あんこブッセ
「本日、あんこブッセあります!」
その貼り紙をみたとき、まじか?と思った。
ビックリマークがついているほど強調しているということはよっぽどの人気商品なのだろう。あんこにブッセ。和風と洋風の組み合わせ。もともとこの和菓子屋さんがつくるあんこはとてもおいしいから、間違いないだろうと確信して2つ買ってみた。
1つ目はその日に食べた。ふかふかのブッセに甘くてやさしいあんこ。たまらん~っと一気に食べた。
2つ目は5日後に食べた。そもそもこのブッセは10日ほど日持ちがする和菓子なので、なんとなく、少し置いてから食べてみた。
…お、おいしい。おいしいのである。
初日に食べたあんこブッセよりも5日後の方が、ブッセとあんこが自然なかたちで「一体化」している。皮がしっとりとあんこにしみ込み、あんこも皮に寄り添うかのように馴染んでいる。2人の距離は確実に縮まっている。
その変化に感動して、先ほど和菓子屋の店主さんに少し興奮気味で話をしてみた。
私「あんこブッセ、この前5日後に食べてみたらものすごくおいしかったんです!」
和菓子屋の店主「そう、そうなんです。このブッセは、日が経つと皮がしっとりしてきてさらにおいしくなるんです。この栗の焼き菓子も、つくりたてより数日後の方がどっしり濃厚になっておいしいんですよ。」
なんと!!!
そうだったのか。
私は、豆大福などの生菓子はできたてが断然においしいから買ったらすぐに食べているけど、あんこや栗類の焼き菓子は少し置いた方がおいしい…これは知っているようで知らなかった盲点だった。
うれしそうに話してくれた店主さんの表情もよくって、この日は桜餅と大福を買うことが目的だったのに、あんこブッセの話を聞いたら食べたくなっちゃって「これもください!」と、焦ってあんこブッセも一緒に袋に入れてもらった。
***
頻繁に通っている、近所の和菓子屋さん。
ここに行くと必ず楽しい会話がはじまって、「こんな商品が出たのか…!」とか、「こんなにおいしい食べ方があるのか…!」とか、いつもいつも驚きや発見をくれる。お店の前にびっしり書いてある貼り紙をみたり、中に入って旬の和菓子を眺めているだけでほっこりと幸せな気持ちになる。
あんこブッセ180円、桜餅170円、豆大福160円。
和菓子屋さんで買う和菓子は、コンビニやスーパーで買うスイーツよりもちょっぴり高い。だからこそ、和菓子を食べることは私にとってささやかな贅沢であり、幸せな時間だ。老舗のにおいがする店内で旬の和菓子を眺めながら味を想像する。食べたいものを持ち帰って、おいしいお茶と好きなうつわともにほおばる。あんこを通して店主のやさしさがおいしさとなって伝わってくるようで、食べるとあたたかい気持ちにさせてくれる。
そう考えると和菓子って、なんて手軽に心をフル充電してくれる、豊かなスイーツなんだろうと思う。
さてさて。あんこブッセの次はどんな和菓子が出てくるのかな。楽しみだ。
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