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令和の名作は原作を立体化する

A

1期の衝撃で吹き飛ばされてたのが去年の春って時の流れは早すぎる。昨日のことのように思います。

熱冷めやらぬ中での2期でしたがはっきり言うと下振れ。これは自分の感性の問題でもありますがうーん。東京ブレイド編がハマらなかった。とはいえ、他パートの原作と脚本のコミュニケーションエラーと宮崎旅行は完璧でした。なんなら宮崎旅行はKadotaのアニメ史に残るレベルのとんでも衝撃でした。差し引きプラスで終わってくれたのはさすがすぎます。

感想

新たな舞台の幕が開く──
人気マンガ『東京ブレイド』の舞台稽古が始まった。
劇団ララライの役者達に囲まれ、大きく飛躍するかな。
かなの才能を認めながら、ライバル心を激しく燃やすあかね。
才能と熱意のある役者が集う中、
アクアは演技すらも利用してアイの死の真相を追い続ける──。
そしてアイドルとして母の背中を追い続けるルビーは……。

アニメ『【推しの子】』公式サイト より引用

今回の2期は脚本のイザコザ、東京ブレイド本編、宮崎旅行の3つに分けられます。原作から言えることなんですが東京ブレイド本編が個人的にはかなり曲者。その原作の悪い流れがアニメでも継続してしまった形です。今回は曲者から述べていきます。

東京ブレイド本編を曲者たらしめるのは物語の本筋からかなり外れてしまっていることに尽きます。確かにアクアが俳優としての殻を突き破ることがテーマの1つとして置かれているので仕方ないのはないのですがそれにしても横道に逸れすぎ。芸能界という魑魅魍魎な世界に潜って復讐を果たしながらその過程で仕事としての芸能界が見えて人間らしさを感じることが出来るのが推しの子の最大の魅力でしたが、この章はアクアの人間味の獲得がフロントにありどちらかと言えば青春スポ根の味付け。別に嫌いじゃないけど推しの子にはいらない。あったとしても味変ぐらいで良い。それと尺が長すぎた。5話は使いすぎ。スポーツ漫画にありがちな描くのにかかった尺と物語中の進んでる尺の揃っていない気持ち悪さがあってノリ切れない。キャラの掘り下げも逆に掘りすぎ。有馬かなは掘られすぎ。収穫し終わったさつまいも畑ぐらいには掘り切られてる。もう何も出て来ん。っていうか作中と同じでいいように使われすぎてる。これに関しては何にも言えないが有馬かなはハッピーエンドが用意されて欲しいと思うのが小さい一読者の願い。一方で、メルト君は良かった。『今日あま』のかませ犬で終わらせないところが赤坂アカ先生。やっぱり赤坂アカ先生は(以下略)。

ここまではただ乗れなかったのボロクソ評価だったた他2つはエグイ。私信であるが推しの子のおもしろさの源泉は知ってるようで知らないブラックボックスな芸能界をお仕事としての角度で切り込むことでの見える人間らしさと考えている。その点から脚本のイザコザは推しの子の良さが全開に出た。社会人には胸が苦しくなるトラブルと罵詈雑言。良くも悪くもしんどくなる人が多かったのでは自分は確実にその1人。改めて多くの人が関わって1つの仕事が完成することを感じれて仕事のモチベが上がる。それと吉祥寺先生がデスクに向かいながらアビ子先生に投げた火の球ストレートは金言すぎる。見た後にメモしたのは言うまでもない

少なくともこれは間違ってる
作品のクオリティを人質にして
真っ当なコミュニケーションから逃げてるだけじゃないの?
自分が上手くやれないのを人のせいにしている様にしか見えない
そういうのって回り回って自分の首を締めるのよ
/吉祥寺頼子

放送してたタイミングで世間で『セクシー田中さん』の問題で揺れていたのも引きが強かった。今回の良かった点は原作者と脚本家を対等に描いた点。世間で風当たりが強くなっているところで脚本家の苦悩を描いたおかげで推しの子が意図せずに社会派アニメと化けた。確かに他人のふんどしで相撲をとってるように見える仕事ではあるが違う媒体で原作のおもしろさを維持あるいは増大させるために必要である。一部の暴走した傲慢なクリエイティブが悲劇を起こしているだけなのであることを学べる。そしてどの仕事においてもコミュニケーションが下地に存在するのである。改めて知っていたがここまで作中で具現化されるとさすがに焦る。

最後に宮崎旅行、凄すぎる。これこそプロの仕事ってやつ。何回見ても良い。ここまで脇に追いやられていたルビーの出ジロ。鳥肌すぎる。ちゃんと2期を名作として締めました。もはや12球で3者凡退する藤川球児です。日陰だった有馬かなが太陽になって、明朗闊達なルビーが闇落ちするコントラスト。何喰ったらこれを閃く?完全に復讐の顔になったルビーは鳥肌のスタンディングオベーション。良いアニメは語りかけるんじゃなくて見せるんだよなぁ(n回目)。アネモネ・モネモネが作ったPVを実際に入れることで『ただのアーティストに戻りたい時がある』がめちゃくちゃ説得力のあるセリフになって2次元の漫画原作に立体感を作り出したのはメディアミックスの強みでなかろうか。個人的にはPOP INのPVはビタビタのストライクすぎて見逃し三振です。

インロービタビタのストレートでストライクとってからすっぽ抜け変化球3球で3-1になってからビタビタストレート2球で見逃し三振みたいな2期でしたが早くも3期が決定。まだまだ旨味があるコンテンツでみんな寄ってたかっての推しの子を貪りまくってます。ですが、扱ってる内容が内容だけに火傷しかねないスリルも楽しんでいきましょう。その前の実写化ですね。色々言いたいことはありますが今言うのは野暮で画面に答えが出るので見てから言います。そんで謝らせてほしいですね。

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