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会社員をやりながら、全員が副業のベンチャーをつくった話

こんにちは。株式会社sorano me CEOの城戸彩乃(@kclutch3)です。【宇宙産業を日本の誇る主産業に】をモットーに、宇宙のサービス化をするのがライフワークであり、ライスワークです。


大学生だった20歳の頃から今まで宇宙ビジネスのメディア(TELSTAR、宙畑)を立ち上げたり、新規事業の支援をしたり(sorano me inc.)、人工衛星のデータを使った新しいサービス(Tellus)の事業開発をしたりしています。また、これを書いている現在、衛星データを使いながら移住先を決めて、日本全国を旅するように暮らしています。(現在は岡山県にいます。)


この度、自身が経営している「株式会社sorano me」で資金調達を行ったので、その意図について書き残しておこうと思います。プレスリリースはこちら。

会社員をしながら、全員が副業のベンチャーをつくった


現在私はさくらインターネット株式会社で、人工衛星のデータプラットフォーム「Tellus」のサービス開発・ビジネス開発に従事しています。会社員として新規事業の開発に携わりながら、副業で仲間と共にベンチャーを立ち上げました。

株式会社sorano meは、全員が副業の宇宙ベンチャー企業です。
sorano meは現在、プロボノを含め13名ほどのメンバーが在籍しています。この会社のルーツは学生時代に遡ります。まずは、学生ボランティアでフリーマガジンを始めて、その後立ち上げた宙畑(宇宙メディア)の事業譲渡、そして転職までのことを書いていきたいと思います。

はじまりは、学生団体設立。

大学では、航空宇宙工学を専攻していました。いわゆる工学部でしたが、モノづくりにはあまり興味を見出せませんでした。ただ授業は大好きで、苦手ながらに最前列でノートを取るし、休日にもいそいそとJAXAのイベント等に出かけていました。「こんな衛星ができたら面白いでしょ」「こんなものが見えたら…」「こんな風にロケットを再利用できたら…」。様々なエンジニア・研究者の話を聞いていると、わくわくして、それがどのように役に立つのか、どのように人を幸せにするのか、というところに興味を持ちました。

宇宙ビジネスにもっと多様な人が参入してきて、エンジニア・研究者の発明を使って世の中をもっと面白くする企画が生まれたらーーそんな妄想と、様々な背景が重なって、宇宙開発のいまを可視化するフリーマガジン「TELSTAR」を学生ボランティアで創刊しました。
その背景については、被る部分もありますが以下のnoteで書いているので気になる方は御覧ください。

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宇宙産業を日本の誇る主産業に〜と思って色々と立ち上げてきて、もやもやして、やってみて、そしてこれから

TELSTARは、学生と一部社会人からなるボランティアの団体です。現在は後輩たちが引き継いで、なお学生団体として運営を続けてくれています。創刊以来19万部を超え、たくさんの中高生に冊子を届けてきました。冊子の企画だけではなく、宇宙技術が発展した未来を本気で想像するワークショップを行ったりもしました。

今思い返してもなかなかいいアイデアなのではないか、と思っているのがこれ。


◯ TELSTAR vol.8 宇宙建築特集
特集 「宇宙建築 TELSTARが考える、次世代の基地計画」
「2040年に人類が月面に住むなら?」と月面基地の設計(妄想)を本気で考えました。

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© 宇宙広報団体TELSTAR

◯ TELSTAR vol.10 月面ワークショップ特集
特集「宇宙×高校生100人サミット 私たちの月面基地計画」
「次世代」をテーマに実際に高校生100人と日本科学未来館で、未来の宇宙開発について考えるワークショップを行い、記事にしました。

どちらもソニーさんの電子書籍配信サービス「Reader Store」で無料で読めます。ぜひ。
宇宙フリーマガジン「TELSTAR」電子書籍

新しい課題が見えてきた。


TELSTARで情報発信をしている中で、当時の私はひとつの課題に辿り着きました。

それは、「宇宙に興味のある人は増やせている(ような感覚は持てるようになってきた)けれど、興味を持ったその先で、その人たちの受け入れ口がない」ということです。

当時、宇宙関連の就職先といえば、某研究所か片手で数えられる程度の衛星・ロケットメーカー数社、あるいは部品関連の企業くらいでした。航空宇宙工学を専攻している自分の周囲をみても、ほとんどが自動車メーカーや半導体メーカーに就職していきました。

自分がやっている活動は果たして、本当に中高生の将来のため・宇宙開発の未来のためになっているのだろうかと、もやもやした日々が続きました。そんな中で浮かんできたのが「宇宙ビジネスを自分で立上げるようなパワーを持った人を育てていくことが必要なのではないか?」でした。宇宙関連の就職の受け皿がないのであれば、自ら受け皿を作って広げていくような人を育てればよいのだ、と思いました。
思ったら即行動。ということで、TELSTARを卒業したメンバーや、当時興味を持ってくれていた数名を集めて、議論しました。

「宇宙ビジネスを自分で立上げるようなパワーを持った人を育てていくこと」とミッションが決まっても、あまりに大きすぎてどのようなアプローチでそれを実現していくのか途方に暮れました。アイデアも大量に出て、どれも良さそうだし、どれもすぐに人を育てることに繋がるような、繋がらないような…。

半年ほど議論を重ねて、たどり着いたのがウェブメディア「宙畑-sorabatake-」でした。なぜメディアにしたかというと、TELSTARをやってきたことで、コンテンツを作っていくことに関しては少しだけノウハウがある(ような気がしていた)という理由でした。

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宇宙ビジネスメディア宙畑-sorabatake-

宇宙ビジネスの「いま」を伝えながら、宇宙ビジネスの「未来」を考えるというコンセプトで、様々な記事を出してきました。
(ちなみに当時私は就職してリクルートに入り毎日圧倒的当事者としてエキサイティングな毎日を過ごしていた (´;ω;`) ため、仲間たちが試行錯誤をして、今の宙畑を積み上げていってくれました。)

「ボランティア」からの旅立ち

そんな中、休日に続けていた宙畑を見て、事業担当者が声をかけてくれたのをきっかけに、現在の会社(さくらインターネット株式会社。以下、さくらインターネット)に転職しました。衛星データプラットフォームの開発に挑戦している会社で、情報発信だけでなく自分でサービス開発が出来ると思ったこと。そして、衛星データ利活用が大きく飛躍することが今の宇宙産業の拡大に必至だと考えたことが転職の理由です。

入社してからは、衛星データプラットフォーム「Tellus」のサービス開発に従事することになりました。

衛星データプラットフォーム「Tellus」

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このタイミングで、ボランティアで運営していた「宙畑-sorabatake-」もさくらインターネットに仲間入りし、Tellusのオウンドメディアとしてデビューすることになりました。当時ボランティアメンバーだった牟田、菅谷、田中も、一緒に同社に転職・出向することになりました。

また、今まで私が担当していた編集長を、TELSTAR時代から一緒に活動し、宙畑をぐんぐん育ててくれていた中村にお願いしました。現在、宙畑は月間15万PVを越えるメディアに成長しているだけではなく、宙畑で発信した「未来」のアイデアをきっかけに、衛星データのサービスを検討する企業も出てきています。まだまだ道半ばではありますが、「受け皿が少ない」と感じていた当時よりも、宇宙に関わる選択肢が増えているように思います。

さくらインターネットにジョインして、プラットフォーム「Tellus」を作りながら「宙畑」でアイデアのプロトタイピングを行い、衛星データを使ったサービスの検証を進めながら、ユーザ目線でほしい機能を「Tellus」にフィードバックしていく、といったループを回しながら、日々少しずつサービスを育てています。

株式会社sorano me 起業。会社は辞めない。


本業で衛星データプラットフォーム「Tellus」を日々改善しながら「宙畑」を使ってアイデアの検証を進めていく中で、様々な企業・個人の方とお話をしました。その中で、衛星データやその他様々な宇宙アセットを利用したビジネスを創出するのにもう一つ不足しているピースがあるのではないかという考えに至りました。

不足しているピース、それは「仲間」です。

仲間の種類はフェーズや事業規模等によって様々です。例えば、衛星データを使ったビジネスで起業したいエンジニアだったら、一緒に企画したり営業してくれるメンバーが必要になります。既に事業案は固まっていて、人工衛星を打ち上げる予定も立っている企業であれば、そのプロジェクトを一緒に盛り上げてくれるマーケターだったり、その使い道を一緒に考えるプランナーの力が必要不可欠です。

ゼロから新しいものを生み出すには、毎日強いストレスがかかります。

無から有をうみだすインスピレーションなど、
そうつごうよく簡単にわいてくるわけがない。
メモの山をひっかきまわし、腕組みして歩きまわり、溜息をつき、
無為に過ぎてゆく時間を気にし、焼き直しの誘惑と戦い、
思いつきをいくつかメモし、そのいずれにも不満を感じ、
コーヒーを飲み、自己の才能がつきたらしいと絶望し、
目薬をさし、石けんで手を洗い、またメモを読みかえす。
けっして気力をゆるめてはならない
ー  星新一(小説家)

と星先生も仰っているように、毎日もやもやと歩き回って考えてボツにして…の繰り返し。その中で、心強い仲間の存在は何者にも代え難いものです。

思えば私自身、学生時代から本当に「仲間」に恵まれてきました。給料が出るわけでもないのに、最後のモラトリアム期間を、友人と過ごしたり恋人と過ごしたりできる貴重な時間を、フリーマガジンの入稿作業や、封筒に詰める作業に費やし、協賛をお願いしたい企業や高校などの配布先にひたすら営業の電話をかけるテレアポを率先してくれる仲間が私の周りにいてくれたから、「TELSTAR」は生まれました。TELSTARを辞めた後、「どうにかしたい」という呟きだけでほぼアイデアのないところから一緒に考えてくれる仲間がいてくれたから、「宙畑-sorabatake-」は生まれました。

宇宙ビジネスはまだまだ挑戦の量が不足しています。もっとたくさんの人が宇宙ビジネスに挑戦して、IT産業の枠組みが存在しないのと同じように、宇宙産業という枠組みが無くなる程に様々な分野で当たり前に使われるようになってほしい。そのために挑戦する人たちに一番必要なのは、仲間なのではないでしょうか。

そう思って、宇宙ビジネスのはじめの一歩を踏み出すときに、一緒に踏み出す「仲間」を提供する会社を作りました。それが、株式会社sorano meです。

掲げるミッションは、「宇宙ビジネスで私たちの日常を豊かにする。」
特別なことじゃなくていい。私たちの日常がよりよい方向に向かうようなビジネスを、宇宙アセットを使って生み出していくのです。まずは、私たちsorano meが、宇宙へ向かって小さな一歩を踏み出そうとしている人の「仲間」になって、大きな一歩を共に踏み出していきます。

株式会社sorano meの事業


sorano meの主な事業は2つです。
① 伴走型支援事業
② 人財基盤構築事業

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① 伴走型支援事業
宇宙ビジネスをやっていきたいという企業や個人に伴走しながら、共にサービスを生み出していく事業です。②で開発する人財基盤を使って、副業から成る複数人のグループで事業のアイデア出し・推進・マーケティング・サービス開発・企画・開発等を支援します。

これは、デザインコンサルティングを行っているGoodpatchの新規事業、Tellusでもお世話になった「Goodpatch Anywhere」から着想を得ています。

複数人のグループで支援することで、内容によって適切なメンバーをアサインできるので、例えば特定時期だけイベントの企画が必要であれば、その時期だけイベント経験のあるメンバーをアサインできます。他にも人工衛星開発経験のあるメンバーをアサインしたり、地上局運用経験のあるメンバーをアサインしたり、多様なメンバーの中からそのときに応じたチームで事業を推進していくことができます。

②人財基盤構築事業
①の伴走型支援事業を支える人財基盤を構築する事業です。デザイナー・エンジニア・研究者・プランナー・マーケター等、多分野のあらゆる職種を対象に、副業・フリーランス等様々な形に対応できるように準備していきたいと考えています。
副業での関わりを通して宇宙ビジネスを体験した結果、自分の本業でも宇宙ビジネスを導入してみるなど、「宇宙ビジネスをあっちでもこっちでも」を当たり前に作っていく・使っていくような世界を目指していきたいです。

また、将来の人財基盤を担う子どもたちの思考力やプロトタイピング力の向上、柔軟な未来のサービスアイデア収集を目的としたプロジェクトを進めていきたいと思っています。関連する子ども向けワークショップを既に実施したこともありますが、更に力を入れていきたいと考えています。

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なぜ会社を辞めないのか、本気じゃないのか


このような経緯で会社を作ったのですが、副業でやっています。
ベンチャーを本気でやるのであれば、会社を辞めて起業するがスタンダードなのかなとも思うのですが、私は敢えて副業の道を選びました。でも、中途半端にするつもりはありません。両方を全力でやりたいと思っています。

その理由は2つあります。

1つ目は、宇宙ビジネスの裾野拡大のためにはやっぱり衛星データプラットフォームサービスの普及が不可欠で、さらには一つ一つのビジネスを推し進めるためのチーム(とそれを組成する仲間)が必要だからです。「私たちの日常を豊かにするビジネス」を生み出していくためには、宇宙アセットとしての衛星データ(@Tellus)とチーム(@sorano me)を両方揃える必要があり、それはどちらが欠けても目的は達成できないと考えています。なので、全く違うことを2つやっているわけではなくて、ひとつの目的のために必要なことをやっているだけなのです。

2つ目は、自分自身が最前線で、チームで宇宙ビジネスをやっていることが重要だと思っているからです。同じ挑戦を自分がしているからこそ、挑戦する人の気持ちがわかるし、その挑戦に合った支援ができるはずです。支援というよりは、同じ目線で、大きく見れば仲間としてやっていくイメージです。

伴走しながら宇宙アセットを使ったビジネス開発を進めつつ、衛星データプラットフォームのビジネス開発を自ら行うことで、ビジネス開発をする人にとって使いやすいデータプラットフォームとしてのこれ以上ないフィードバックを得ることができ、両方やっているからこそ得られる相乗効果があると、私は思っています。

徹底的な民主主義を大事にしていく。


sorano meは全員が副業です。さくらインターネットとの副業のメンバーだけでなく、ライターやインキュベーター、ベンチャー経営者など多岐に渡るメンバーで運営しています。

最終的な決定権は社長である私が持っていますが、創業時から13人もいる会社ですから、大切にしているのが「みんなの意見」です。徹底的に民主主義で、Slackでは自分の事業に対する考えをいつでも覗いてコメントができるオープンチャンネル「#times_kido_toy」を展開しています。

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現在はフルリモートですが、テキストでのコミュニケーションを大事にしており、毎日、slackの雑談チャンネルではメンバーが自由に今日の夕飯、思ったこと、驚いたニュースなどをつぶやいています。毎週実施している自由参加のナレッジシェア会では「今週の私」として気になる宇宙ニュースから、好きなタレントの話など自由に話しています。ここ1年半殆ど会っていない時期が続きましたが、大体みんなの近況は認識しています。

世界を変えるのは一人のヒーローじゃない


私は、勉強も比較的苦手で、学生時代はオール5を取ったこともなく記憶力もあまりよくないポンコツです。sorano meにいるメンバーもそれぞれに優秀ではありますが、何かしら欠けていたり、ちょっと変だったりします。誰もが、1人のヒーローにはなれないタイプ。(ヒーロータイプ、いたらごめんね。)

1人のヒーロー的なカリスマ社長が牽引するような、”すごいベンチャー”は憧れるけれど、私が作りたいのは、当たり前にその辺にある、たくさんの小さな宇宙を使ったビジネス。
小さな挑戦を「ちょっとやってみようぜ」と一緒にやれる仲間にsorano meがなりたいと思っていますし、sorano meを通して、仲間を見つけられたという人が増えたら嬉しい。
そしてここでやったことが、それぞれの本業に活きて、暮らしに活きて、他の活動に活きて、ごちゃまぜになっていってほしい。その先に、sorano meの他にもたくさんの会社が宇宙ビジネスを手法として使っていくことが当たり前の世の中になるはず。

大きな成功をひとつよりも、小さな成功をたくさん作っていきたい。
その積み重ねの先に、私たちが思い描く「豊かな日常」が待っていると信じています。

sorano meは、まだまだスタート地点。これから、それを証明していきたいと思います。

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●資金調達に関するリリース
宇宙に特化した伴走型事業支援を行うsorano me、FGN ABBALabから資金調達を実施。事業拡大に向けて人財基盤を構築

●インタビュー

宇宙ビジネスを日本の誇る主産業に。宙畑立ち上げメンバーの新たな挑戦|宙畑-sorabatake-

●お問い合わせ
株式会社sorano me
メールアドレス:contact@soranome.com
ご依頼について:https://note.com/soranome
コーポレートサイト:https://soranome.com/

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