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自由な雰囲気で真の自立心を育てる:大阪女学院

今回取材へ向かったのは、関西の中心で緑あふれるキャンパスが魅力の大阪女学院中学校・高等学校。都心にあるとは思えない潤いある空間で、生徒たちに充実した教育を届けるため、先生たちはどのような取り組みをされ、今後の学校をどのように考えているのでしょうか?グローバルやICT教育を中心にお話を伺ってきました!

<取材ご協力>
高等学校教頭 関口 淳   先生
国際教育主任 孫﨑 百合香 先生
教務部長   宮﨑 拓哉  先生

インタビュー:高等学校教頭 関口 淳  先生

大阪女学院の始まり

1884年、アメリカからキリスト教の宣教師が旧大阪川口居留地に居留し、当時の女子のための教育が不足していた状況を鑑みて設立をしたと聞いています。

同時期に、他でも女子教育を始める学校はありましたが、当時から「世界へ羽ばたく人間の育成」を志していたのは珍しかったかと思います。時代ではありますが、当時は女性が世界へ羽ばたき活躍するための教育は、社会的な要望からかけ離れていましたし、当時から授業を英語で行っていましたので、初期は入学者がとても少なかったと聞いています。現在、グローバル教育が注目されていますが、大阪女学院は設立当初から行ってきましたので、その点の自信は強くあります。

ー実際、世界で活躍される卒業生も多いですか?

特に海外進路でそのまま海外の学部から大学で進学していく生徒も多いですし、後の大学院で海外の方に入る、あるいは海外で就職して働いているという生徒が比較的多い学校だと思います。


教育方針と建学の精神

※詳しい情報は公式サイトでご確認ください。

いわゆる偏差値教育を主体としないキャリアガイダンス、つまり進学が目的ではなく「大学を卒業した後、何をするのか」という視点で早い段階で突き詰め、それに基づいて自分自身の進路を開拓していただくサポートを行う学校ですので、学内の教員たちの中でも数値的な目標というのは全くありません。あくまで生徒が自己実現したいところに取るべき進路をサポートしていますので、いわゆる進路実績が全く振るわない年もあります。学校全体で、生徒の進路志向本位の部分が色濃い教育になっています。

ー学校の名誉よりも生徒の未来なのですね。

全体としてそこまで大きな学校ではありませんが、進路実績に関係なく、学校の理念や国際性や英語教育の部分で評価をいただき、第一志望校として来てくださる方が多いのは嬉しい限りです。

ー校風としてはいかがでしょうか?

評価が分かれるところかと思いますが、とにかく自由です。生徒たちが守らなければいけない規則は非常に少なく、ルールが定まっていないことに関しては、生徒たちの意思に任せますし、制服の組み合わせも自由です。ですので行事等で写真を撮影すると、様々なスタイルの生徒たちがいます。ただ「自由」というのは、その分の責任が伴いますので、責任を自覚しながら生徒たちは学校の中でいろいろなことを学んでくれています。

また「自由」というのは、生徒たちに「主体性」をもたらしてくれますので、学校の行事も本当に生徒たちが主体的に動いてくれます。もちろん判断に対して教員と相談をしながら進めることもありますし、精神的に未成熟な部分が多いのが生徒たちですから、自由の中での様々な「揺らぎ」もたくさんあります。そういった揺らぎの中で、自分たちで責任を全うしていくことで、人として大切な能力を培っていけるのが校風だと思います。

ー他に先生方が大切にされていることは?

簡潔にお伝えしますと「キリスト教主義」です。宗教や理念や道徳がということではなく、自分の利益よりも他者の利益を優先することを重視してチャレンジできるようお伝えしています。妬みや自尊心などが交差することは社会の中でも多くありますが、そういった状況の中でも他者を思いやる心を優先できる考え方を持った生徒たちを育てられていることを、私たちは誇りに思っています。

ー力を入れている海外の大学、医学部への進学

数学が苦手でも医師を目指したい生徒のために、大阪女学院ではハンガリーとチェコの医学部大学と提携し、直接入学の可能性を提供しています。ハンガリーとチェコの入学審査には数学が含まれず、医師として向いているのは英語力とコミュニケーション能力が重視されているため、理系でなくとも目指すことができ、かつこれらの国の医学部では、EUと日本の医師免許資格受験資格を両方得られるため、選択肢が広がります。日本の教育制度の枠組みでは中々難しいことも、こういった海外進路も視野に入れ、諦めなくて良い環境を作っています。



ICT教育について

インタビュー:教務部長 宮﨑 拓哉 先生

現在の状況

中学校は、2020年頃から導入され、一人1台の端末が支給されています。高校では最初の段階では一人1台がまだできていなかったため、1学年分ぐらいの台数を置いておいて生徒が使うことができました。現在は一人1台になり、中学校ではChromebookが支給され、※高校では好きな端末を持ち込むことができます。(※BYODといいます)今ではWi-Fiも各教室にアクセスポイントが用意されています。

ー好きな端末というのはChromebookに限らず?

そうですね。ただ、使い方としては、キーボードを使って文章を作成することが多いので、ノートパソコン型のものを持ってくるようにお願いしています。Windowsが多いですね。アプリは主にGoogleを使用しています。管理としてclassroom、カレンダーで時間割を全て入れ、Meetを使用して授業をしたり、フォームを使用して課題提出なども行っていました。生徒とのやりとりがスムーズに行える点、そして元々プリントを配布して行うことが多かったので、一括してペーパーレスを目指す意図もありました。

ーGoogle以外では何か使用されていますか?

ちょうど今、過渡期に入っていて、例えばせっかく一人1台端末を持っているので教科書や問題集など、やはり重たいものでもあるのでデジタルを入れてみようかなどの検討をしているところです。しかしGoogleのアプリだけでもかなり使い道は広いので、今後も研究は進めたいですね。

ー今後のICTへの想い

社会は大きく変化しています。私自身もこの10年間、教員として働いている中で、仕事の内容が大きく変わってきたと感じています。最初はパワーポイントやプロジェクターすら学校になかった時代もありましたが、今ではパソコンを使った授業が一般的になり、生徒たちもICTをはじめとする未知の分野に触れる機会が増えています。

そんな状況下で、中学・高校教育がどのような生徒を育てるべきかを考えると、マニュアルを自分で読み解く力が求められるでしょう。さらにマニュアルがない場合でも、自分でさまざまな情報を取り入れて環境に対応する力が今後の社会で必要とされると考えています。

それゆえに、現在の中学・高校教育で重要なのは、教科書はもちろん使用していくとは思いますが、教科書を使った学習だけでなく、未知のものに出会って学ぶ力を育てることです。生徒たちが社会に出た際にも、未知のものに出会い、それを取り入れていく力を持つ人物になれるよう、私たちがサポートしていけたらと思っています。



グローバル教育について

インタビュー:国際教育主任 孫﨑 百合香 先生

ー中学校の特色

ずっと以前から、創立者が宣教師だったことで英語礼拝があり、英語が必然だったというところが始まりになります。AC(アクティブ・コミュニケーション)という授業で、中学1年生からネイティブの教員と日本人の教員がペアで行う2時間連続の授業があり、今でこそ普通かもしれませんが、始まった当初1970年代には珍しかったと思います。中学2年生からはネイティブの先生の単独授業が始まり、生徒は少なくとも50分間英語だけでコミュニケーションをとらなければなりません。

その結果、リスニング力は非常に高く、スピーキングには個人差があるものの、言葉が出なくても相手の言っていることは理解できる状況です。これが大きな成果となって、模試のリスニングポイントが常に高い水準を保っています。

また今年も、中学2年生の学年末(3月)のテストが終わった後に、3日間丸々(5時間分の授業を3日間)英語だけでコミュニケーションするプログラムを本校主催で行いました。このプログラムでは留学生とずっと英語でコミュニケーションを行う必要があるため、以前は希望制にしており、なかなか参加者が集まらなかったのですが、今回は体調不良などを除いて全員が参加することができました。英語が苦手な生徒からすると最初は苦行のように感じたかもしれませんが、最終的には留学生の方々と仲良くなり楽しんでくれたようです。実施後のアンケート結果からも、生徒たちの英語に対するモチベーションも高まってくれたようで、プログラムがうまくいき嬉しく思います。

ー日常的な授業としては、どのような特色がありますか?

通常の授業では、観点別評価において、どのように観点3を評価するかが、どこの学校でも課題になっているかと思いますが、本校では元々、生徒が前に出て発表や討論を行うパフォーマンステストが多く実施されており、それが前述の課題によって、より活発になったと思います。生徒たちは、最も多い時期では2週間に1回程度、スライドを作成し、原稿を書いて発表することを行っており、人前で日本語以外の言語で発言することにも次第に慣れてきています。これと同時に、教科書を丸暗記するレベルのスピーキングテストも常に実施されています。

ースピーチやプレゼンへの取り組みは?

意識的に始めたのは2年前の中1からだと思いますが、それ以前からも英語暗唱大会という、冬休みの宿題で中学全学年とも英語の暗唱文を覚えて3学期のはじめにクラス対抗での発表会を行うなど、伝統的に英語を発する機会はずっとありましたので、急に増えた印象はないですね。最近では国際入試で入学してくる生徒もおり、ネイティブの授業もあり、英語が当たり前の空気感は非常に高いと思います。職員室でもネイティブの先生との会話はありますので、普通に英語が飛び交っています。



高校の特色

英語科では、英語コースと国際バカロレアコースがあります。「英語キャンプ」という1泊2日の英語だけで過ごすイベントがあったり、より高度なエンパワーメントプログラムを始めて10年経っていないくらいでしょうか。ミッションスクールであるため、英語礼拝が定期的に行われ、英語科の生徒は英語でスピーチを行います。英語科では英語の単位数も多く、充実した英語環境が整っています。

さらに最近では、国際バカロレアコース(IBコース)が設立され、より特化した英語教育が提供されています。IBコースでは、数学や英語をネイティブの先生が英語で教える少人数制の授業が行われ、生徒たちは特化した英語科を充実して過ごしています。

ーIBコースの生徒は、帰国生が多いですか?

実は通常の日本の学校を卒業した生徒が多いんです。英語が話せるだけでは難しくて、結局のところは「考える力」なのだと思います。日本語で考える力がないと、どの言語だとしても本当に伝えたいことは伝えられませんので、IBコースにくる生徒は、非常に日本語での学習能力も高く、しっかり努力を続けられ、さらに英語まで領域を広げています。また、部活動も積極的に頑張っていたり、とにかくバイタリティに溢れていて、様々なシーンで頑張れる子が多い気がします。

ーIBコースを履修されて、海外の大学へ進学される方も多いですか?

その点は半々になりますね。海外進学もいますし、IBスコアを持って、国内の大学へ入る生徒もいます。そこは、最終的な生徒たちの目標や目的次第ですね。

ー交換留学や留学プログラムはありますか?

ちょうど過渡期でして、個人で行く留学としては「中期留学」と「長期留学」があります。中期留学では、高校1年生と2年生が3学期間を丸々海外で過ごし、帰国後に次のプログラムへ進めるものが数年前から始まり、需要が高まっています。

一方、年間留学では、高校2年生の夏から3年生の夏までの1年間を海外で過ごすことができ、学校が斡旋するYFUなどの団体を通じて単位認定が受けられます。

また、夏の海外研修では、高校1年生が2週間程度、引率つきでアメリカ、ニュージーランド、カナダなどへ修学旅行のような形で参加でき、今後はより生徒主体のプログラムへと移行していく予定です。2024年度からは、カナダと台湾で実施される予定で、生徒が自分で計画し、引率なしで参加できるようなプログラムを開拓中です。


取材まとめ

自分で考え、行動し、その結果を引き受ける、「責任ある自由」を学び、自由に基づく自主性が尊重され、のびやかに発揮できる大阪女学院中学校・高等学校。設立から139年、変わらず一貫しているのが「平和を作り出せる人の育成」だと感じました。今回の記事では、学校の魅力を一部しかお伝えできませんでしたが、ぜひご興味を持たれた方は、公式サイトをチェックしてみてください。


大阪女学院中学校・高等学校 公式サイト



【KECグループ リンク集】
<集団指導塾> KECゼミナール・KEC志学館ゼミナール 公式サイト
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