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遊郭で高人さんを見つけました。

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2023年4月の記事一覧

遊郭で高人さんを見つけました。21[BLだかいち二次創作小説]

「やれやれ、やっとか。」 テーブルに肘をつき、大きくため息を吐く。 一升瓶を2本、空にした頃に旦那サマはようやく眠りに着いた。 俺は、酒と熱で汗ばんだ身体が気持ち悪くて長着と襦袢の襟を緩める。 「あっつ…。」 さて、どうしたもんか…。 「とりあえず、鍵もらうか。旦那さま〜ちょっと失礼しますねぇ」 ガサゴソと鍵の束を見つける。牢と表の鍵がついている。足枷の鍵だけが見当たらない。 「クソ…。千早、もういいぞ。」 「高人?…だ、大丈夫?」 「ああ、朝まで起きねーだろ。たらふ

遊郭で高人さんを見つけました。20

雨が止み太陽が顔を出せば当然気温も上がっていく。夏の地下牢はジメジメとして不快感で吐き気がする。 地下牢を歩いて行き一つの牢の前で止まると、そこには先程連れて来られた男が手足を縛られて倒れていた。 足音にも気配にも無視を決め込んでいる男に何を言うでもなく牢を開けて入るや否や、寝転がる男の腹を思い切り蹴り上げ、踏みつけてやった。 「がっ…はっ…」 「…目は覚めたか?」 無表情のまま相手の顔を覗き込む。  死んだ目は、なにをやっても死んだままだ。生きている目を地に落とす瞬間

遊郭で高人さんを見つけました。19

「高人さん、ただいま戻りました。」 すーっと襖を開けると、雨の匂いのする風が部屋をふわりと通り抜けて行った。 外が見えるように敷かれた布団は乱雑に剥がれ、もぬけの殻だ。 「高人さん?」 楼主と話をして戻ってみれば、高人さんの姿はどこにも無い。 見ればいつも外に見送りに来てくれる時に着ていた上着も無いようだ。 用を足しに出たのかもしれないし、水を飲みに行ったのかもしれない。 俺は勝手知ったる見世の中を探してみる。 すれ違う遊女や男衆は少なかったが、歩く人を見つけては手当た

遊郭で高人さんを見つけました。18

よく分からないまま拉致られて閉じ込められて、体感で数時間。 ここは陽の光も入らないため正確には分からないが、だいたいそのくらいだろう。 その間ここには誰も訪れていない。 座敷牢の外は牢を観賞するためか、しっかりとした部屋になっていた。あちら側も座敷だが、洋風の寝台があり、棚にはなんとも金持ちの蒐集家が好みそうな優美な壺や皿、獣の剥製…とまぁ、統一性は無いが高価な調度品が飾られている。 何というか、成金臭のする部屋だ。 中央には洋風のテーブルがあり、ランプが置かれていた。

遊郭で高人さんを見つけました。17

あれから数日、医者からは、急な身体の酷使が原因だと言われた。 明日まで休めと言われたが、熱も下がったし身体も動くようになった。もう見世に出ても良いと思うのだけど…。 「はー、退屈だな。」 布団から身体を起こし、窓の外を見つめる。 今日は雨模様だ。小雨がパラパラと渇いた土地を濡らし、土の香りと緑の香りが風に運ばれてくる。 「高人、入りますよ?」 すっと襖が開く。声の主は、絹江さんだ。 「絹江さん、どうかしましたか?」 神妙な面持ちで入ってきて、さっと俺の前に座った。

遊郭で高人さんを見つけました。16

ふっと目を覚ます。 ランプのか細い灯りがゆらゆらと揺れ、辺りを仄暗く照らしている。 耳を澄ますと、見世自体が静まり返っていた。きっともう、泊まりの客以外は帰ったのだろう。 チュン太は俺の隣で俺を抱き寄せて眠っていた。 もぞりと動く。 喉が渇いて仕方がない。 チュン太の抱き寄せる腕をそーっと外す。ちらりと顔を見るが起きる気配は無さそうだ。 ゆっくり起き上がろうてするが、身体は気怠く腰の辺りに鈍痛が響く。半分も身体を起こせない。 「いっ…た。」 声が掠れてうまく発音がで

遊郭で高人さんを見つけました。15

こちらは性的な表現が含まれます。苦手な方は お控えください。 ―――――――――――― 高人さん、今、中どうですか、少し慣れました?」 「そう言えば今は大丈夫だ。」 良かった。けれどまだ半分もきていない。 「ほんの少し進めます。高人さん、目を閉じないで、俺を見てて?」 お互い見つめ合いながらゆっくりと中に押し入る。 「はっ…はぁ」 「上手です。…っ」 高人さんの中は熱くてヒクヒクと絡みついてくる。こんなに中は好き好きしてくれているのに…。 早く動きたい…。ゆるゆるとし

遊郭で高人さんを見つけました。14

こちらは性的な表現が含まれます。苦手な方はお控えください。 ―――――――― 高人さんはもう快感に飲まれて気持ちよさそうに蕩けている。 俺まで呑まれてしまうと彼を悦くしてあげられないので理性をなんとか繋ぎ止めていた。 このまま気持ちよく行為に及べれば良いのだけど。 彼のモノにはまだ触れず、その先の隠された秘部に触れた。硬く閉ざされたそこは長く男を受け入れていなかった事を教えてくれる。正直ホッとする。 俺はおもむろに袖から薬紙を取り出すと、それを一枚口に含む。 口の

遊郭で高人さんを見つけました。13

性的な表現を含みます。苦手な方は閲覧をお控え下さい。 ―――――――――― 高人は1人部屋から夏の青々と輝く葉桜を眺めてた。外には出ないし着流しは暑いので浴衣を着たのだが、これがなかなか涼しくて気持ちいい。 最近、チュン太は昼間の見世へ遊びに来るようになった。その際に見世の全員にと、珍しい菓子や茶葉などを持ってくる。 絹江さんは苦い顔をしていたが若い遊女や使用人達には人気が高く、東屋の若さんは気が利くだの、いい男だの評価が上がっている。 今も玄関先で数人に囲まれて談笑

遊郭で高人さんを見つけました。12

こちらは性的な描写が含まれるため、苦手な方は閲覧をお控え下さい。 ―――――――――――― 「な…っ」 なにが起こっているのだろう。完全に惚けていた。 高人さんは今、俺に馬乗りになってこちらを見下ろしている。 着物は肌けて羽織っているだけ。 俺がつけた赤い所有の証が見え隠れする。 髪も乱れていて、さっきイかせたばの顔もほんのり赤くて少し虚な気がする。 全体的に見ると、すごくやらしい景色だ。 けれど心配になってしまう。 その思いが伝わってしまったのだろう、高人さんは

遊郭で高人さんを見つけました。11

こちらは性的な描写が含まれるため、苦手な方は閲覧をお控え下さい。 ―――――――――――― 遊女が行方不明になる事はよくある話だ。 人知れず自殺していたり、同様に事故死だったり…。 足抜けだったり、誘拐だったり。 自殺、事故死は地区内なら探せばすぐに見つかるし、足抜けは2.3日もあれば連れ戻される事が殆どだ。 だが誘拐は、大きな組織が裏に付いている事が多く、探しても見つからない事の方が多い。 ここは貿易港もある港町だ。 誘拐されて海外に売られていく事もありる。 そうなれば

遊郭で高人さんを見つけました。10

2ヶ月間の激務がやっと落ち着いてきた。 睡眠時間を削り、視察や挨拶回り、社内会議に他社との合同会議、夜には資料や報告書に目を通して食事も書類片手に軽く済ませるような日々がようやく終わる。 東谷准太は執務室の椅子にだらりと座る。 「流石に疲れたな。」 仕事については父を黙らせるほどの売上を出せている。ここから新しい試みすら提案しているし、損害と言われた部分については返上できた。 父は損害と言うが、俺にとっては手に入れたい人が同じ価値かそれ以上なのだから、損害とは言えない。