再始動
先日、あるドラマのエキストラ募集メールがきた。
集合場所は川崎駅から徒歩15分、稼働は屋外で7:00〜22:00、服装はスーツの上にダウン、先日真夏日を迎えたばかりだというのに過酷極まりない。
だが、僕にはなんとしてもこのドラマに出演したいという思いと情熱があった。
このドラマは、僕が芸人を始めるきっかけとなった人(以下メシアと呼ぶ)の半生を描いたものだったから。
僕は、物心ついたときから周りと何かが違うという自覚があった。
圧倒的多数の人が、何の疑問を持たずに行うようなことに対して疑問を持ち、圧倒的多数の人とは違うことをしようとする。
しようとするというよりもそうしてしまう。
簡単に言うと価値観が違いすぎる。
理解や共感が得られないことばかりでうんざりする。
でも、他者に対して考えを強要したりはしない。
僕の方が変だという自覚はあるから。
だって、圧倒的少数の人なのだから。
生きていて窮屈だと感じ、まくらに顔を押し付けながら叫び散らかすときがある。
何も発散はされないが、そうせざるおえない衝動に駆られる。
生まれてこのかたとにかく生き辛い。
誰にも共感されない不満ばかりなので、変な人だと思われないように毎日「普通」を演じる。
そんな生き辛さを和らげてくれたのが「メシア」である。
普通ならおかしいと言われるようなメシアの考えや言動に深く共感できた。
テレビやラジオを通してメシアのことを追いまくった。
「僕と同じような人がいる、じゃあ僕もこの世界で生きていいんだ」と思わせてくれた。
僕からしたら初めて出会えた理解者なのである(実際に会ってはないけど)。
例えば、急に異世界に転生して知らない人種の中で生活しなきゃいけなくなったら誰だってめっちゃ生き辛いと思う。
数ヶ月後に、その異世界で同じ境遇の同じ人種の人に出会ったら皆もすごく安心すると思う、わかりやすく言うとそんな感じ。
僕はとにかくメシアを追った。
かれこれ7年毎週ラジオを聴いている。
かかした週は1度もない。
DVDやグッズ、本も買った。
アイドル番組をMCの芸人目当てで毎週見ているのは僕ぐらいかもしれない。
彼に憧れた。
そして僕は芸人になった。
さて、話を戻そう。
僕は、あるドラマのエキストラに参加した。
朝6:45に集合場所に到着すると、たくさんの売れていない芸人(100人以上)がいた。
始まるまでぼーっと待機していると、1人の青年が話しかけてきた。
その青年は2期下の後輩らしい。
1人も知り合いがおらず不安で、今から始まる15時間の孤独に耐えられず、勇気を出して話しかけてきたとのこと。
その後輩もメシアのファンだということもあり、すぐに意気投合した。
メシアのファンということは、こいつも俺と同じ人種かもしれない!と思い「メシアのラジオってめっちゃ共感すること多いよね」と話しかけてみた。
だが、後輩君は当たり前のように否定してきた。
後輩「いやいやいや、あれ共感できるのはやばいですよ、1mmも理解できないですもん」
俺「えー、めっちゃ分かるけどなあ」
後輩「僕たちはメシアが理解できなさすぎて、僕たちとはかけ離れた考えすぎて、そこがおもしろくてラジオ聴いてます、たぶんファンの大多数もそんな感じだと思います」
俺「やっぱそうなんやあ、前に知り合った美容師からも全く同じこと言われたわあ」
後輩「そうですよ、先輩はすごい生き辛いんですね」
僕は、同人種発見チャンスを逃した。
と同時に、誇らしくも思った。
やっぱりそうそういないんだ、僕やメシアみたいな人は。
だが、その後輩君はメシアの考えが自分とはかけ離れすぎておもしろいと言った。
なので、普段は「普通」を演じている僕が、ここぞとばかりに本当の自分を曝け出してみた。
隠し持った理念や思想、価値観や過去の言動をその後輩君に聞いてもらったのだ。
・女の子と二人で遊んでいると、無性に帰りたくなって何度もデートを切り上げたことがあること
・最先端のものが嫌いで、定期的に携帯をぶん投げること
・好きが分からず、彼女が8年もいないこと
・傘を持つのが嫌いで、土砂降りでもずぶ濡れで行動すること
・好きな女性のタイプがキャバ嬢であること
・自分の荷物を何も言わず持ってくれる女の子としか結婚したくないこと
・手繋いでくる女の子にはめっちゃ腹立つけど、腕組んでくる子には関心すること
・もう全員死んでくれって思うときがあること
おっとやばいやばい、これ以上書くのはやめておこう。
文字にすると流石に自分でも引いてきた。
まだまだいっぱい話はしたけど。
とにかく後輩君は気持ち良く話を聞いてくれた。
こんな異常者である僕に後輩君(男)は好意すら寄せてくれた。
とても心が晴れた気がした。
普段隠しているものを曝け出すのはこんなに心地良いのか、「普通」をやめるのはこんなに楽なのか。
何が言いたいのかというと、2年更新していなかったこの note を再始動します。
2年前、メシアのエッセイ集に影響され始めた note だったが、お笑いで何も成果が出ていない自分にこんなこと書く暇があっていいのか、誰も見ていない note に費やす時間があるならもっとネタを書け、漫才をやれというもう一人の自分からの説教があり、早々とやめていた。
だけど、自分を曝け出す心地良さを知った僕はもう止まらない。
この note を曝け出す場所として活用していこうと思う。
そして、こんな異常者である僕を面白がり、尊敬してくれた後輩君のように、ちょっとでも面白がってくれる人がいるなら、何か形に残していきたいなと思った次第である(誰も見てないとは思うけど)。
エキストラでも色々なことがあったが、ちょっと長くなりすぎそうなので、また別で気が向いたら書こうと思う(いつになるか分からないけど)。
メシアがきっかけで始めた note 、お笑いに対する罪悪感でやめて、またメシア(のドラマ)がきっかけで始める、そして今、僕は眼科の待合室でこれを書いているのだが、待合室のテレビにちょうどメシアが出ている。
なんかこういうことってあるよね、この状況に名前をつけたいぐらい。
今度、後輩君と二人でメシアのライブに行く約束をした。
そのときまでには名前をつけておくとしよう。
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