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400 FOMC(2024年1月31日) パウエル議長何を言っているのやら

 2024年1月31日のFOMC後のパウエルFRB議長の会見
  
パウエル議長の記者会見、聞けば聞くほど何を言っているのかわからない。その部分だけを取り出せばわかるが、他の部分ではそうは言ってなかったりする。これまで言ってきたこととも違う点もある。今回は、特にその傾向が強い。多くのメディアやXへの投稿では、わからないところは省いている。つまり、ニュースなどはかなりフィルターがかかっている。または、部分だけを取りだしている。
 
はっきりしていることは、「利下げには、インフレ率が目標に向かって持続可能なペースで進んでいるという確証を得られる根拠が必要だ。」ということだけ。
今回わかったことは、今は、利下げが遅れて経済が過度に弱まるリスクよりも、利下げを急ぎ過ぎてインフレ鎮静化の進展を逆行させるリスクの方を懸念しているということ。でも、次回の会合では変わるかもしれない。
また、今のインフレ高止まりのリスク理由が明確ではない。
モノのインフレは大きく低下してきたが、さらに低下するのには時間がかかると言っているが、別の時には今はマイナスになっているとも言っている。サプライチェーンは平常時まで戻っておらず、回復には時間がかかると言っているが、信用できない。今のインフレの元凶は賃金の上昇のようなことをいっている(It will take a couple of years for wages to normalize また、物の下落に対してサービス価格が依然高い)が、賃金上昇率の低下がインフレ抑制に必要ないとも言っている。だからと言って、生産性の上昇が元の水準以上に高まるとは考えていないようだ。
 
ということで、最終的にわかることは、
「金融緩和方向にある。ただし、今後の利下げペースは年6回よりも少ないだろう。雇用減にならなければ、たぶん、年3回だろう。」ということ
だ。
 
簡単なまとめ(ロイターより)
 
FF金利の誘導目標を5.25-5.5%で据え置いた。
国債、機関債、住宅ローン担保証券の保有量の削減を継続する。
を決定。
 
*経済は良好
*雇用の伸びは引き続き力強く、労働市場の状況は依然タイト
*供給網はまだ完全に元に戻っていない
*インフレは大幅に緩和したが、目標を上回っている
 
*金融政策は過去2年間で大幅に引き締められ、政策金利はピークに達している公算
*われわれは動くことが早すぎることと遅すぎることのリスクを管理している
*早すぎるもしくは過度に大幅な緩和はインフレの進展を逆行させるおそれ
*同時に、遅すぎる利下げは経済を過度に弱める可能性
*1年前は、景気軟化が必要だと考えていたが、今はインフレ率低下には、必ずしも成長率の低下が必要だとは考えていない
 
*利下げが可能な段階に到達するには、インフレが持続的に低下しているとの一段の確認が必要
*モノ(財)のディスインフレで追い風を受ける可能性がある
*家賃低下が実現し、浸透すると考えている
*インフレ低下に対する確信が得られる可能性が高い
*年内の利下げが適切となる可能性高い
 
雇用減は予想していないが、雇用が悪化すれば利下げする
*労働市場が力強く経済が健全という基本シナリオの下、利下げのタイミングについて慎重になれる
 
*理論上はインフレ率が低下すると実質金利は上昇するが、政策を機械的に調整することはできない
 
もう少し詳しいまとめ(日経より)
 
米経済は確実なペースで拡大
23年10‐12月期の米実質GDPの成長率は3.3%。強い需要や供給網の改善が成長を支えた。
住宅市場の活動は住宅ローン金利の高止まりもあり、控えめだった。高金利は企業による設備投資にも重くのしかかった。
労働市場はなお逼迫しているものの、労働需給は順調にバランスを取り戻している。過去3カ月を見ると、雇用者数は月平均で16.5万人増えた。失業率は3.7%と低い。
名目賃金の伸びは鈍化し、求人も減った。労働需給の差は縮まったものの、需要はなお供給を上回る。
インフレは過去1年間で和らいだが、依然として目標の2%を上回る。12月の個人消費支出(PCE)価格指数は前年同月比で2.6%上昇した。変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア指数は同2.9%上昇した。
利下げには、インフレ率が我々の目標に向かって持続可能なペースで進んでいるという確証を得られるさらなる根拠が必要だ。
 
――インフレ率が低下しているという確信を得るために、何を見る必要があるのか?
良いデータが継続的に出てくればその答えはおのずと出る。
1年前は(インフレを抑えるには)経済活動の軟化が必要だと考えていたが、そうではなかった。力強い成長と力強い労働市場を望んでいる。労働市場が弱含むことを望んでいるのではない。インフレ率が過去6カ月のように下がり続けることを望んでいる。
 
――インフレ率の下落を疑わせるようなデータはあるのか?
インフレ率の鈍化の多くが財インフレ低下から来ている。財のインフレは大幅なマイナスとなっている。時間の経過とともに財インフレ率は横ばいになり、おそらく0に近づいていく。
私たちが気にしているのは総体的な数字で、一部の項目が全体を引き下げているのでは目標達成とは考えられない。
 注 要は、総合CPIではなく、コアCPIであり、スーパーコアCPIなども見ている。

――政策金利を5%以上に維持する正当な理由は?
委員会のほぼすべての参加者は、利下げが適切であると考えている。インフレ率は低下していると感じている。
しかし、利下げに踏み切るには、インフレ率が実際に2%まで持続的に低下していることを確認する必要がある。
注 つまり、正当な理由は確証がないということ。
 
インフレ率が下がれば実質金利は上がる。だからといって、インフレ率が下がれば、政策を機械的に調整できるということではない。また、私たちは中立金利がどの時点にあるのかを確信を持って知っているわけでもない。
注 つまり、利下げするとすれば、利下げが遅れることと利下げを急ぎ過ぎることのバランスを安定的に保つということ。
 
――現在の政策は引き締めすぎではないか?
インフレ率が2%台に一度達することだけを期待しているのではない。長期的に2%で落ち着いていくことを期待している。当面は、堅調な労働市場を保ちながらインフレを沈着させたい。
 
今回、利下げの提案はなかった。私たちは健全な意見の相違を持っているし、それは良い政策を作るために必要不可欠なことだと思う」
私たちのすることを誰もが好むわけではないとしても、 互いの意見に耳を傾け、妥協することができる。
 
――米個人消費支出(PCE)のコア指数の上昇率は過去6カ月平均で1.9%ほどだったが、FOMCメンバーは24年にかけインフレのコア指数の上昇率が2.4%に落ち着くとみている。予測を見る限り24年中に利下げを3回実施するようだが、今後半年の物価上昇率が過去6カ月のペースを維持した場合はどうするのか?
 
次の会合でインフレ率の予測を更新する。12月の会合で発表した予測は3カ月前のもので、新たに入手したデータに基づき対応する。インフレ率がなお高いと判断すれば今後のインフレ予想も高くなるし、上昇率が低ければ予想も低くなる
注 苦しい言い訳
 
――つまり、物価上昇率が今の水準を維持した場合、実質金利はさらに引き締め的になる。少し調整が必要なのではないだろうか?
 
6カ月平均でみたPCE上昇率を実際の物価上昇率と仮定した場合、異なる政策を進めていたかもしれない。しかし、インフレ率が持続可能なペースで2%へ向かっているというさらなる確証が必要だ。
注 6カ月平均(6カ月前比年率)は重視するが、判断は前年同期比ということ。前年同期比だが、それも持続するとの確証が必要。
 
――今後数カ月の間にバランスシートの縮小ペースを遅らせる可能性は?
今回も議題に上がった。次回3月の会議では、バランスシートの問題について突っ込んだ議論を始める予定だ。まだこれらの議論の始まり段階にある」
 
――FRBが金利引き下げとバランスシートの調整を平行して決定する可能性はあるか?
金利とバランスシートはそれぞれ独立したツールだと考えている。利下げとバランスシートの縮小を同時に続けるかもしれない。どちらの場合も正常化といえるが、厳密な金融政策という観点からは、一方は緩和、一方は引き締めと言えよう。 同時並行は予定していないが、あり得る。バランスシートの縮小を継続するような状況になることも想定しており、3月に向けて注視していく。
 
――住宅価格は思ったほど早く下がっていないようだが?
住宅市場は住宅の在庫という問題がある。都市部から郊外への移住が進むなか、住宅建設が追いついていないという現状がある。これらの問題は我々が直せるものではないが、賃貸物件においての家賃の高騰はインフレの一環として我々の仕事に深く関わる。データを見ると、今現在家賃の上がり方は小幅で、ほぼ横ばいになっていると分かる。この傾向が続けば、インフレ率にも必ず反映される」
 
――雇用の悪化も利下げにつながるのか?
私たちはそのようなことを求めているわけはではない。だが、もし労働市場に予期せぬ弱さが見られれば、間違いなく早期利下げに傾くだろう。
しかし、労働市場も堅調でインフレ率も下がってきている。このような場合、いつ(金融引き締めを)緩和するかという問題には、慎重に対応すべきだ。
インフレ率が低下していても、労働市場が堅調なら利下げには慎重。この辺は金融緩和への転換判断が微妙になる。 

――インフレを下げるためにはどれだけ現在の金利の水準を維持する必要があるのか?
サプライチェーンの回復と労働市場の鈍化を通じ、インフレ沈静が進んできた。
名目金利が5.3%として、それからインフレの見通しを差し引くことによって中立金利を把握することができる。同時に昨年の経済成長率が3.1%前後であったこと考慮に入れる必要がある。その意味で引き締め気味の金融政策の影響が急激に表れる可能性がある。
注 私には何を言っているのかわからない。
 
―― ハードランディング(硬着陸)の可能性はなくなったか?
サプライチェーンと労働市場の正常化が一巡するにつれて、経済成長は緩やかになると予想している。労働市場がリバランスするにつれ、雇用創出は減速している。年間インフレ率は2%の目標値を上回っているが目標に近づいている。全体像としては好調だと見ている」
 
――今後の景況を見る上で注目するデータは。
コロナのパンデミックは終わり、労働市場も平常に戻りつつある。これからはより従来型の経済に注目していく。モノのインフレも大きく低下してきたが、さらに低下するのには時間がかかるだろう。サプライチェーンは平常時まで戻っておらず、価格に反映されるまでには時間がかかる」
 
――生産性の伸びについて?(インフレ率2%に見合う賃金上昇率について何度も言及あったが、)
コロナ感染の拡大期を振り返ると、労働者が解雇された一方、事業活動は比較的安定していたことで生産性が急上昇し、その後大きく減退した。そして23年には高い生産性が見られた。今はコロナ禍の経済を乗り越える流れの中にいると思われる。
「私は生産性レベルが元の水準まで戻ると予想する。在宅勤務が大きな生産性を生むとは思えないし、AI(人工知能)は、少なくとも短期的には大きな影響はないだろう」
 
――労働市場は平常な状態に戻ったといえるのか。
賃金上昇率や雇用コスト指数(ECI)がパンデミック前の水準まで戻らなくてもインフレの目標は達成できるだろう。労働市場は平常な状態に近づきつつあるが、まだその状態には達しておらず、達成するにはまだ何年もかかるだろう。これは正常なプロセスだ。
賃金上昇率はパンデミック前と比べたら依然として高いが、2%のインフレを達成する方向に向かっているのは間違いない」
 
――大統領選挙に関わる議論で、多くの共和党候補があなたに3期目の任期を渡す意欲はないと発言している。3期目を目指す意欲はあるか?
それに関しては意見はない。私の優先課題ではない。仕事をすることに集中している。今年はFRBと金融政策にとって非常に重要な年になり、理事会全体で注力している。

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