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言語を教える先生向けコーチング講座の準備をしています

3月も中旬になり、着々と春らしくなってきています。ニューヨークでは雪解けで足元がぬかるみ、待ち遠しい夏までのつなぎ程度に扱われる季節ですが、日本の春はやっぱり人気がありますね。個人的には冬が終わってしまう感が強いのですが、ま、それはともかく。前へ進んでいくのみです。

春から初夏にかけて、言語を教える先生を対象とした言語コーチングの講座を開講する予定です。Kamiya English Coaching で提供しているコーチングにも深く関わる言語コーチングの考え方や手法を日本語で学んでいただく講座です。国際コーチング連盟(ICF)認定コースですので、受講後の最終審査にパスすると、言語コーチ資格とともに ICF の単位が取れます。

言語コーチングの第一人者 レイチェル・ペイリングから「資格講座を日本語で提供できるよう、協力してほしい」と依頼を受け、昨年夏にライセンス契約を交わしました。その後、200ページ以上にわたるスライドのすべてをレイチェルと一緒に丁寧になぞり、本当に手取り足取り伝授してもらいました。講座内容を単なる情報として伝えるのではなく、背景にあるレイチェルの想いや考えを含めてなるべく忠実に再現できるよう心がけて吸収してきました。

実はこのトレーニングが終わった時点でも、私はまだ実際に講座を担当するかどうか決めかねていました。たとえば日本で英語や日本語を教える先生たちにとって、言語コーチングを日本語で学ぶメリットがどこにあるんだろうか。英語の壁は多少あるとしても、レイチェルから直接学んだ方がいいんじゃないか。「ただでさえ多忙を極める日本の先生たちに、コーチングを学ぶ余裕なんてない」という声も聞こえてきました。

気持ちが乗り切らない中、膨大な量の翻訳、書類、苦手な広告やマーケティングの話し合いなどがせまってきます。セルフコーチング風にやる気を引き出すワークをやってみたり、逆に思考を停止させて淡々と事務的にこなしてみたりしてみましたが、効果はいまいち。さらに、作業に着手できるのは一日の業務が終わった後。受講生とのセッションからモードを切り替え、夜な夜なパソコン画面と向き合うことにうんざりしていました。

しんどいなぁ。やっぱりやめよっかなぁ。
別に私がやらなくても、他の人に任せておけばいいんじゃないの?
開講したって、ニーズがあるとは限らないし。
先生や教育なんて、そう簡単に変わらないだろうし。

手を変え品を変え、押したり引いたり、自分をごまかしながら教材の翻訳をするうち、脳についてのセクションに入りました。そして、脳内物質や「神経可塑性」など訳語の確認が面倒くさくなってきた頃、ある動画に行き着きました。脳性まひをもつアンディの脳が、コーチの助けによって変わっていく様子を描いたものです。

私がアンディとリーのことを知ったのは2018年。彼らがレイチェル主催の言語コーチングのカンファレンスに登壇したときです。

当時の私は大学院での研究に行き詰まり、時間がないと言う割に成果も上がらない状態に陥っていました。前年にドイツ・マインツで開催された第1回カンファレンスには迷わず参加したのですが、第2回開催地のエディンバラはニューヨークからひどく遠くに感じられ、「こんな忙しいときに、そんなことをしてる余裕なんかない」と、参加しないことを正当化してしまいました。

カンファレンスはオンラインで視聴。初日の最初に登壇したのがアンディとリーでした。動画もそのときに見たと記憶しています。ひたむきでユーモアを忘れないアンディと、彼の力を信じて支えるリーの姿に、「私ごときが、なにを偉そうに言い訳していたのか」と恥ずかしくなりました。後日レイチェルに聞いた話では、この登壇についてもアンディの返事は即答で「YES」だったそうです。たとえ移動が困難でも、当日の自分のコンディションが予測できなくても、オーストラリアからエディンバラまで何時間かかろうとも、アンディは言い訳ひとつせず「やる」と決め、やるためにどうするかを考えるのです。

あのとき感じた恥ずかしさが一気によみがえりました。今の私はまたやらないための理由を並べ、正当化して逃げようとしている。そのことに気づいて、目が覚めました。

やると決めたら、気持ちがシャンとしました。講座を通じて、どこでどんな言語を教える先生たちとの出会いがあるのか、楽しみになってきました。コーチングの手法を取り入れて教えることを今より楽しめる先生が増え、その先生たちが関わる生徒さんたちにとって学びの場が少しでも快適になったら、それは最高にうれしいことです。

身も心も軽くなりました。準備はあいかわらず山ほどありますが、残りは確実に減ってきています。手伝ってくれる人も現れました。「やる」と決めることによってうまれるエネルギー、すごいです。


Photo by Jason Jarrach on Unsplash

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