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モンティパイソンのSPAMALOT

福田雄一演出のミュージカルは、
3〜4年前の『ヤングフランケンシュタイン』以来2作目の観劇でした。

ご時世的に、死生観を軸に展開する作品が多くて
「生きること」を考えさせられる演劇や映画ばっかり見てたんだけど、
純度100%のコメディはやっぱり最高だった。

ストーリーは、
山田孝之演じるアーサーが神のお告げを受けて仲間と共に聖杯を探しにいくっていう、
ほぼ『勇者ヨシヒコ』な物語なんだけど(笑)

見どころが数秒に一回散りばめられててもはや覚えていない。

冒頭、フィンランド民謡みたいな曲をアンサンブル(パンフレットには歌って踊る人びとと表記されていたかな)がまあ長々とのどかに歌って踊るんだけど、
「フィンランドじゃない!イングランド!」
とやっとつっこみが入って物語に入る、何今の時間?(笑)

殺されても殺されても「死んでないよ!」と生き返るシソンヌじろうの気持ち悪かわいいキャラクターに始まり、
アーサーたちを門の上からめちゃくちゃ煽り倒すフランス人騎士の賀来賢人、
斬られて腕を失っても足を失っても負けを認めない敵シソンヌ長谷川、
運命の相手を待つゲイの王子様シソンヌじろう、
とクセの強いサブキャラがたくさん現れる。

文字にすると、何言ってんだろう?感。

なにがアドリブなのか、なにが台本通りなのかもさっぱりわからない。
キャスト全員がひとつでも多く笑いをとってやろうとギラギラしてて、
客も安心してゲラゲラ笑える舞台。

ストーリー部分だけ演じたらきっと5分で終わるところを、3時間に伸ばして伸ばしてやってるんだからおもしろい。

小関裕太と矢本悠馬とシソンヌじろうのボケの嵐を、シソンヌ長谷川がさばき倒すシーンなんて一生見ていたかった。
世界観がシソンヌのコントなんだよな。

こんなにふざけてる舞台なのに、しっかり見応えがあるのは、
ベースにミュージカルとしての絶対的なクオリティがあるからだと思う。

王道ミュージカルの、誰でもワクワクしちゃうような楽曲、オーケストラの生演奏、歌のクオリティ、アンサンブルの完成度、
全部が一流だから大ふざけが許されるんだな、と。

なるほどな、王道ミュージカルから外れなければ作品として成立するんだ、

なんて思っていると福田雄一は、王道ミュージカルをもいじり倒す。

ミュージカル女王・新妻聖子ともあろう人を引っ張ってきて、あからさまに『オペラ座の怪人』オマージュで、
三浦宏規と共に小舟に乗って現れて、
ゴリゴリのミュージカル調の曲に乗せ
「王道ミュージカルにありそうな展開」
「この辺でキス」
「そしてこの辺で転調がお決まり」
みたいな歌詞を延々と歌わせ続けて。

どうなってるんだ?

新妻聖子はほかにも、
「私の出番まだ?」「レミゼラブルだって出てるのよ」「作品選び間違えたかしら」「プロデューサーに文句言わなくちゃ」
なんて歌いながら信じられないくらいの声量と美声で私たちの内臓を震わせてくる。

感動したらいいのか笑えばいいのかわからなくて脳がバグる感覚、たまらない。

福田雄一作品は、映像よりも舞台が好きなんだけど。
この生の空間に生まれる笑いに食らいつく必死な役者が見れること、
歌もダンスも想像を超えるパワーがあって、会場が爆音の拍手と感動に包まれちゃうこと、
が大きいと思う。 

大笑いして感動して、感情に頭が追いつかなくなる感じがクセになるんですよね。

それでも今作にだってテーマはあって。

孤独に悩めるアーサーに、相棒であるパッツィ(矢本悠馬)が歌う曲。

「人生楽に生きようよ」

この曲が本当によかった。
悩める主人公の前で相棒が歌い出し、気づいたら2人で踊っていて元気になるみたいな流れ、ヤンフラにもあったけど大好きなんだよなあ。

この曲はエンディングでも全キャストによって歌われる。

「人生楽に生きようよ」

何度も何度も楽しそうに、熱を持って歌われるフレーズ。

観劇して数日経った今も気づいたら口ずさんでいたりする。
元気がないときに歌えばきっと今作を思い出してちょっと笑える。

やっぱりこんなご時世だからこそ、
こんなふうにお気楽に笑って泣けるエンターテインメントが必要だなと思った。


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