まりつつあったものの、SVBやFRCなどの破たんはさらなる引き締まりをもたらす。引き締まった与信環境は経済活動や雇用、そして物価の重荷となる。今後の政策決定は事態がどう展開されるかに左右される。

<地銀の混乱について>
3つの銀行の破綻が最初に起こった3月上旬は深刻であったが、この状況は現在解決し、預金者は保護されている。ファースト・リパブリック・バンク(FRC)の破綻と売却は、深刻なストレスの時期に一線を引く重要な一歩だった。我々は与信枠の状況を注視している。ベージュブックや銀行の融資態度調査からわかるように、中小規模の銀行が与信基準を厳しくし、流動性を強化する必要があると感じている。これはマクロ経済に影響を及ぼす。

<賃金上昇について>
賃金上昇がインフレの要因なら、2%のインフレ率と一致させるためには賃金の伸びを今の5%から3%まで下げる必要がある。
しかし賃金がインフレの主な要因であるとは考えていない

<利上げ停止について>
これまでの利上げの効果が様々なチャネルに表れていることを踏まえると、利上げは終わりに近づいているか、もう到着した可能性もある

<市場が織り込んでいる利下げの可能性について>
インフレ率がそれほど早く下がることはないだろうという見解を持っている。しばらく時間がかかる。そのような状況下で利下げに転じることはない。

<雇用統計やインフレ指標が強かった場合に利上げをするか>
それについては何も言えない。利上げをかなり急速にしてきたこともあり、今はデータを吟味する余裕がある。

<信用状況と利上げについて>
信用状況と利上げとの関係は不透明な部分が多い。我々は信用状況や貸し出しに何が起きているのかをデータで確認できる。それを意思決定に反映させる

<どんなデータに注目するのか>
今後特に注目するのは、信用の引き締まりや中小銀行の信用基準についてだ。

<5〜5.25%という政策金利は十分に引き締まった金融環境か>
3月の会合で出した経済・政策見通し(SEP)では参加者の予測の中央値で5〜5.25%が金利上限の適切な水準と考えていたことは事実だ。6月の会合でそれを再検討するかはわからない。

<民間金融機関が保有する債券を担保に資金を供給する「リバース・レポ」の役割について>
個人投資家は引き締めのサイクルと同様に、預金をより利回りの高いものに移していった。これはごく自然な流れだ。異例だったのは機関投資家が保険対象外の預金を移動し、分散させたことだ。リバース・レポは金利をあるべき水準に保つためにあるもので、うまくその目的を果たしている。

<インフレが2%を達成したときに、FRBの目標のもうひとつである最大雇用は維持できるのか>
労働市場は非常に逼迫している。失業率は全体として50年来の低水準だ。賃金は長期的に2%のインフレ率と合致する水準を数ポイント上回っている。
労働市場は非常に強く、インフレが目標を大きく上回るなか、我々はインフレ抑制に注力する必要がある。幸いなことに、今のところは失業率が上昇することなく、(インフレの鈍化を)実現できている。

<企業の利益率がインフレ下で急拡大した。利益率の拡大は物価高の原因になり得るか>
供給が固定されており価格を上げるしかないのだ。商品の需給が正常な状態に戻り、待ち時間や過不足がなくなることでインフレ率が下がり、企業の利益率も下がっていくだろう。

<景気後退の可能性>
今回の声明文で『追加策がどの程度必要か決定する際には、これまでの金融引き締めの累積的な効果や経済や物価に時間差で与える影響を考慮する』とし、前回までの『追加の政策措置が適切』としていた文言から修正した。これは意味のある修正であり、6月の会合で利上げ停止をするかどうかの議論をするつもりだ。
FRBのスタッフの景気見通しは全般にマイルドな景気後退となっており、失業率は従来の景気後退時よりも低い見通しだ。

<半数のFOMC参加者が景気後退を示唆するような見通しを立てている。なぜ(パウエル氏は)景気後退は避けられると楽観的に考えているのか>
労働市場は依然として過剰な需要がある。歴史的に見てありえないことは理解しているが、失業率の大幅な上昇を避けながら、市場を落ち着かせることが可能であると感じている。賃金の伸びが鈍化しているのもいい傾向だ。景気後退の可能性を否定しているわけではないが、回避できる可能性の方が高いとみている

<米国債がデフォルトした場合の景気への影響は>
債務上限の引き上げは極めて重要なことで、それができないことは前例のないことだ。仮に引き上げが出来ない場合、景気への影響は計り知れない。


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