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ラスボスが高人さんで困ってます!32

眼下には紅葉が秋の山々を彩り賑やかす。
この地に生きる命達が、冬に向けてその身を肥やす時期だ。秋の恵みを持ってその冬を乗り切る。それは亜人も変わらずの事だ。
風を切る音が耳を掠めていく。
俺は翼を水平に保ったまま気流に乗って目的の村、つむぎ村を目指していた。

昼間といえど、空の上は空気が冷たく掠めていく風は身体を心地よく冷やした。しかし、これは龍の身体だからであって、人間だときっともっと寒いのではないだろうか。俺の周りは風が緩やかになるようになっているので、風が直接当たる事はない。だが寒さ対策はしていないので少しチュン太が気になった。

俺は背に乗り立て髪に掴まるチュン太をチラリと見た。

『寒いか?』
「いえ!着込んで来たので大丈夫ですよ!」
いつもの着物の上に首巻きと冬用の厚い羽織りを着て手袋まで嵌めていている。
頬と鼻先を赤らめながら俺の背でにこにこと笑ってる
そんな様子を眺めていると、なんだか可愛らしく見えて仕方がない。
『お前、帰らなくていいってなると途端に元気になったな。』
「……あはは。あの国はこわいですから。出来れば帰りたくないです。」
チュン太は困ったように笑い、それ以上は何も言わない。

『そんな強くて頭も回るのに何を怖がってるんだか。』
俺はクスクスと笑ってまた前方を向いて羽ばたく。
まぁ、彼が笑って過ごせて世界に支障が無いのなら、別にこのままでも構わない。
『着いたぞ、あの村だ。降下するぞ』
「はい!」
山の麓にある小さな村を見つけてスイッと狙いを定めて降下しはじめる。チュン太は落とされないようにしっかり俺に捕まっていた。

地面が近くなった所で翼を広げて風を受け止め、勢いを殺してゆっくりと着地した。村の広場に降り立つとチュン太を降ろすためにゆっくりと伏せる。

すると、にこにこと笑みを浮かべた一人の翼人種の男が現れ俺達の方へと駆けてきた。

背には猛禽類のような翼が生え、翼と同じ白銀の長い髪を背中で緩く纏めた青年だ。見た目は若いが優に百歳を超えている。この村の責任者、飛白ひはくだ。
「高人さま、いらっしゃいませ。風達が貴方様がいらっしゃると噂をしておりました。今日はどのようなご用向きで?」
『いきなりの訪問で悪いな。今日はコイツの仕事の手伝いだ。』
チラリとチュン太を見ると、背中から降りて青年に挨拶をしていた。
「飛白さん、お久しぶりです。」
「ああ、准太さん!神事祭の時はお世話になりました。」
『なんだ知り合いか?』
「はい。神事祭の時は商会の品物も沢山で、数日間、管理の手伝いをしてたんです。」
チュン太はそう言うと、飛白と握手をしている。
こいつも、この数ヶ月でよくこの土地に馴染んだものだ。ふっと笑い、俺は土の上に寝そべる。
『行ってこい。俺は昼寝してるから。』
チュン太はニコリと笑って、飛白の方を向く。
「どうかなさったのですか?」
「実は……――」
チュン太は飛白に事情を説明し始める。俺はクワッと大きく欠伸をして目を閉じた。





「……――さん、……――さん……」
見知った声に目を覚ますと、そこはいつもの白龍宮の自室の寝台だ。桃の花が散る窓の向こうは春風が踊り部屋へとその花弁を運んでいる。
俺を揺すり起こすのは、……俺の番だ。

お前、朝礼はどうしたんだ?いつもはこの時間はここに居ないはずなのに。

「ああ……悪い……。寝てた。」
「いえ、お疲れですね。何か視えたんですか?」

……優しい声。いつも愛しむように俺を呼んでくれる。
彼は白龍族の族長、そしてこの国の王だ。
柔らかな白の唐装に長い黄金色の髪を結い上げ、窓から差し込む温かな陽光が彼の髪をキラキラと輝かせる。瞳の翡翠は愛しげに俺を見つめる。

ああ、いつ見てもお前は美しいな。

うっとりと彼を見上げて頬を撫でる。
「未来、あまり良くないな……。」
「……そうですか。」
労しげな瞳で、俺を見つめて髪を撫でてくれる。
「貴方が見る未来は、何百何千通りとある中の一つです。必ずしもその通りにはなりません。俺がさせませんよ。」
髪を撫でる彼の大きな手は頬へと降りてくる。
温かい手だ。
「……そうだな。」
ふふっと俺が笑うと、彼も微笑み俺の額に口付けた。
光と共に世界が滲んでいく。



「――……さん、高人さん?」
ユラユラと身体ををゆすられて、重い瞼を開く。
「……?」
あれ……、和装だ……髪もなんだか違う。お前……どうして……。

「高人さん?」
徐々に意識が覚醒してくると、目の前のものが現実なのだと自覚していく。
そうだ、こいつはチュン太だ。

チュン太を見ると、心配そうにこちらを見つめている。
「大丈夫ですか?」
『ああ、すまん。寝ぼけてた。すっかり寝入ってたな……。』
グゥッと身体を伸ばして首を起こした。。そんな様子を見て彼はホッと息を吐く。
「お待たせしてすみません。新しい反物に取り替えて貰いました!」
チュン太はニコリと笑って手にした風呂敷を見せる。
『良かったな。じゃあ帰るか。』
「はい。」
チュン太は風呂敷包みを身体に括り付けて落とさないように背負うと、俺の背にひょいっと乗る。
『飛白は?』
「工房の方で別れてきました。まだ作業中だったようで。」
また年末に向けて、この村は機織りで忙しい。
出迎えてくれただけでも感謝だな。
「そうか。ちゃんとお礼言ってきたか?」
「もちろんですよ。」
子供か生徒にでも確認するように言うと、ちょっとムッとしたように言い返してくる。

俺は悪戯に笑いながら、身体を起こすと、チュン太が背にしっかり乗ったのを確認してゆっくりと村の外まで歩く。
飛び立つには助走を付けるか風魔法を使うのだが、どちらも村の中だと子供がもし近寄っては怪我をさせてしまう。

歩きながら、さっき見た夢を思い出す。
何だか懐かしい感じだった。目覚めてすぐは何となく覚えていたのにもう思い出せない。
ただただ恋しい。繋がる先を見失ったように喪失感だけが残ってしまった。

チュン太は黙り込んで歩いている俺を見た。
「高人さん、待ってくれている間に何かありましたか?」
『夢見が悪くてな。大した事じゃない。どんな夢だったかも覚えてないし。それより、これからどうする?』

俺が努めて明るく振る舞っていると彼は困ったように笑う。
「港にこれ届けに行きます。」
『そうか。じゃあ、俺も着いて行く。』
「あ、なら商会の帰りに甘味屋さん行きます?オヤツにお団子食べて帰りましょ。」
『お、いいなそれ!』

そうだな。こんな時は甘いモノにかぎる。
お萩と抹茶でもいいな。

気持ちを切り替えられて足取り軽く村の門を出ていると、チュン太がクスリと笑った気がした。
『よし。じゃあ、ぱぱ――っと帰るからな!掴まってろよ!』
「は――い!」
チュン太は返事と共に立て髪を握るのを感じた。翼を広げると、勢いよく走り始める。
風が身体を押し上げるタイミングで地を蹴りバサバサと羽ばたくと瞬く間に風に乗り、みるみる高度が上がって行く。
飛行が安定した所でチラリとチュン太を見た。
『チュン太!大丈夫か?』
「ふふ。はい。大丈夫です。」
『なんだよ、そんな笑って。』
訝しげに言うと、彼は嬉しそうに笑った。
「いや、本当にいつも通りだなって。勇気出して言って良かったです。」
何の話だ?と俺が首を傾げると、またチュン太が面白げに笑った。
「ほら、俺が勇者って話。」 
『あぁ、そうだったな。忘れてた。』
チュン太が勇者だって分かってから、そういう緊張感を一切感じなくなってしまった。彼は風に髪を靡かせながら、とても嬉しそうにニコニコと笑っている。
『お前は笑ってた方がいいな。キラキラしてて好きだよ。』
「……高人さんッ!」
むぎゅっと首に抱きつかれる。俺は呆れたように溜息を吐いた。
チラリと地上を見ると、もう里の近くだ。湖と、神楽の舞台が山の木々に見え隠れしている。
自宅が見えてきたので降下して、なるべく砂埃を立てないようゆっくりと庭に降り立った。

チュン太はすぐに俺から降りると、縁側の戸を開けて、準備してあった着物を持ってきてくれる。

鱗や羽はみるみる引いて行き皮膚になる。骨格もまた人の姿へと変わっていった。チュン太が着物を巻き付けてくれる。
「ありがとうございます。お疲れ様でした。」
俺はとりあえずその着物に袖を通すと、少し背の高いチュン太を見上げる。
「やっぱこっちの視点がいいな。」
夢の余韻を引きずっているせいか彼に甘えたくて、彼に手を差し出す。
「疲れた。抱っこ。」
一瞬驚いたように俺を見たが、直ぐに嬉しそうに微笑んで、勢いよく俺を抱き上げてくれる。
「うわッ!」
身体が軽々と持ち上げられ、慌てて彼の首に掴まる。
「高人さん、いつからそんなに甘えん坊になったんですか?」
幸せそうに笑うチュン太にキュンッとしてしまい言葉に詰まって強がる様に笑ってやる。
「たまにはいいだろ?自分で歩かなくていいなんて怠惰の極みだな。いやぁ楽だなぁ!」
歩かなくていい楽さもさる事ながら、この密着具合がまた心を落ち着かせるが、まぁそこは黙っておく。
「お望みでしたらずっと抱っこして移動してもいいですよ?」
愛しげに見つめてくるチュン太にドキリとして、顔を赤らめフイッとそっぽを向いてしまう。
「冗談に聞こえないのがお前らしいな。」
チュン太はニコリと笑い、俺を室内へと運んでくれたのだった。


―――――

陽の光がが真上を照らす頃、俺とチュン太はエイゼルの商会に来ていた。

商会に入ると、丸テーブルと椅子のセットが幾つか置いてある。
相変わらずエイゼルは酒の入った徳利を抱き締めて、大きなイビキでその存在を知らしめながら眠っていた。俺はその体たらくを椅子ごと蹴り飛ばしてやる。

「ったく……おい!じいさん!お前の商会だろうが!仕事しろ!」
「ひっ!ばあさんッ!すまん!!」
大声で言ってやると、エイゼルはビクリとして起き上がり、辺りをキョロリと見回して俺を見上げた。
「……何じゃい!お前か!!ばばぁかと思って命が縮んだじゃろが!!生い先短いジジイの昼寝を邪魔するやつがあるか!ったく。近頃の若いもんは!!」

「何が若いもんだ。俺のが歳上だろうが。」

俺の方が長生きではあるが、エイゼルの寿命もまだまだ長い。酒で命を削っている感はあるが。
チッと舌打ちしてエイゼルを見下ろすが、またむにゃむにゃと夢の中に戻ってしまった。

「高人さん、ちょっと待ってて下さいね。」
「おう。」
チュン太は俺とエイゼルのやり取りなど気にする様子もなく、スタスタと奥の部屋に入っていった。

寝ているエイゼルの隣の椅子を引き、座ると、エイゼルの徳利に手を当てる。

――夜長の月に照らされし穢れなき玉水よ、この悪き焼き水を浄化し清浄たる寄る辺の水と成せ――

小さくそう言霊を紡ぐと、一瞬徳利の中の水が揺れる音がして、すぐに静かになる。
これでコイツの酒は水だ。あんだけ酔っていれば水かどうかも分からず、しばらくは飲み続けるだろう。
「ちっとは酒を減らせ。馬鹿者が。」
俺はふふん。と満足げに笑い、椅子にもたれかかった。

しばらくチュン太を待っていると、暖簾を分けて犬耳の亜人が入ってくる。
「エイゼルさぁ――ん。伝書鳥来てますよ。なんか今回はいつもと違うみたいで……――。」
「お、涼か。どうしたんだ?エイゼルは寝てるぞ?」
入口の方を見て、俺はにこりと笑う。
「あ!長!お久しぶりです!変な伝書鳥なんスよねぇ。写真管がいつもと違うんスよ。船からのはいつも銅なのに、こいつのは銀製で……。」

持っていた鳥籠には、中型の白い鳥が入っている。足首には書簡を入れる写真管が取り付けられていた。鳥は一心に粟をつついている。
「えらくやつれてるな。」
「船からならここまで痩せる事無いんスけどね……。」
2人で首を傾げていたが、このまま眺めている訳にもいかない。
「俺が見てもいいか?」
俺は涼を見上げて聞く。
「もちろんス。エイゼルさんが駄目なら長に持って行こうと思ってたので。」
「そうか。それじゃ見させてもらうな。」

俺は鳥籠にそっと手を入れ粟に夢中になっている鳥の足からで書簡を抜き取る。
小さく折りたたまれ丸められた紙を広げると、ミストル大陸を支配する王家の紋章入りの紙。間違いなく国王からの書簡だった。
ザワリと胸騒ぎがする。
「涼、これは俺が処理しとくから、コイツの世話を頼むな。」
俺はにこりと笑うと、鳥籠を涼に預ける。
「はいっス。その、……大丈夫そうっスか?」
「ん?あぁ、ちょっと出掛ける事にはなりそうだが。まぁ大丈夫だろ。」
涼は俺の言葉にホッとしたように頷き、商会を後にした。

「さて……。嫌がるだろうな……。」
俺は苦笑して内容を読む。読まずに渡してもいいが、きっとアイツは口に出す事も嫌がるだろう。
なら俺は先に知っていた方がいい。

内容は、国王からの帰還命令だ。応じなければ親族が責任を取る事になる、と書かれている。

「はは、バレてんじゃね――か。」
やっぱり、運命は簡単には逃してくれないらしい。

苦々しく書簡を見ていると、チュン太が奥から戻ってきた。
「高人さん、終わりましたよ。甘味処行きましょ……」
「おかえり。」
俺の顔を見て、そして手にした書簡に目をやる。
「……それ、なんですか?見せてください。」
ツカツカと俺に近寄ってくるので、紙を差し出す。
内容を読んでいると、苛立たしげに小さく舌打ちをした。

怒ってんなぁ。

俺は立ち上がるとチュン太の頭を撫でてやる。
不安げに揺れる翡翠を見つめて困ったように笑いつつ、とりあえずの提案をしてやる。
「まぁ、団子買って帰ろう。帰ったらお茶入れてくれ。」
「……はい。」

自宅の茶の間に、いつもの様に食卓を挟み二人迎え合わせに座る。チュン太が温かなお茶を入れてくれている間に、俺は大きな竹の葉に包まれた串団子を広げる。草団子の上に粒あんが乗っているその団子は、店の1番人気だ。

「これこれ。ヨモギの匂いが好きなんだよな。餡も美味いし。お前も食えよ。」
「はい……。」
努めて明るく振舞っても、チュン太は乗って来る事はない。まぁ、当たり前か。
このままご機嫌取りをしても仕方ないため、俺は本題に入る事にした。

「お前の親族って?」
「祖父と祖母です。俺が勇者に選定された時、親代わりの祖父母は国王から公爵位を頂いたのですが、こういう時のための爵位だったんですね。」
「人質か。お前が行かなかったらどうなるんだ?」
「国家に関わる事なので、俺が帰還命令に従わなければ極刑……でしょうね。」

寿命が短い分経験が乏しく、残酷で愚かな事を繰り返してしまう。人とはそういう生き物だ。

チュン太は耳も尻尾も垂れて、考え込んでいるように下を向いている。
そうだよな……俺の事も、親族の事も考えなきゃいけない。コイツは今板挟みなんだ。

チュン太が勇者だという事はわかっている。彼が母国を怖がっている事もわかってる。戻ってしまえば彼は運命に絡め取られてしまうかもしれない事も。俺と離れたくない事も。
分かっているからこそ、俺にも出来ることがあるんじゃないか?

「お前はどうしたい?」
「……え?」
チュン太は顔を上げ、きょとんと俺を見つめてくる。
「お前がミストルへ行くなら着いて行く。祖父母を助けたいってんなら協力する。他の国に逃すもよし、瑞穂に連れてくるもよし。……他、なんかあるか?」
「高人さん……。」
俺の話を目を丸くして聞いていた。
そんなチュン太の隣に行くと、彼の頭をグリグリと撫でてやった。
「お前が最善だと思う方法で、悔いが残らない選択をしたらいい。お前に着いて行くよ。絶対離れない。どうだ?これならお前も安心だろ?」
泣きそうな顔のチュン太が安心できるよう笑ってやる。

「高人さんッ」
「うわっ!?」
チュン太が勢いよく抱き付いてくるので体制を崩してしまい俺は畳に押し倒されてしまった。
「ちょ、チュン太!?」
こんな非常事態に何するんだと抵抗しようとしたが、彼は俺の胸に顔を埋めたまま動かなかった。
身体の力を抜き彼の好きにさせ、亜麻色の髪をサラサラと撫でる。
「お前が勇気出して話してくれたから、一緒に考えてやれるんだ。……ありがとうな。チュン太。」

「……高人さんは優しすぎますよ。」
「そうか?」
俺はクスクスと笑う。お前に優しいと言われるのは悪い気分はしない。
「で?どうすんだ?時間無いんだろ?」
チュン太は少し身体を離して、真剣な顔で俺を見下ろす。
「一度、ミストルに帰ります。家に帰るまでは見つかりたく無いので変装したいです。貴方も目立つので変装を……。」
揺らぎの無い真っ直ぐに輝く翡翠。
ああ、本当に綺麗で愛おしい。彼を見上げて頬を撫でる。
「分かったよ。……他には?」
チュン太は、ふっと表情を和らげ愛しげに見つめてくれる。
「……ずっとそばに居て下さい。」
「分かった。」
チュン太の首に腕を回すと彼は鼻をすり寄せた。
「高人さん、お布団行きませんか?」
「真昼間から何する気だよ。」
恥ずかしげに睨む俺に、チュン太は幸せそうに微笑む。
「高人さんも、欲しいのかなって思ったんですけど?」
顔を覗かれて期待が膨らむと同時に恥ずかしくて、顔が熱くなる。
「まだ決めなきゃいけない事、沢山あるだろ……」
「後でゆっくり決めましょ?」

はむはむと唇を喰まれ遊ぶように俺に擦り寄ってくる。心が温かく満たされていくのを感じる。
そんな彼の背中を撫でていると、首筋に顔を埋めて耳を舐めてくる。
掛かる息と水音にビクリとして、身を竦めた。
「アッんっ」
「ね、高人さん、お布団いきましょ?」
甘く蕩ける蜜のような低い声にゾクリとした。
「……分かった……」
彼で満たされたい気持ちと、もっとミストル行きの詳細を決めなければという気持ちが俺の中で戦っていたが、どうやら勝敗は、満たされたい。が勝ったらしい。

堪え性の無い自分に悔しさを覚えながら、抱き上げられて寝室へと連れていかれるのだった。

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