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#01 Tik Tok (Bytedance)を深掘り。

今年に入って爆発的に人気になりあっという間に普及したBytedanceの「Tik Tok」について分析していきます。(深掘り対象がいきなり未上場ですが、1発目の投稿ということもあってかなり気合い入ってます、おそらくどの記事よりも詳しく情報まとまってるかと☺️)

Tik Tok

中国で誕生した15秒のリップシンク動画SNS「TikTok(抖音)」。中国国内DAUは1.5億人、MAUは3億人、全世界で5億人を超えているそうです。2018年Q1のグローバルダウンロード数は4580万DL、この期間ではYouTubeやFacebookファミリーアプリを抑えて世界で一番DLされているアプリとなっています。

国内で見てもご存知の通りTik Tokの認知度は抜群で10代においては7割以上。最初女子高生をはじめとした若年層で流行りはじめましたが、現在では年齢層が徐々に上がってきていて中国では40%以上が24~30歳、国内では40代の男性の率も上がっているそうです。

また1日の平均起動回数が43回(!)から分かるようにリテンションが非常に高く離脱率も低いです。(twitterは平均15回、1日でtwitterの3倍起動されている計算です。ちなみにお隣韓国はさらに多く、1日70回以上だそうです)


Bytedance

ちなみに親会社の「Bytedance Technology(字節跳動)」はTik Tokの前にニュースアプリの「今日頭条(Jinri Toutiao)」(中国外では「Tobbuzz」として展開)も運営している。一日に読まれる記事は13億本、ビデオの再生数は15億回以上、1日の平均滞在時間がFacebookやInstagramを超え74分。Bytedanceの企業価値は750億ドル、Uber(企業価値680億ドル)を抜いて、世界で最も企業価値の高い未上場スタートアップ企業*になろうとしてます。 ちなみにTik Tok 単独の評価額だけでも300億ドルを超えてるそうです。

*追記:Bloombergの記事によるとUberの企業価値が1,200億ドルに跳ね上がったそうです。

余談ですが、中国のトップ3社が通称「BAT」(B=バイドゥ(百度、Baidu)、A=アリババ(阿里巴巴、Alibaba)、T=テンセント(騰訊、Tencent) )と呼ばれていて、Bytedanceをはじめ彼らを追随する勢いの新興3社が「TMD」(T=トウティアオ(今日頭条、Toutiao)(=Bytedance)、M=フードデリバリーのメイトゥアン・ディエンピン(美団点評、Meituan–Dianping) (時価総額300億ドル)、D=ライドシェアのディディチューシン(滴滴出行、Didi Chuxing) (時価総額560億ドル) )と呼ばれてるそうです。

ちなみにバイトダンスで採用された日本人第一号だった方のインタビューによると、当時の平均年齢は26歳くらい、バイドゥから転職きている人が多かったそうです。

今ではエンジニアが1,000人、内機械学習領域が300人だそうです。


Bytedanceの歴史

Bytedanceの創始者 張一嗚(Zhang Yiming)は現在34歳。南京大学でソフトウェアエンジニアを専攻したのち「Kuxun」(中国版Expedia)や「FanFou」(中国版Twitter)に挑戦するもなかなか伸びず。その後2012年に「Toutiao」、2016年に「Tik Tok」をリリース、後に急成長していきます。

かんたんな年表にしてみました。

-2012年1月:シリーズA調達(Sig Chinaより調達、調達額不明)

- 2012年3月:会社設立、Toutiaoリリース

-2013年1月:シリーズB調達(調達額不明)

-2014年6月:シリーズC調達(Sequoia Capital China、Source Code Capital, Weiboより計1億ドル調達

- 2016年10月:中国国内でTik Tokリリース

-2017年1月: 米Flipgram(ビデオ生成アプリ)を買収(買収額不明)

-2017年4月:シリーズD(CCB International, Sequoia Capital Chinaより10億ドル調達

- 2017年8月:Tik Tok海外展開開始(現在中国外で北米、ブラジル、インド、東南アジア、日本に支社を設けている)、General Atlanticより20億ドルの調達、Live.meに50億ドルの投資

- 2017年11月:10億ドルでmusical.lyを買収

- 2018年1月:Tik Tokが初App Store 1位を獲得、UIpay(決済サービス)を買収(買収額不明)

- 2018年2月:musical.lyをtik tokと統合(欧米では「Tik tok - including musical.ly」にリニューアルし、既存ユーザーを自動に引き継いだ)、FaceU(写真加工アプリ)を3億ドルで買収

- 2018年10月:Pre-IPOラウンドの調達(調達額不明、出資元としてソフトバンクの名前も挙がっていたがソフトバンク側は言及を避けている)

ちなみに今年に入りQQ/WeChat(テンセント)がTik Tokのリンクシェアを遮断するなどの対抗措置を取っていたが、そのすきにライバルのアリババが出資を計画との噂も。(アリババはかつてTik Tokを買収し自社のECサイトに活用しようとした過去もあります)


国内でのTik Tokの歴史

国内でのTik Tok の動きを見ると、2017年8月にTik Tokが国内展開を開始後、年末に膨大な規模で広告費を投下して、YouTubeはじめいたるところでTik tokの広告が流れていたのはまだ記憶に新しいと思います。その頃のTik Tokの第二検索ワードはしばらくずっと「Tik Tok ウザい」でした。

当時それを皮肉ってかYouTuberヒカキンが流してたツイートがこちら:

27万RTで逆に広告効果も。(後々HIKAKINさんも公式Tik Tokerとしてデビューしてるので、こちらはPRだったみたいですね。)

App Apeさんに記事によると、この広告大量投下していた2017年11月〜12月にかけてMAUが倍近く伸びたのが分かります。

ちなみに広告投下は年明けも続き、2018年の上半期のスマホ広告出稿量は全8,580社の中で2位だそうです。(1位は荒野行動、中国企業がワンツーフィニッシュです)

今年に入って国内のPRの動きも少し年表でまとめておきます。

- 2018年2月:HIKAKIN、りゅうちぇる、古川優香などのインフルエンサーがアカウントを開設
- 2018年4月: 「#いいアゴ乗ってんね」動画の再生回数が2,300万回、動画投稿件数が11,000件を突破
- 木下優樹菜、AKB48岡田奈々、HKT48の宮脇咲良等の芸能人もアカウント開設

- ペプシお祭りミックスコラボ YouTuberのフィッシャーズ、石川さゆり、川梨奈(SUPER☆GiRLS)などとコラボCMを発表。総再生数は1500万回以上、動画投稿件数は2万件以上。

- 2018年6月:きゃりーぱみゅぱみゅの新曲「きみのみかた」コラボ
新曲を使用した動画投稿件数が35,000件、動画の合計いいね数が28万件以上。

- 2018年7月:#だれでもダンス にピコ太郎 参戦。

- 倖田來未「め組のひと」が大ヒット、2億5000万回再生超え→アレンジ版がLINE musicより配信

- 野性爆弾くっきー×黒木麗奈を起用した新CM、『ビーチ篇』と『ふたりの1日篇』がスタート(電通)


- Abema TV「今日好きダンス」マーケティング(ハッシュタグ)→視聴数が160%アップ

- 2018年8月:Ultra Japanとコラボ

- 2018年9月:Perfumeがアカウント開設(PerfumeはPRではなく自発的に投稿したとのこと)

- J:COM×Tik Tok 渋谷スクランブル交差点の街頭ビジョンキャンペーン #もののけついてんね  

- ミュージックステーションの生放送中にゴールデンボンバーの特別CM配信

GoogleトレンドでTik Tokの人気を見ると広告集中投下した2017年年末だけではなく、2018年4月〜5月にも急激に人気になってるのが分かります。

また9月にベクトルがTikTokと戦略マーケティングパートナー契約を締結しているので今後もPRには力を入れていくことでしょう。

ちなみにTik Tokのインフルエンサートップ10がこちらです(2018年10月13日現在) 

1位はキッズモデルに特化した事務所「クラージュキッズ」に所属してる小学6年生、12歳のHinataちゃん(本名野々山ひなた)。 2位と倍以上の差で断トツのクイーンです。ちなみに比較対象として、twitterで前田敦子、指原莉乃、山本彩あたりと同じフォロワー数です)ちなみに去年末の広告で多く目にしたのが4位の渡辺リサさん(OTO ZURE所属)ですね。

ちなみにタイムライン内に広告が流れることもありますが、広告自体に対しても反応が良いそうです。

例えばAirbnbの広告は掲載1時間で2,000以上のコメントがつき、1日で10,000いいね以上ついたそうです。


Tik Tok がここまでヒットした理由

最後に、どうしてここまで急激にヒットしたかの個人的な分析です。

1. 閲覧の手軽さ

アプリを起動したらすぐにホームで動画が流れだす。しかも自分のフォローやお気に入りに特化した動画や機械学習によりプッシュされるオススメを縦にスワイプしていくだけという手軽さ。スマホに最適化された縦長動画のおかげででわざわざスマホを持ち変える必要もない(YouTubeは意外とこれがめんどう)またインスタとの違いの一つでもありますが「新しい出会い=発見」が容易。(インスタだと別タブへ移動してわざわざ能動的に「探す」必要があるけど、Tik Tokだと人気の動画や流行りの動画が受動的にすぐ分かる仕様になっている)

2. アップの手軽さ

かっこいいエフェクトや編集が数タップで気軽にできる。一々SNOWで加工する必要もない(デフォルトで加工がついてる)、別アプリで音楽を当て込む必要もない(音楽と合わせて撮影できる。また音楽の速度を変更して撮影もできる)誰でもクオリティーの高い動画がカンタンに作れてしまう。一つ一つ徹底したUX構造でアップするハードルが低く設計されています。

3. アップの口実がある

加工フィルターで可愛く盛れるのはもちろん、ただただ自撮りを載せるだけだとハードルが高いですが、「口パク/歌/ダンスのテンプレを真似してるだけ」という言い訳があるから、アップしやすい。超美人や超イケメンじゃなくても、ただ真似してるだけで人気ものになれてしまう。

4. ネタに困らない

これは↑と少し似ていますが、そもそも1から作るのではなく既にお手本がある中で少しアレンジを加える(場合によっては丸パクリ)をしているだけなので考える必要もない。インスタグラムの投稿でいかに人にかぶらないように考える人が多いのと比べると、誰でもさくっとローカロリーで投稿できるということです。

5. 誰でも人気者になれる

これはまだ伸びはじめのSNSだからこその特徴でもあるので飽和しはじめるとそうでもないかもしれませんが、1つ他のSNSと大きな違いは「フォローしている人関係なくプッシュされる」ことです。確かにTik Tok内でフォローしてる人を見るタブがありますが、アプリを開いたときまず流れてくるのは「おすすめ」です。実際ほとんどの人が1番見てるのは「おすすめ」だそうです。1. でも少し書きましたが、この構造のおかげでフォローしてない人も発見しやすく、結果として当たれば爆発的にいいねやフォロワーが増えやすい仕組みになっています。

これはtwitterで流れてきた意見ですが、今のTik Tokは他のプラットフォームにはない言わば楽園状態。Instagramだったらインフルエンサーと一般人の壁があり、Facebookだったら経歴/肩書きと一般人の壁がある。でもTik Tokはインフルエンサーだろうが芸能人だろうが一般人だろうが、さらには国籍、性別、年齢も関係ない。いつまでもこの状態が続くとは限らないが、少なくとも今時点では壁があまりないそうに感じます。

6. 中国だからこそできた

これはおまけですが、日本で同じことをやろうとしたら、まー音楽の著作権にうるさかったでしょうね。もちろんしっかりしたルートでパートナーと契約していけば大丈夫ですが、ここまでスピード感はなかったと思います。実際Tik Tokも2018年2月にワーナーミュージック+JASRACと提携、10月にエイベックスともしっかり提携しています。後例えば動画自体保存できちゃう仕様も中国ならではな気がします。


今後の展開

まだ日本ではできてないが、すでに中国国内だとECとの連携もはじまっており、TikTokerが着てる服やアクセサリーをアプリ内で購入できるようになってるそうです。

インスタもやっと最近同じ機能をはじめたことを考えると、EC連携がはやいですね。

今後は基本的に展開してるアプリのラインナップから「動画重視」の軸はぶらさず、どんどん海外展開していくと予想されます。UGC (User Generated Contents)に投資をし続けレコメンデーションのAI技術(機械学習)や撮影時のフィルター技術も向上させ、他類似アプリにユーザーが逃げないよう(時間をとられないよう)囲い込み続けると予想されます。


以上です。完全に深掘りすぎました、次回からはもう少しライトにやっていきます(じゃないと続かないw)最後までありがとうございました。

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