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「もの」があって、「ひと」がいる。信楽作家市へ行って感じたこと。

信楽のうつわ作家市へ行った。

新型コロナウイルスの影響で去年から延期、延期に追いやられ、今回久しぶりの開催だったのだそう。待ち望んでいた人が多かったからか、会場は参加者の気持ちの高ぶりと、夏の暑さでだいぶあたたまっていた。

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各ブースには、所狭しとうつわがぎっちり並べてあった。ありすぎてどれにしようか迷いすぎたし、これだけある中で、いったいみんなは何を基準に選んでいるのだろうと不思議にすら思った。

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いくつか、人だかりができているブースがあった。
少し密になっていたので遠目から覗いてみると、セット買いでお手頃価格のうつわや、アンティーク風の白いうつわに人気が集まっていた。高台(うつわの足)が高めの、パフェが作れそうなカップや、フルーツを置くようなうつわが大人気。あんなおしゃれなうつわを家でどうやって使うのだろう、生活への美意識が高いなぁ、とただひたすらに感心した。

出店していた陶芸家さんと話していたら、「ここ数年で一番反響があった」と興奮気味に話してくれた。とくに初日のオープン直後がすごかったらしい。事前にウェブでチェックしていた人が目当てのブースに駆けつけて、怒涛のように買い込んでいった..とか。熱量がすごい。

私も1つひとつのブースをまわりながらじっくり見た。ずっと深めの鉢が欲しくって、選んだのがこのうつわ。

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手に取ったときに、これだ!と思った。両手で持ったときにしっくりくる感じ、佇まいがかっこよくてテーブルに置いているだけでワクッとする感じ、丼ものや麺類が入る深さがちょうどいい感じ。

陶芸家さんも底抜けに明るい人で、ガハハとマスク越しに豪快に笑いながら気持ちよく対応してくれた。「よかったら選んで」とバックヤードから同じうつわをいくつか出してくれたり、「毎年やっているから、来年も遊びにきてね」とも言ってくれた。うつわと陶芸家さんの性格って、やっぱり似てくるよなってこのとき確信した。


ところでたくさんうつわがある中で、瞬間「いいなぁ」と思うものって、言葉にすると「感じ」でしか表現ができないなって思う。絞り出した言葉も後付けで、100%の気持ちを表現しているわけではない。だって、これだ!と思うものって直感でなにか伝わるものがある。言葉で覆いきれないところでの、自分の感覚とか、感性というやつなのだろう。

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かえり道、買い物袋にうつわを入れた人たちが続々と駅へ向かっていく光景を車から眺めた。なにを買ったのかとっても気になって、袋の大きさから推測してみたりしたけれど、全然よくわからなかった。
それでも、みんなのほくほくした笑顔を見ていると、きっとお気に入りを見つけたんだろうなぁと、なんだか私まで嬉しくなってしまった。

大半は、これまでうつわをウェブで見たり注文していた人が多かったのかもしれない。家でパソコンやスマホに向き合いながら、写真をアップにしたり色んな情報と比較しながら想像を膨らませてからポチっとする。荷物が届いて開封したときに、はじめてそのうつわとご対面することになる。

それでうまくいった人も、失敗した人も、最終的にこの場所を選んでわざわざ買いにくるのは、やっぱりこの場所でしか見つけられない価値があるのだろう。
リアルな場所には、「もの」があるし「ひと」がいる。実物をみて触れて、陶芸家さんとお喋りして、他の人が手に取ったものを見たり聞いたりして、最終的にお気に入りのうつわを選ぶ。
事前にウェブでチェックしてお目当てのものがあったとしても、現地にいったら結局違うものを選んじゃった!なんて人はきっと多いはず。

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「衝動買いしちゃった」とうれし困り顔で言いながらも、1枚のうつわをきっかけに、あたらしい習慣が始まり、会話が広がり、生活の楽しみが増える。そんな心地いい刺激があるからこそやっぱり、私たちにはこういうリアルな場所が必要だよなぁと改めて思った。

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来年もこの狸ちゃんに会いに、また来れたらいいな。

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