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164 2023年3月22日FOMC 金融不安の影響を見極めてから

今回のFOMCでは、SVB等の破たんの影響(家計や企業の与信環境に圧力を与え、労働市場の情勢やインフレを抑制し、利上げと同じ・あるいはそれ以上の効果がある)を見極めたいということ。
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以下、主に日経より

決定内容は
・FF金利の誘導目標レンジを0.25%引き上げ4.75〜5%とした。
・また、国債、機関債、ローン担保証券の保有量の削減を継続する。
 
・経済見通しでは、FOMC参加者が見込む23年末の政策金利は中央値で5.1%。つまり、あと1回の利上げを行って、その後据え置くということ。
・24年末の政策金利の予想は4.3%。つまり、来年は3~4回の利下げ。
 
・ここ2週間、いくつかの銀行で深刻な問題が発生したが、連銀貸出制度や新規に設立した融資ファシリティーなどの金融システムを安定させるツールで対応する。銀行システムは高い流動性と資本を有しており、健全で強靭だ。
 
それでも、「過去2週間の出来事は家計や企業の与信環境に圧力を与えるものであり、それが労働市場の情勢やインフレを抑制する効果があり、この金融市場の逼迫は利上げと同じ効果、あるいはそれ以上の効果があることは確かだ。もちろんそれを現時点で正確に分析することはできないので、我々は0.25%の利上げと声明文を『継続的な利上げ』から『いくらか追加の引き締めが適切になりうるsome additional policy firming may be appropriate』という文言に変えた」 <some だのmayだの、利上げでなくpolicy firmingとか非常に微妙な言い方だ。>
「今後はデータ次第だが、とくに与信環境の引き締まりによる影響を精査することが重要だ」
 
・インフレ率は依然として高い水準にある。直近の経済指標は予想以上に強かった。雇用市場は依然タイト。しかし、賃金上昇には緩和の兆しがあり、需要は依然として供給を上回るが、時間の経過と共に均衡すると予想。賃金上昇率は23年末に4.5%となると予想した。
 
・政策当局者は全般的に抑制された成長が続き、成長に下方リスクとの見解
 
 
Q:銀行システムのストレスを踏まえて利上げの停止を議論したか。
パウエル議長:「会合前の数日間に利上げ停止の可能性も議論した上で、今回の決定に至った。これは極めて強いコンセンサスに基づく決定だ。これは労働市場とインフレが予想以上に強い状況だからだ。実際のところ今回の(銀行危機という)出来事以前は、昨年12月のSEP (Summary of Economic Projections)」時に予想した以上に大きな利上げを継続していく必要があるようにみえた」
<当然だが、会合時でなくても、互いに議論している>
 
Q:スイスの金融大手UBSによるクレディ・スイス・グループの買収が決まったとき、安堵したのではないか。
パウエル議長:「我々は皆さんの期待通りにスイス当局と関わってきた。うまくいかないかもしれないという懸念はあったが、結果として前向きなものになった。市場も受け入れており、現時点ではうまくいったと言える」
 
Q:SVB以外の銀行に同じような問題がないか。
パウエル議長:「問題は預金保険の対象でなかった預金の比率が大きく、資産のデュレーション(平均残存年数)リスクが大きかったというSVBの固有の問題で、銀行システムの弱さから来るものではない。銀行監督当局はSVBの問題を認識していた、しかし問題が起きた。これについて調査をする必要がある」
 
Q:FRBによる金融機関への支援は、バランスシートを縮小させていることと矛盾しないか。
パウエル議長:「人々はそれぞれの方法で量的緩和(QE)や量的引き締め(QT)を考えるので、私の考えを明確にしたい。最近の世界的な(中央銀行による)流動性の供給は我々のバランスシートを拡大させることになったが、その意図や効果は長期債の購入でバランスシートを拡大させる場合とは全く異なる。長期債の大規模購入は、国債価格を上げ、長期金利を押し下げる、政策スタンスの変更を意味する」
「(直近の)バランスシートの拡大は、最近の緊張によって生じた特別な流動性需要に対応するための、銀行への一時的な融資によるものだ。金融政策のスタンスを変えることを意図していない。銀行システムに対する信頼を強化し、金融情勢の急激な収縮を食い止めるという意図した効果を発揮していると思う」
 
Q:どのような状況になれば利下げは正当化されるか。
パウエル議長:「金融情勢は従来の指標で見るよりも、より引き締まった状態にある。従来の指標は金利と株式に重点を置いており、必ずしも貸出金利を捉えているわけではないからだ。銀行の貸出状況などに焦点を当てれば、より引き締まっていることを示す指標がある。しかしどの程度深刻なものなのかが疑問だ。しっかり見極めて、政策決定に反映していく」
 
Q:現在のインフレの状況は。
パウエル議長:「モノのインフレは過去6カ月間に低下傾向になっているが、そのペースは望ましいほどではない。コアPCE指数の44%を占める住宅賃貸の価格は2月時点ではみられなかった低下傾向が出ている。一方で住宅以外の価格や労働市場はまだ軟化がみられない。与信環境の引き締まりと景気鈍化の関係についてはいろいろな議論があるが、問題は現在の与信逼迫がどれほど続くのかわからないことだ」
 
Q:今は十分に金融引き締め環境にあるという認識か。
パウエル議長:「銀行で起きている事象から与信環境の引き締めを目にしている。利上げと同じことを、利上げの代替方法で実施することも考えている。重要なのはインフレ率を2%まで低下させるのに十分な引き締め政策が必要ということだ。そのすべてが利上げである必要はなく、与信環境の引き締まりからくることもある。」
 
 
 
以上を受けた市場の反応が不可解。
FF金利の誘導目標レンジが4.75〜5%、年間予想5.1%なのに、1年金利は4.57%、2年金利は3.89%、10年金利は3.45%に低下。全くFRBをrespectしていない。市場は近いうちに、景気悪化、インフレ沈静化を見込んでいるようだ。
そうなのに、株価の下落は小さい。何を考えているのかわからない。
為替相場は、金利低下を受けて、ドル安になっている。

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