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高人さんが猫になる話。1[BL小説#だかいち#二次創作]

頭が割れるように痛い。
西條高人はアスファルトに沈むように倒れ込んだ。

やけに、地面が近い…物が大きく見える。頭でも打ったのか…誰かに…殴られた?早く助けを呼ばないと…。
こぼれ落ちていく意識の中で、目にした自分の手は…まるで獣のようだった。

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「高人さんが行方不明って、どういう事ですか?」
佐々木からの電話に出た東谷はスッと目を細める。身体中の血が沸騰するような強烈な焦りを感じる。
昨日はドラマの撮影の後、スタッフと飲み会だと言っていた。メンバーも見知ったメンツだったので安心していたのだが…。なにか事故か…事件に巻き込まれた?…考えたくもない話だ。

『昨日の飲み会が終わった後にタクシーを拾うからと1人で帰ったらしいんだけど、家に帰っていないようなんだ。東谷くんの所だと思ったんだけど、何か知らないかい?』
「いえ…俺は何も…。分かりました。俺の方でも心当たり探してみます。」
『すまないね。よろしく頼むよ。』
佐々木はそう言うと、早々に電話を切った。佐々木自身も手当たり次第に探すつもりなのだろう。

落ち着け。焦っても高人さんが見つかる訳じゃない。

今日がオフで本当に良かった。自分が失踪したからと言って仕事に穴開けたら、あの人はきっと怒るだろう。
無事にひょっこり出てきた愛しい人に軽口を叩かれ怒られる姿を想像し、そうなって欲しいと願った。

「高人さん…どこにいるんですか…」
携帯の位置情報を確認する。反応がない。

「チッ…」
反応が無いという事は電源が切れている。もしくは、水没したか壊れたか……あるいは、壊されたか。

繁華街での失踪だ。周りには数多くの防犯カメラがあるはずだ。人の目もある。だが、聞き込みを敢行するには自分だと目立ちすぎる…。
胸ポケットから小さなタブレットの入った箱を取り出して数粒口に放り込む。俯き数回噛んで飲み下すと、どこかに電話をし始めた。

「ああ、ナイトくん!お久しぶり!ちょっとお願いがあって…ーーーー。」

あの人を見つける。必ず。

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