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102 日本の家計調査に見る不思議

家計調査を見ていて気になることがある。
以下は、「二人以上の世帯のうち勤労者世帯」のデータである。単身世帯は含まれないので注意。

(1)2019年から所得は顕著に増えている。しかも、配偶者の所得も増えている(共働きが増えたということもある)。家計全体では、過去5年間に年率2.5%の割合で増えている。政府は3%の増加率を目指しているので、かなり近づいてきている。

赤線は右軸

(2)収入は増えているのに消費は増えない
可処分所得(=実収入- 税・社会保険料)は増えているのに、消費は増えていない。2016年までは可処分所得の74%が消費に回っていた。残りは貯蓄や住宅ローンの返済。しかし、今は64%程度に減っている。
理由がよくわからない。これでは、賃金が上がっても消費は増えず、景気は良くならない。

(3)消費性向(可処分所得に占める消費支出の割合)は消費税増税とともに低下している。消費税増税がどのように作用したのだろうか?

(4)消費は増えないどころか減らせるものは減らしている。

以上はどうなっているのだろう?
政府は分析しているのだろうか?
私が思うに(あくまで私の想像)、所得の増加は消費性向の低い高年齢世帯、高所得者世帯に偏っていて、消費性向の高い若年世帯、低所得層の収入は増えていないのではないか?
先日、新NISA制度では年間の非課税投資枠は最大360万、生涯非課税投資枠は1800万円になった。これ自体はいいことに間違いないが、毎年360万円も定年までに1800万円も投資できる人はどのくらいいるのか?
政府のやることはピント外れだと思う。

本当にやらなくてはいけないことは、分配である。具体的には低所得層の税率をさらに下げ、高所得層の税率を上げることだ。勿論、金融所得課税率も引き上げる。

岸田首相は、比較的高所得者の賃金をさらに上げ、保有資産を増やすことに熱心だ。一方で、所得税は広く課税するつもりだ。低所得層のことは全く頭に入っていない。
私が不思議でならないのは、野党も増税反対は言っても、累進課税強化は言い出さないことだ。金融所得課税に関しても後ろ向きのような気がする。
人口的には低所得層の方が圧倒的に多い。政策的には国民の支持を得られやすいと思うが、どうなっているのだろう?


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