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ラスボスが高人さんで困ってます!8

梅雨も終わり晴れた日が続く夏の月夜。
床を共にするようになって二週間が過ぎた。

一緒に眠るようになって稀にくる強い欲求。欲しくて欲しくて堪らなくなる夜。いつもなら隣に高人さんが居るだけで大丈夫なのに。いつもより甘くて濃い花の香りに本能が暴れる。
「はっ…高人さん…っ」
噛み付くようにキスをし乱暴に組み敷く。突然の波に身体が言う事を聞かない。
「…っんむ…はっ、ちょ!ちゅんた!?っ…っ」
高人さんの着物を乱し首筋を舐め吸い鎖骨から胸へと舌を這わせる。ふと彼を見ると不安気に俺を見つめている。
「ちゅんた…」

「は…っ。――っ」
ふっと身体を引く。
高人さんが怖がる事はしたく無い。
「はぁ――はぁ――っ…ふ――はっはぁ…はぁ…」
眉間に皺を寄せ、目を閉じて必死に呼吸を整える。
「高人さん…ことだま…ください。」
「いつも封じてるからどんどん反動がデカくなるんだ。」
高人さんが心配そうに俺の頬を撫でる。
「だって…このままじゃ…高人さんを…」
「中に入れなきゃいい。お前が苦しそうなのは見てられねーよ。」
その言葉にぎゅっと高人さんを抱きしめる。
「高人さん…少しだけでいいから、ことだま欲しい…。このままだと…っ…あなたを傷付けてしまう。」
高人さんはほんの少しだけ魔力を乗せた言葉を紡ぐ。
「"お前は俺を傷付けない"」
うん、そんな事するわけ無い。衝動が少なくなり少し心が落ち着く。
「ありがとうございます。」
「落ち着いたか?」
背中に手を回し撫でてくれるのが嬉しくて微笑む。
「はい。」
何度か深呼吸をして、俺はゆっくりと反応を伺うように、啄むようなキスをする。何度も何度も。次第に高人さんの表情が蕩けていく。
彼の手に俺の手を添えて優しくなぞるよに絡めていった。
「高人さん、口開けて?」
素直に開く口を優しく舐めて彼の舌を絡め取る。甘い…花の香りだ。意識を持って行かれそうになる程芳しい花の…。
深く繋がれる角度を探して、水音を響かせながら口内を貪る。高人さんが溢れた唾液を飲み下す様を見るとゾクリと身体が震えた。

「高人さんは、ここ触ったことある?」
唇を離して、上から彼を見下ろしながら彼自身を布越しに撫でる。
「ぁっ…っあるに決まってんだろ…」
顔を真っ赤に染めてそっぽを向く。かわいい。
「どんな風にするんですか?」
「しらな…」
「俺の知ってる方法でいい…?」
「…いい」
恥ずかしそうだけど、嫌がらない。
俺は高人さんの浴衣の裾を開くと彼のモノに下着越しに触れる。
「俺で感じてくれた?」
「…いちいち言うなっ分かってんだろ…」
あまり言葉で確かめると高人さんは恥ずかしがってしまうらしい。自分からなら凄く格好良く誘ってくれるのに。
「高人さん、可愛い。かわいい。」
耳元で言うと、高人さんの身体がぴくりと跳ねる。

心が満たされているからあまり辛いと感じない。俺は高人さんが居ないと本当に駄目だ。

月明かりに蒼い瞳が輝いていて、うっとりする。
好きです。世界の誰よりも。
愛の言葉を発してしまいそうになり口を塞ぐように唇を重ね舌を絡める。
下着を脱がして先走りに濡れたそれをゆっくり上下に刺激する。
「んっ…っ」
高人さんはビクリと身体を強張らせ、足を閉じようとするが、俺が割って入っているので上手くいかない。口を離してジッと高人さんを見つめる。
「…高人さんはここ誰かに触らせた事はありますか?」
とろりとした顔で俺を見つめてくる。少し考えてからら、俺を見上げてくる。
「ない」
「嬉しい…俺が高人さんの初めてですね。」
パサパサと尻尾が揺れる。
初めて触れる彼のモノはとても熱くて、自分のモノも取り出して彼に擦り付ける。2人の液が混ざり合い、ぬちぬち音させた。
「んっ…ちゅんたの触ってみてもいいか?」
「え、もちろんですけど…じゃあ、場所交代しましょうか」
高人さんを抱えて起こし座ると、今度は俺が仰向けに寝る。

「ほら、高人さんは座った状態だから、2人のが良く見えるでしょう?」
乱された服のまま、俺に跨り、恥ずかしそうに視線を落とす姿を月明かりが美しく照らし出しす。
高人さんは重なり合った2人のもを両手で包んでぐにぐにと竿同士を擦り付けて遊んだ。
「…んっ…っ」
俺がビクリと身体を強張らせると高人さんがふっと笑う。
「いい景色だな。」
高人さんが俺の弄びながらジッと見つめてくる。
「っん…どんな景色が見えますか?」
「月に照らされた、淫らで綺麗なお前が、気持ちよさそうにしてる景色。」
妖艶に笑う高人さんにゾクリとする。
「貴方の方が綺麗ですよ?」
きっと、同じような事を考えてる。
本当に綺麗な人。綺麗で優しくて、守ってあげたい人。共に生きたい人。
触れたいなと手を伸ばすと、頬に触れられる位置に、高人さんが近づいてくれる。
頬を撫でる俺の手の上に彼は手を添えてくる。

「ぁ…――っ」
ああ、そうだった。言えないんだった。
高人さんも困ったように笑ってる。

好きを通り越して、"愛してます"と言おうとしてる自分がいる。この気持ちに嘘偽りはないのに。早く発情期が終わればいい…。そしたら沢山伝えよう。

高人さんは俺のものだけを執拗に可愛がってくれる。
何度も何度も。
「…はっ…も、高人さん、俺はも、いいから……はっ…また…んっ――ッ!」
身体が跳ねてトプッと溢れた俺の欲望が高人さんの手を汚す。ハァハァと、俺だけが乱される。
「お前可愛いから、もう少しだけ。」
手に付いた俺の欲望を彼がペロリと舐めている。
このまま溶かされてもいいかもなんて、発情期で馬鹿になってる頭は考えてしまっている。

「ん。」
高人さんが俺の白濁がべったりと付いた手を差し出す。なんだか目が座っている気がする。

「"舐めろ"」
ドクンっと心臓が大きく打つ。
「…はっ」
ぴちゃぴちゃと高人さんの手に舌を這わせている。従わない理由なんて無いので、言霊に流されるように指先まで綺麗に舐めとる。
「よくできました。」
高人さん…様子がおかしい。俺もおかしいけど…。
「高人さん…?」
あまりやりたい放題させるのは良く無いかもしれない。
俺はすっと起き上がると、高人さんを抱き、瞳を覗き込む。
「急に言霊なんて使って、どうしたの?」
声を掛けると、ハッとしたように俺を見ている。
普段なら絶対やらない事だ。高人さんの身体は汗ばんで、呼吸も早く浅くなっていた。
「あ…悪い…、お前の匂いに…呑まれてた…」
少し正気に戻ったのか申し訳無さそうに見つめられる。ゆっくり寝かせて、上から眺める。
「大丈夫ですよ。びっくりしただけです。それより高人さんの、張り詰めて痛そう。楽にしてあげてもいいですか?」
ちゅっちゅっと顔にキスを落とす。高人さんがコクリと頷く。
やっと触れられる。身体もだいぶ落ち着いてきてるので、ゆっくり高人さんを堪能できそうだ。
「じゃあ、たくさんシてくれたお礼しますね。」
ちゅっと最後に唇にキスをすると、すっと離れて高人さんの下半身の下にいく。
「な、なにを…」
「気持ちよくなってて下さいね」
高人さんのものを手に包むと、ぱくっと咥える。ちゅぅっと先走りを吸い取ると、口を離して下から上へ竿を舐めた。
「あっ!…んっちゅんた…そこ汚いから…っ」
「高人さんは綺麗ですよ…大丈夫です。」
「ちが…そうじゃなっ…あっ…んっ」
ビクンと身体を跳ねさせる。さっきの高人さんは綺麗だったけど、今の高人さんはすごく可愛い。
ペロペロと竿を舐めていると尻尾がフサフサと揺れる。ほんとにこの尻尾は気持ちを隠してくれない。
「高人さん可愛い。いっぱい溢れてくる」
「あぁっん゛――ッ!」
ぢゅぅぅっと先端を吸うとビクビクと身体が跳ねる。
口の中に放たれた欲望の香りにくらりとした。花の香りなのだ…あまったるくミルキーな花の香り。味は欲望そのものなんだけど…。俺がおかしいのかな…。
ちゅうっと吸いながら口を離して、ごくんと欲望を飲み下す。
「高人さん気持ちよかったですか?」
高人さんは、ふるふると震えながらコクコクと頷く。もっと気持ちよくさせてあげたいけど、高人さんはもう限界のようなので着物を元に戻してあげる。

「付き合ってくれて、ありがとうございます。高人さん可愛かったです。」
自分の身なりも整えて、高人さんの隣に寝転ぶと、彼に寄り添うために腕まくらをしてあげて擦り寄る。
「チュン太も…可愛かった。綺麗だったし。」
「高人の方が上ですよ?」
「チュン太のが可愛い!」

ふたりで見つめ合ってあははと笑った。早く貴方と愛を語らいたい。その日はどちらともなく抱き合って眠りについたのだった。


――――――――


今日は学舎が休みの休みの日だ。

朝早くから庭で洗濯を干していた俺の元へ、高人さんがやってきた。

「チュン太、ちょっといいか?」
「高人さん、おはようございます。どうしました?」
おれは、高人さんの方を向いて優しく笑いかける。

「おはよ。近くの泉に神楽舞台があるんだ。もうすぐ神事だから掃除にいくんだが、お前も一応竜だし手伝え。ついでに神楽教えてやる。」

「え、いいんですか?」
「当たり前だろ。俺がいなくなったらどーすんだよ。」
「え、何でいなくなるんですか?」
ズンと胸に重い何かがのし掛かる。洗濯を干す手が止まる。
「俺は魔王だからな、近い将来勇者が討伐に来れば、遅かれ早かれ死ぬんだ。お前に俺の後を継げとは言わないが、誰かに伝えておかないとな。…結界が無くなれば亜人族は外界に晒されてしまうから。」
高人さんは空を見上げて困ったように息を吐く。
「来年の祭事やれるかなぁ…。もう、踊れるやつも俺だけなんだ。」
俺は高人さんの近くに行き、彼を抱きしめる。
「高人さんは居なくなったりしません。」
ボソリと言うと、聞き取れなかったのか、きょとんとした顔で俺を見ている。
「どうかしたか?」
「いえ。俺はずっと高人さんと一緒ですよ。」
俺は、にこりと笑う。
「お前も勇者と戦うのか?やめとけ。勇者はアホみたいに強いからな。」
「高人さんなら負けないと思いますよ?」
だって、俺が勇者だから。ふふっと笑う。

俺が貴方に勝てるはずないでしょう?

「まぁな!簡単に負けるつもりねーよ!」
鼻高々に高人さんが言うと、俺は、ぱちぱちぱち拍手をする。
「まあ、そんなわけだからお前も行くぞ!」
「はい。少し待ってもらえますか?干してしまうので。」
俺はニコリと笑うとパタパタと洗濯の続きを干し始める。

勇者の称号は、冒険者アカデミーの卒業時に大聖堂で女神が選ぶのだ。大体100年に1人らしい。いつ誰が選ばれるか分からないから、毎年冒険者アカデミーは卒業生全員に女神の選別を受けさせる。
長らく該当者が出ていなかったから観光気分で大聖堂を見ていたのに、まさか自分がアタリを引くとは思わなかった。
手の甲には女神の紋章が刻まれてしまっている。
今はもう見た目では分からないが。

…実に忌々しい。

アカデミーで称号を得たのは15歳の時だ。
正式に勇者として、洗礼を受け旅立つのは成人してからである。俺は今、21歳。去年受けなければならなかった洗礼をSランク冒険者の忙しさを理由に先延ばしにしていた。王国が痺れを切らしている時に俺は船から落ちて消息不明になっている。

このまま、勇者の称号を持ったままここに居れば…他に勇者は出てこない。

だがそれでは高人さんを魔王の呪縛から解放する事はできない。根本的な解決策を探さなければならないのだ。彼が死ぬ未来だけは命をかけてでも阻止する。

洗濯を干し終わると、籠を持って縁側へ行く。
高人さんが縁側でぐでんと寝そべっている。珍しい。
「どうしたんですか?」
「いや?俺ももうすぐなのかなぁと…思ってな」
「何がですか?」
籠を置くと隣に座る。
「……討伐されんの。」
ほんの一瞬だが、声が震えた。

俺は高人さんに覆い被さるように床に手を付く。「高人さんは死にませんよ?俺が守りますから。」

何で顔してるんですか…。今にも泣きそうだ。

「大丈夫です。高人さんは大丈夫。俺がずっと傍にいます。」
頬を撫でて愛しげに見つめると、触れるだけのキスをした。
「可愛い。高人さん。可愛いです。」
「最近そればっかだな…」
高人さんは顔を赤くしてそっぽを向く。
「ふふ。これなら良いでしょう?」
額に口付けると、ふっと身体を離す。
「さ、お昼になる前に舞台のお掃除に行きましょう。」

「そうだな!うーっ!いい天気で良かった!行くか。」
高人さんは起き上がると、大きく伸びをする。
なんだか表情がスッキリしている。良かった。
「ありがとうな、チュン太」
高人さんは困ったように笑い、先を歩いて行った。

「いいえ。俺の大切な人ですから。」

小さく言うと俺も立ち上がり、彼の後ろを着いて行った。

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