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人事の成り立ち

メンバーシップ型から、ジョブ型へ移行すべきという議論が一部で起こっています。日本型雇用の限界という言い方もされます。この手の話は、本質がよく分からないままにある一部分の問題点やメリットだけが切り取られて、○○は時代遅れだ、これからは△△の時代だと言われることが多いですね。

といいながら、わたし自身その本質が理解できているのか、そんな問題意識もあって、積ん読になっていた「人事の成り立ち」を読みました。

「誰もが階段を上れる社会」の変遷から働き方の課題に迫る良書

この本では、戦後から現在に至るまでの時代を6つのフェーズに分け、その時々に上梓された「日本型雇用」に関する17冊の名著を紹介しています。それぞれの著書の内容が時代背景とともに解説されています。日本型雇用がどのような変遷を経て来ているのか、現在わたし達が直面している問題の本質は何かが語られています。

この本の副題に『「誰もが階段を上れる社会」の希望と葛藤』とあります。日本の企業は、その会社にいれば誰もが階段を上れる仕組みがベースになっているということです。そして、それには希望と葛藤という両側面があります。希望という意味で言えば、経済成長が続いていた時代は、入社して仕事をしていけば、だいたい課長にはなれたわけです。一方、葛藤はバブル期以降、働かない管理職がでてきてしまうなどある種の目詰まりを起こすようになってきたことです。このように課題が裏返しになっているのですね。こうした構造的な問題は、近年のブラック企業の出現や女性活躍が遅れてしまう要因としても説明がなされています。そうした歴史的な変遷のなかに一本の筋道が語られており、大変興味深い内容でした。欧米が良い、日本が悪いではなく、それぞれのメリット、デメリットに基づいて、これからわたし達が進むべき方向を考えていこうというスタンスにも共感を覚えました。

人事の成り立ちという大局観を次世代へつなげたい

わたし自身は、転職を繰り返してきています。そのため、階段を上ったつもりはありませんでした。自分でキャリアを作ってきた、と。しかし、なんだかんだ言っても、新卒一括採用という社会だから、大学卒業後に職を得られたという見方も成り立ちます。そして、階段を上がっていく社会通念があるからこそ、転職して次の機会を得ることができました。大した実績がなくても将来の可能性だけで雇ってもらえたのです。幸いにして、その都度お客様や働く仲間に恵まれて、仕事そのものが楽しく、成長実感を得ることできています。

仕組みの中にいるとその仕組みで生かされていることに気がつかないものだと改めて思いました。また、この仕組み自体もその時々の最善策を積み重ねた結果できあがってきているものです。この先も働き方について、試行錯誤を重ねる中で変わっていくのだと思います。

いま、いくつかのお客さまで人事評価制度のプロジェクトが動いています。このタイミングで人事の成り立ちの大局観を得られたのは大きな収穫でした。わたしも試行錯誤を積み重ねて、より良い働き方ができる社会の一助となりたいと思います。

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