見出し画像

選ぶものと贈りもの。

いままで白い靴って、敬遠していた。新品であればあるほど汚れが気になるし、一度しみや泥がついたら転がり落ちるように汚くなるばかりだし。買ってもやがて履かなくなり、捨てることが多かった。

でも、去年からずっとずっと欲しかったNAOTのシシリア。
えいやっと思い切って買ってしまった。

ピカピカの白靴。
靴箱にあるのが嬉しくて、それからしょっちゅう履いている。

シシリアを履きたくて、ヘアセットしてメイクしてお気に入りの洋服を着て、近くを散歩することが増えた。

あるお休みの日。ウキウキ気分でひとり街を歩いていたら、友だちに見られてしまった。

「きょうこさん、昨日珍しくボーダーの洋服を着て楽しそうに歩いてましたね。シシリアが目立っていて、かわいいと思いながら見てました」

なぜ、声をかけてくれなかったのだろう..。
恥ずかしい、でもうれしい。

NAOTのホームページにはこんな言葉がある。

いい靴は素敵な場所へ連れて行ってくれる。

今の私にぴったりな言葉だなと思った。靴を買って、お出かけがしたくなる。足にフィットするから、どんどんどんどん歩きたくなる。新しい場所へ行ったり、気になっているお店を覗いてみたり。靴が縮こまった世界を、少しずつ広げてくれる。

**

最近、「もの」と「ひと」の関係性について考えることがある。
私は何か新しいものを買うとき、手に入れた後に自分の世界がどう変わるかを考える。

洋服なら、これを着てどんなところへ行きたいか。誰に会いたいか。
うつわなら、なにを盛ろうか。どんなときに食べたいか。

靴や洋服を見ていると、行きたい場所や人が思い浮かぶ。
うつわを見ていると、今日の献立が決まる。

ものが、私の行動を後押ししてくれる。
「差し迫って必要だから買う」ではなくって、「なりたい自分がこうだから、そこへ近づくために買う」

文章を書くときも、そうだ。
大切な時間を割いてこのnoteを読んでくれた人が、読み終わった後にどんな気持ちになってもらえたら嬉しいか。ぼんやりと考えながら、毎回パソコンに向かう。いつも見る景色が、行動が、言葉と出会うことで変わることがあったのなら、世界はもっと面白くなると信じている。

私はこれからもそういう文章を書き続けていきたいし、迎え入れる「もの」との付き合い方も、そうありたいなと思う。

**

5/9の母の日に、お母さんに靴を贈った。

お母さんは年明け早々に大腿骨を骨折してしまい、数ヶ月入院していた。
底抜けに明るくて、しんどいときにはいつも元気付けてくれる太陽のようなお母さん。それが入院中はびっくりするくらいに元気がなくって、電話越しで涙を堪えながら、何度も「がんばる」と言っていた。無理しなくていいのに、ってずっと思ってた。

そんなお母さんも無事に退院して最近やっと普通に歩けるようになった。弟から動画が送られてきて、そこにうつったお母さんは、ヨチヨチ歩きを始めたばかりの子どものようだった。白髪もしわも増えたようで、嬉しいながらも複雑な気持ちになった。

そんなお母さんにプレゼントした靴は、私が普段愛用しているのと同じ、スリッポンタイプの靴。


この靴のように、たくさんたくさん歩いてほしい。世界はまだまだ面白いことで溢れているってことを、歩きながら体感してほしい。

お母さんの靴に込めた気持ちって、
実はいまの自分に一番いいたいことなのかもしれないなぁ。

この記事が参加している募集

休日のすごし方

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?