相続雑記(③売れた田舎の家)

旧生家の売却

売れそうにない立地と偶然

 父の「旧生家」(老朽化で土蔵を除いて取り壊し、寝泊まりできる程度の家を再築)に突然買い手がつきました。田畑が広がる市街化調整区域内、最寄駅から2kmで公共交通機関なし(Googleマップで調べたら徒歩27分。父もここから、よく学校や職場に通ったものだなぁと感心します。)。向こう三軒両隣のうち、2軒が空き家、1軒は人づきあいをしないお宅、お付き合いがあるのは2軒(うち1軒は緊急用に鍵を預けていました。もう1軒は亡父の同級生で、除草剤散布などをお願いしていました。)という立地です。

 不動産屋にあたりましたが、最初にあたった会社(地元ではそこそこ大手)は、市街化調整区域の物件は扱わないと断られました。どうしようかと考えているうちに、たまたま隣の家の売買に先立ち、境界確認を申し入れてきた仲介業者に売却の意思を伝えました。そうすると、購入希望者の方が、隣家から乗り換えてきたとのこと(隣家は、農家だから特別に認められる建物とかで、農業を営まない人が住むには農業委員会の許可が必要とのこと。その後改めて購入希望者が現れ、その許可待ちだとか。ハワイの実業家とその日本人の妻らしいです。)。不動産価格が上がっているという昨今ですが、その恩恵は間違いなく来ていないエリアです。

親族の説得

 条件も悪くないし、家族の了承も得られました。母も四十九日法要が最後の(旧生家)往訪になると言っていました。
 唯一抵抗を示したのが現地に住む親戚(筆者の従兄。元銀行員。)。父の死後あまりに早い処分だし、私自身もそう感じていますが、このチャンスを逃すと次があるかわかりません。一度は足を運び、直接話をしたうえで、最後は全権委任をいただきました(といっても、相続人は母・姉と私だけなので、本来、口を出す権利はないのですが。)。

引渡しまでの段取り

 購入希望者からは、完全居抜きでよい(生活雑貨も含め。プライバシーに関するものは除く。)との好条件でした。とはいえ、亡父や母の衣類なども残っています。肌着やタオルなどについては現地で焼却処分(ほんとはいけないのですが、野焼きしました。それだけ人が周囲にいません。)、それ以外については古着deワクチンという衣類寄付サービスを利用すべく、45リットルゴミ袋4つ分を車でいったん自宅に引き上げ、送付しました。

 次いで、土蔵にあるあれやこれやのもの。土蔵は大正年間に建てられたものですが、私自身に鑑定眼があるわけはなく、価値のあるものは引き取ってもらい、いらないものは捨てることを考えました。前出の親戚も、そのあたりを懸念していたようです。

 結果、ネットで探した地元の古物商に声を掛けました。箱バン1台で乗り付け、二人で選り分けていきました。その前に来た仲介業者が連れてきた古物商と比較して倍近い値段がつき、即引き渡しました。骨董品のようなものはありませんでしたが、外国人向け売れ筋のものを中心に引き揚げていきました。ただ、値がつかないものを引き上げてはくれません。古物商と産業廃棄物処理業は別の免許がいるためです。

 2社の話を総合すると、①相見積もりを取ると、たいがい後から来た業者が勝つ。これは、プロが選り分ける段階で、ちょっとした動作(寄せたり、避けたりなど)で、同業者が来たことがばれる、②引き取ってすぐオークションに出す、③外国人向けは陶器類(什器含む)、屏風が人気だが、屏風はサイズの問題がある(大きすぎるとハンドリングに困る)。鉄器は引く手あまたらしい(わが土蔵にはありませんでした)、という感じです。

 8月、9月、10月と3回に分けて現地に通い、10月には祖父・祖母の位牌がある仏壇を、母のもとに送り出しました。見積もりを某国内最大手に頼んだところ、美術品扱いになるとかで、100万円以上の金額を提示されました。他方、仏壇引越専門業者をネットで探したところ、5分の1以下になりました。仕事は丁寧で、間もなく母のもとに運び込まれる予定です。

引渡し

 そんなこんなで11月。いよいよ物件の引渡しです。買主、司法書士、不動産会社と私(売主)が銀行に集まり、いわゆる権利証(登記情報識別情報)の確認、委任状の提出、引き渡す書類や物の確認を経て、先方から残代金の振り込みがなされました。いわゆる「五・十日」にあたったうえ、金融機関をまたぐ取引になったため、着金には1時間ほどを要しました。iPadを持参し、金融機関アプリの「更新」ボタンを何度もクリックしましたが、なかなか反応しません。あれやこれやと雑談をしながら、1時間経って、金額がボコッと増えました。無事着金です。買主と別れ、司法書士は法務局へ、私はその場で不動産屋に仲介報酬を支払い、これで万事完了です。

 この日は日帰り。帰途に就く前に、墓参り(雨だったので手を合わせるのみ)の後、人手に渡った生家に寄りました。まだ表札がそのままですが、何か万感迫るものがありました。

④につづく


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