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フェイク

実家に帰っていた娘と一歳の孫と3人で、近くのニトリに買い物に行った。

1階で必要なものを買い、
上の家具売り場で、ソファに腰掛けてみたり、孫をカートに乗せて広い売り場を冷やかしながら歩いていた。

木製のしっかりした子ども椅子を見つけたので、娘が試しに孫を座らせてみた。

椅子と一緒に展示してある食卓の上には、マグカップと平皿が。
そしてお皿の上には演出のための食品サンプル、ベーグルが置かれていた。

孫は目にも止まらぬ速さで、偽ベーグルを掴むと素早く口に運んだ。

いや、すんでのところで阻止する事ができた。
あと0.1秒遅ければ。。。

偽ベーグルを奪われた孫は涙をポロポロこぼして、声を張り上げて泣き続けた。

わたしと娘が

あれはパンじゃないよ

あれは食べられないんだよ

本物じゃないんだよ

いくら説明しても

恨みがましい目で
バン、バンと訴えながら
(パンのことを孫はバンという)
泣きじゃくる。

いっそ一口かじらせて
身をもって教えたほうがよかったか。

しかしそんな荒療治が
できるはずもない。

日本語が通じないもどかしさ。

食べ物の恨みの恐ろしさ。

食いしん坊過ぎる孫の行く末。

いろいろな思いが複雑に交錯する。


日曜日の朝、ニトリで起きた
ささやかな悲喜劇。