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コーヒーが私に教えてくれた「こだわり」のある人生

このエッセイはライター育成スクール「LEarn」でのエッセイライティング課題で執筆したものです。

昨年の10月に前の家から1.5キロほど離れた場所に引っ越しをした。
住んでいる区も変わらなければ、行動範囲もこれまでとさほど変わらない。それでも生活圏は若干変わるのでカフェはないかなと思い、Googleで調べてみることに。

その中の1つにハンドドリップコーヒーと手作りデザートを売りにしているカフェがあり、ちょうどコーヒーが飲みたかったので早速行ってみることにした。

お店に着いた時間はお昼過ぎ、店内のお客さんは私だけ。
「前に来てくださったことあります…?」のオーナーの第一声から退店までの1時間弱、ずっとオーナーと喋りながら過ごすことになった。

オーナーはおしゃべりが好きなのだろう。「コーヒーお好きなんですか?」「よく喫茶店やカフェをめぐられたりしてるんですか?」とコーヒーやカフェにまつわる質問をぽんぽん投げるオーナー。気分によっては話しかけられるのが嫌な時もあるし、静かにさせてほしいと思う時もあるけれど、この日の私もおしゃべりがしたかったのだろう、律儀にひとつひとつ答えていった。

「よく喫茶店やカフェをめぐられたりしてるんですか?」と質問を受けて、「2年ほど前からコーヒーがようやく美味しく飲めるようになって、それから気になるお店で飲むようになりましたね。」と答えた。しばらくしてオーナーからこんな問いを投げかけられた。

「ようやく美味しく飲めるようになって、お店でも飲むようになったって言ってましたけど、何かきっかけはあったんですか?」

私とコーヒーの関係は「こだわり」に触れることで深まったこと。そこに至るまでの経緯をじっくりお話しすることに。

私のコーヒー事情と変化

地元の珈琲屋さんでの1杯

コーヒーへの興味vs身体の冷え

高校生の時にはコーヒーを飲めるようになっていたし、コーヒーが嫌いなわけではなかった。しかし、体質なのか、何なのかはわからないのだけど、大学生の頃からコーヒーを飲んだあと、身体が冷える感覚があったのだ。「コーヒーを飲んであったまろう」という人も多くいるなかで、私にとってはなぜか真逆にしかならない。そのせいでどうしても飲みたい時や出先で出された時以外は飲まないようにしていた。

それでもコーヒーが飲みたいという気持ちが現れるようになったのは2年ほど前。オフィスで働いていた時に、コーヒーに対するバイアスは少しずつ外れていった。土曜日の出勤前に買うコンビニの100円コーヒーや、残業しながら飲むカップ式自販機のコーヒーがやたらと美味しく感じたのだ。気づいたら飲む機会も増え、冷えもそこまで気にならなくなっていたので「あ、もう大丈夫かな」と感じたのだ。もしかしたら、身体の冷えさえも気にならなくなるほど、コーヒーへの魅力が高まっていったのかもしれない。

会社を退職してからはコーヒーを飲む量は減り、2週間に1、2回ほどだけれども、ほぼ飲まなかった昔の私からしては増えた方である。

こだわりの詰まったスペシャルティコーヒーとの出会い

同級生のカフェでの1枚。めちゃくちゃ可愛いの!

という話をオーナーに話しながら、もう1つ思い出したことがある。

私のコーヒーへのバイアスが外れたのと同じ時期に、小・中学の同級生がカフェを開いた。
カフェを開く前に、地元の朝市で出店をしていて、そこに遊びに行った時に初めてスペシャルティコーヒーというものを知った。

※スペシャルティコーヒーとは
消費者(コーヒーを飲む人)の手に持つカップの中のコーヒーの液体の風味が素晴らしい美味しさであり、消費者が美味しいと評価して満足するコーヒーであること。
風味の素晴らしいコーヒーの美味しさとは、際立つ印象的な風味特性があり、爽やかな明るい酸味特性があり、持続するコーヒー感が甘さの感覚で消えていくこと。
カップの中の風味が素晴らしい美味しさであるためには、コーヒーの豆(種子)からカップまでの総ての段階において一貫した体制・工程・品質管理が徹底していることが必須である。(From seed to cup
具体的には、生産国においての栽培管理、収穫、生産処理、選別そして品質管理が適正になされ、欠点豆の混入が極めて少ない生豆であること。
そして、適切な輸送と保管により、劣化のない状態で焙煎されて、欠点豆の混入が見られない焙煎豆であること。
さらに、適切な抽出がなされ、カップに生産地の特徴的な素晴らしい風味特性が表現されることが求められる。

引用:https://scaj.org/about/specialty-coffee

コーヒー豆の生産から自分の手元のコーヒーカップ、そして口に入るまで、一貫したこだわりと管理を持つ、特別なコーヒー。同級生がコーヒーを淹れている時も確かにすごく丁寧にドリップしていた。そしてそのコーヒーの美味しいこと!香り、味、余韻、すみずみまでこだわり抜いた一杯ってこんなに特別なのか!と驚いた瞬間だった。

コーヒーのお店を開いている人は、味、香り、豆、機械などさまざまなこだわりを持ってコーヒーを淹れているんだろうなと思った。特にスペシャルティコーヒーを取り扱っているお店に関しては、よりこだわりがあるのだろうとも思う。そんな奥の深いコーヒーのこだわりをもっと知りたくなって、「いろんなお店のコーヒーを飲んでみたい」とコーヒーへの思いが熱くなっていったのも、同級生が淹れたコーヒーがきっかけだった。

「こだわり」を知ることで感性は磨かれる

コーヒーに限らず、こだわりや究極を突き詰めるモノやプロダクトは周りにたくさん溢れている。それらにまつわる「こだわり」を知った時、応援したくなったり、もっと知りたくなったり、リスペクトしたくなったり、愛したくなったり、さまざまな感情が生まれる。
全てを知るわけではないからこそ、ちょっとした「こだわり」を知ることで、自分の価値観や感性って磨かれるのではないかなと思う。
オーナーとのコーヒーにまつわる話とともにいただいたコーヒーは、コーヒーが好きすぎて名古屋で有名なお店で修行したという彼の奥深い歴史まで味わえるような、まろやかで深みのあるこだわりの一杯だった。
目の前にあるモノへの「こだわり」に少し想いを馳せると、いつもと違った景色が見えてくるかもしれない。だから私はこれからも丁寧な「こだわり」を大切に感じ、それらをリスペクトできる人でありたいなと思う。

コーヒーへの情熱が冷めないでいるように、こだわりへのリスペクトを高め続ける人生に。

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