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365日私の相棒、土鍋。

私にとって料理するときに欠かせない相棒のような存在が、『土鍋』だ。

この話をすると、たいてい
「えぇ!すごーい!土鍋って冬の季節にしか使わない..」という人が多くて、その度に「いやいや、それはもったいない..もったいなさすぎるよ!」と軽く唾を飛ばしながら語り出してしまうくらい、私は土鍋に愛情を注いでいる。

私が持っているのは、この4つの土鍋。
なにがそんなにいいの?って、まずかっこよさがあるなぁと思う。机の上にこの子たちがいるだけで料理したい欲がむくむくと湧き上がる。

がっしり体型が勇ましくて、深みのある色に釉薬の艶っぽさが存在感を際立たせてくれる。土でつくったものだから、触ると釉薬の奥に少しざらっとした質感を感じて、アルミやステンレスとはまた違う素朴さがあるなぁと思う。
極端に言えば、もうこれを眺めるだけで、土鍋を買ってよかった!という気持ちで50%は満たされる。

ここまで話をすると、
「かっこいいのは分かるけど、土鍋って重くない?」とよく言われる。
確かに、重い。世の中に出回る鍋やフライパンは軽いものが多いなかで、土鍋は圧倒的な重さ。でも、これは私にとって使わない理由にはならないのだ。
車好きな人があえてクラッチが重い車を運転したがるのに似ていて、持ったときのずっしり感が「よぉし、やるぞ!」スイッチを入れてくれる。そもそも土鍋って、縄文時代から土器として使われているんだよ。その頃よりは重くないよ、確実に。

私はこれでご飯も炊くし、煮物はもちろん、肉だって揚げたり焼いたりしちゃう。かわいそうなのは、既存のフライパンたちの出番が少なくなったこと。少しの後ろめたさを感じながら、日々土鍋をフル活用している。

△新生姜のほかほかご飯

△具材たっぷりのラタトゥイユ

△手羽先のカレー揚げ

私が持っている4つの土鍋の中でも一番長く使っているのがこの片手鍋。

かれこれ3年以上の付き合いで、私はほぼ毎日これでお味噌汁を作るから、365日×3=1,095回以上も使っているということになる。わお。

中を覗くと鍋底にひびができている。これに最初はびっくりした。


このままパッカーンと割れちゃうのかな..?と思ったけれど、これは貫入(かんにゅう)というもので、素地と釉薬の収縮率の違いによりできるものなんだって。このひびが入るとどんどん煮えやすくなり、鍋が成長していって、ぱっくり割れるのを逆に防いでくれるのだそう。すごい!

さらにひっくり返すと、底もだいぶ年季が入ってきたご様子でこの景色もかっこいいなと惚れ惚れする。岩肌のごつごつした感じと似ていて、これを眺めるだけでロッククライミングでもしたようなスカッとした気持ちになれる。(この部分はあまり共感されないけどアピールし続けていきたい。)

***

おおげさだけれど、私は土鍋を使いはじめて世界が変わった。
これを手に入れるまでは、実は料理はあまりしないし得意ではなかった。
だから土鍋を買うときは腹をくくる覚悟で決めた。当時の私にとっては金額もそこそこだったし、家も狭くて収納スペースもない中で..土鍋を、買う。悩んで悩んで手に入れたとくべつなもの。

陶器だから割れやすいだろうと最初は少しビクビクしながら使っていたけれど、おかげで丁寧に扱うようになった。取り出すときもコンロに置くときも、そっとやさしく。ずっと中に食材を入れていると土鍋も疲れちゃうから、余熱が取れたらすぐにぬるま湯で洗ってきちんと乾かすこと。ほんの少しのことなのだけれど、土鍋にとっては大切なプロセスで、丁寧に使おうとする心も磨かれる。使えば使うほど、どんどん強くなって味わい深く育っていくから愛着が湧いていくし、日々の色んな感情を受け止めてくれる。なにより、おいしいご飯で身体の芯からポカポカあたためてくれる。

実際に、私が使っている土鍋が生まれた場所、伊賀の工房へも行ったことがある。


できるまでの過程を見せてもらったり、その土地の景色や空気に触れて、ますます気持ちが高まった。こんなところでこの土鍋は生まれて、育まれて、私のもとにやってきたのか..と。

毎日毎日、私のために働いてくれてありがとう。
まだまだお世話になるけど、これからもどうぞよろしくね。

↓ 工房へ行ったときのnoteです。

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