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金縛りにあうとたまにやってくる友達


金縛りによくあう。

よくと言っても月に1.2回くらいか。

通算300回は超えていると思う。

だが、いまだに慣れない。
毎回こわいと感じる。

いつも何がきっかけなのかはわからない。

急に目が覚め、全く動けず声もあげれない。
そして気付いたらまた眠りについている。

朝起きると金縛りにあった記憶だけが残っている。


最初に金縛りにあったのは小学三年くらいのとき。

今でも鮮明に覚えている。
セミダブルベッドを2つ並べた寝室で母親と寝ていた。
僕が左側で、母親が右側だった。

何か嫌な夢を見ていた。
そして目が覚めた。

仰向けの状態で、全く動けなかった。

なんだこれは、体が重く力が入らない。
喉では叫んでいるのに声は全くでていない。

母親に助けを求めようにもどうすることもできない。

そして、奇妙なことに、僕の下に黒い人のようなものがいる。
僕と重なって真っ黒い何かが下敷きになっているのだ。
人というか人の形をした影みたいなもの。

カラスのように黒く、シルエットだけ人の形をしている。

そして、一番不可解なのが、僕は仰向けの状態で全く動けないのに、なぜかその黒い影を認識しているのだ。

それを視認していないにも関わらず、それがいるのがわかる。

なぜかはわからない。
だがたしかにいた、僕の下に真っ黒い人が。


その日も気付いたら眠りにつき、普通に目が覚めた。

だが、誰にも言えなかった。
そのときはそれが金縛りだということを知らなかったから。
誰かに言うと、頭のおかしいやつと思われそうでこわかった。

一番こわい思いをしているのは僕なのに。

それからも金縛りの日々は続いた。
日々といっても、月に1.2回くらいか。

黒い人もたまにやってくる。

上から見ていたり、僕の隣にいたり。

僕はこわいので、友達だと思うようにした。
友達認定してからは、心なしか黒い人の顔が柔らかく見えた。
表情なんかはないのだけれど。

時が経ち、それが金縛りだと知った。
金縛りだと知ったところで何も思わなかった。
僕には金縛りをどうすることもできないのだから。

その頃はまだ金縛りのことを心霊現象の一種だと思っていた。
だって黒い人がやってくるから。


そしてまた時が経ち、金縛りは睡眠麻痺による医学的なものだと知った。
なんか脳は起きているけど身体は起きてないみたいな感じらしい。
睡眠不足やストレス過多が原因とのこと。

黒い人も、睡眠麻痺による幻覚のせいで、僕が勝手に作り出したものらしい。

いやいや、こっちはもう友達として接しているのに、今更そんなこと言われても困る。

金縛りにあう怖さは軽減されたが、友達もひとり減ったようで悲しかった。


でも、いまだに金縛りにあうと黒い人はやってくる。
金縛りにあうたびにいつもやってくるわけではないが、僕は「こいこいこい!!」と心の中で思うようにしている。

そうすることで、黒い人が本当にやってきたとしても「やったー友達と会えた」と思えるし、やってこなかったらこなかったで金縛りのこわさが軽減されるので、僕にしたらどっちにしろ勝ちなのである。

別に勝ち負けとかはないのだけれど。



先日、昼時に金縛りにあった。

僕は「こいこいこい!」と願った。

すると、僕は同居人がいるのだが、その同居人がやってきて、僕の目の前で妖艶なダンスを踊り、奇妙な歌を歌いだした。

人が金縛りにあっているというのに陽気なものだなと思いながら再度眠りについた。

起きてから、同居人と話した。

「なんか俺が寝とるときに俺のとなりでこんな感じで歌いながら踊った?」

すると、同居人は言った。

「いや、、今のところはしてないなあ」


なんだ幻覚か。
こんなタイプもあるんだ。

てか今のところはっていうことはもしかしたら今後するかもしれんのや。

僕は思ったことを口に出さず「そっかあ」とだけ返した。


最近会えてないな黒い人。
今なにしてるんだろう。

まあ会ったら会ったでこわいのだけれど。

てか黒い人っていうのなんか嫌だな。
せっかく友達なのに。
名前とかあるのかな。

今度会ったときに聞いてみることにしよう。

もしも声を出すことができたらだけど。

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