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KEC の文法セッションを公開します (1/3):脳にやさしい文法

この note は学習者向けに書いていることが多いですが、ここからしばらくは英語を教える先生やコーチの方向けに書いてみます。たぶん英語以外の、日本語など他の言語を教える方にも応用してもらえる部分があると思います。

その第1弾として、KEC セッションの中で文法がどう扱われているかご紹介します。今回は概要。次回からは具体例をお見せします。

ベースになっているのは、ニューロ言語コーチング創始者、レイチェル・ペイリングの「脳にやさしい文法」です。

一般的に文法の授業は、先生が項目の提示(例:「be動詞」)、続いて要点の解説(例:「be動詞とは」)、使い方の解説(例:I am, You are, He is)をして、肯定・否定・疑問文(例:I am not ~. Am I ~ ?) を見せて練習問題へ。余裕があれば注意点や例外を付け加える、というような順で展開されます。

多くの文法項目に共通して使えるパターンを決めておくことは、教える方にも教わる方にもメリットがあります。教える側にとっては授業の準備がしやすく、限られた授業時間で予定の内容をもれなくカバーすることができます。生徒の入れ替えがあっても、同じ項目を教えるときには同じ教え方が繰り返し使えます。教わる側は習ったことを公式のように覚えてしまえば、それを使うだけで文法問題が解けます。試験ではこの「公式を使って素早く解く」を求められることが多く、これができると高得点につながります。このパズルのようなおもしろさにハマった生徒が、のちに言語学を研究することもあるかもしれません。

でもこのやり方は、多くの人にとって「脳にやさしく」ないのです。

KEC で学ぶ大人の学習者の中には、いわゆる学校英語の経験から、なんとなく文法に苦手意識をもっていたり、わからないまま「覚えるしかない」と思い込んでいる人がいます。真面目で熱心なあまり、文法の詳しい分析を試み、混乱して自信を失っている場合もあります。このようにネガティブな感情に満ちた状態で、納得できないまま無理強いしようとしても、脳は学んでくれません。

一方、いわゆる学校英語が得意だった人が仕事などで使うために英語を学ぶ場合、教える側があらかじめ用意したお決まりのパターンでは物足りないことがほとんどです。そもそも彼らの目的は、試験で高得点を取ることでも、言語学的に英語を研究することでもないのですから、網羅的に学ぶより、自分に関係の深い項目に絞って学ぶ方が有効です。脳は、自分にとってリアルで、意味のある学びを好んで学習します。

私が日本人向けの英語教育にコーチングを取り入れた理由は、こうした学習者ごとに異なる目的、条件、ニーズに応えたいと思ったからです。将来、もしもっとよい方法が見つかったら乗り換えますが、今のところ、特にデリバリー(知識や学び方などの情報を学習者に渡すこと)の面で、コーチングに優る手法はないと思っています。

ここで、KEC コーチング・メソッド®の特徴をおさらい。

1. “No two learners are the same.”(「2人と同じ学習者は存在しない」という前提)
2. Enables bespoke curricula(学習者にぴったり合わせたカリキュラム)
3. Maximizes the benefit of learners(学習者のBenefitを最大化)
4. Supports lifelong learning(ずっと続く学びをサポート)

セッションの中で文法を学ぶ場合も、これを踏まえてやっていきます。


Photo by Jason Strull on Unsplash

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