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8月の米インフレ指標のPCE価格指数は高い伸び、また、消費支出も増加

FOMC の金融政策を規定しているものは連邦準備法(Federal Reserve Act)第2条A項です。「雇用の最大化と物価安定の促進を目指す」ことがFOMC に課せられ責務であるという内容です。
現状は雇用の最大化がかなり達成されている一方、物価上昇率がとんでもなく高くなっています。なので、FRBは、二つの責務のうち、物価抑制に全力を注いでいます。たとえ金融政策が雇用の最大化を阻害するようでも、物価抑制を優先すると明言しています。
物価安定について、FOMCは、2012年1月25日に、個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)の前年同期比上昇率2%を長期目標(longer-run goal)とすることを定めました。
「長期」としていることから、価格変動の大きな食品・エネルギーを除くコア指数を意識していると思われます。エネルギーや食品のような短期的な価格のブレが大きな項目は除くということです。
 
さて、米国におけるインフレの尺度には、労働統計局が公表する消費者物価指数(CPI)と経済分析局が公表する個人消費支出物価指数(PCE)の2つがあります。
CPIは、PCEより発表が早い、社会保障の支払いを調整するために使用される、インフレリンク債などの参照レートでもあるという点で、より多く報道されます。
しかし、連邦準備制度理事会(FRB)は、個人消費支出物価指数をインフレの目標としています。
 
2つの指標は、概ね似たような傾向をたどっているものの同一ではありません。一般に、消費者物価指数のほうがやや高くなります。
両者の違いは、各項目のウェイトが違うこと、項目のカバレッジ(スコープ)が違うことです。
後者については、CPIは購入した商品やサービスに対する自己負担支出のみをカバーしています。PCEには、消費者は直接支払わないが、雇用主が負担する項目が含まれます。例えば、雇用主が提供する医療保険(メディケア、メディケイド)などです。
各項目のウェイトでは、住宅費の違いが大きいです。CPIでは40%程度だったと思いますが、PCEでは15%程度だったと思います(私の記憶では。未確認)。
また、両者の計算方法も異なります。興味があれば、次のサイトをご覧ください。
米国の個人消費支出価格指数について
https://www.dbj.jp/reportshift/topics/pdf/no047.pdf
https://www.nli-research.co.jp/files/topics/42040_ext_18_0.pdf?site=nli


前置きが長くなったが、米国で8月のPCE(個人消費支出)が発表になった。 
日経の記事は、
米消費支出物価、8月6.2%上昇https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN300Y10Q2A930C2000000/

8月の米国のコア個人消費支出価格指数前月比は0.56%上昇。FRBは少なくとも過去の平均(0.14%)程度までは抑制したいので、とても容認はできないだろう。

しかも、コアではないトータルの個人消費支出価格指数前月比上昇率は、原油価格上昇率が大きく低下しているのに、依然高い伸びのままだ。

10月3日に発表されるISM製造業指数の価格指数がどうであれ、全く関係ないようだ。

個人消費も減速している様子はない。「利上げ⇒需要減退⇒物価抑制」の道のりはまだ長いようだ。


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