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ネットワークビジネスにハマって一家離散した話⑥ ~現実は小説より奇なり~

この物語はフィクションだったと願いたい作者の記憶をここに綴る2015年の物語である。

ケアマネ介護福祉士のブログ
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第六章~帰省~

何年ぶりだろう…。

一晩かけてようやく到着したというのに何も安心感は無い。

久しぶりに帰った実家の風景は嫌な意味で町並み一つ変わらず、思い出したくもない事をしっかりと思いだす事ばかりだ…。

一刻も早く話を片付けて家に帰りたい。

特に今の家が大好きだという事では決してないが…。

対面

家に入るなり新しい家族がいる実家へ足を踏み入れる。

敵意むき出しの真っ黒な生き物がさっそく私の足を嚙みちぎりに来る…。

元々家にいたわけではない私にとって新しい家族の猫にとっても脅威でしかないのだろう。

そそくさと居間に入る。

むせかえるほどタバコ臭い家…。

とうに私が住んでいる家ではないのだろう…。

居間には既に家族全員が集結している…。

私が仕事帰りで飛んできた事もお構いなしだが一秒でも早く帰りたい私にはかえって好都合だ。

きっかけ

誰一人として話をしようとしない重苦しい空気…。

私が来るまでの間、何か話をしたのか?

進展があったのかを聞くも誰一人口を開かない…。

この状況にうんざりしてしまうが早く帰りたい私は弟を質問攻めにすることにする。

これで弟に味方はいなくなるわけだが…。

尋問

矢継ぎ早に質問をする。

質問に答えなければ即座に違う角度から同じ答えを引き出す質問をする。

こんな時にはいつも自分の性格が悪いことを自覚する。

『借金はいくらあるの?』

『家賃はいつから払ってないの?』

『今の仕事は?』

『市都民税は?年金は?』

『MLMに手を出したのは仕事を辞める前?』

『あの二人はMLM仲間なの?』

行きつく暇もなく質問攻めにして一時間は経ったのだろうか…。

大体の概要は読めた…。

時系列的には東京で仕事をしている最中に知り合った友達とMLMを始めて、いつの間にか2人がアパートへ転がり込んだ。

予想通り大男が『MLMの親』であり、プリン頭が『子』弟が『孫』という貧乏くじを引いている状況だ。

大男が『MLMに集中して不労所得を手に入れたくはないのか?仕事なんかやっている場合か?』と持ち掛け仕事を辞めたという。

現在も仕事は一切していない。

まあ仕事をしていたら裸一貫実家になど帰れない…。

背水の陣に置き、営業をかけざる負えない状況に追い込んだのだろうが相手が悪いな…。

元々引っ込み思案の弟が声をかけ続けたところでもともと細い人脈をすべて潰すだけ…。

身になるとは思えないのだが…。

結果、借金まみれになった弟はMLMを引退する事態に追い込まれているというのに…。

おとなしく生かさず殺さず仕事をさせていれば自分たちの宿も確保できただろう状況を目先のお金にとらわれる辺りはまだ大男も若いのか…。

商材の60万円だけで済んでいるわけではないであろう借金額もおよそを洗い出すのにさほど苦労はしなかった。

今はネットで全て完結する時代だ…。

わからないは通用しない。

形態をとり挙げ、メールや電話を確認する。

借金は消費者金融3社からの借り入れで約180万円ほど…。

恐らく数年前の法改正によって単なる借金は年収の1/3ほどまでしか借金できなくなったはずなのできっと上限いっぱいなのだろう…。

国民健康保険、市都民税、家賃、携帯代、ありとあらゆるものが少なくとも半年間滞納されている。ショッピング枠もほぼ満額…。

MLMの権利を守るために必要な会員料である月3万円だけは払っていたとの事…。


ざっと少なく計算しても250万円くらいか…。

60万円で買った商材を信じ切って、その通りに株を買ったら100万円以上溶かしたという話を聞いて本当に気分が滅入った…。

株を買うのに借金をして儲かるのならば世界中がスーパーインフレしているだろう…。

もともと頭が良くないのは知っていたがこれほどとは…。

借金の額を多く申告するとは思えない。

恐らく300万円ほどと思ってもいいだろう…。

あのタバコ臭い東京のアパートを考えれば退去費用も掛かる…。

頭が痛い…。

相変わらず両親は『かわいい我が子バイアス』が前回なのか本当に意味が分からないのか…。

『ウチの子は悪い友達に騙されてお金も住処も騙し取られた』

そんな認識を曲げない。

いくら個人事業主として60万円の商材を買い、世界中で誰もその商材の能力を信じていないにもかかわらず株をおススメ通りに買って100万円以上を溶かしたという事実は受け入れられないようだ。

二重苦で頭が痛い…。

だがもうここまで大きな借金額になればもう自力で返せる見込みなんかないだろう…。

ギリギリ独身時代の貯金で足りるか?

うん。足りる…。

最終は私の出番か…。

この時は300万円の借金を解決する事だけが問題だった。

そう…この時は…。



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