ヒプノシスマイク「なにわ⭐︎パラダイ酒」リリック解説

先日、ご縁あってヒプノシスマイクの企画に参加させて頂きました。「ヒプノシスマイク Division Rap Battle-side DH&B.AT」に収録されているどついたれ本舗「なにわ⭐︎パラダイ酒」という楽曲の作詞を同じ梅田サイファーのメンバーであるKZ、KOPERUと共作で作り、本文はその解説となります。
楽曲の解説など無粋だ!という意見も当然としてあると思いますので、「まだ、聴いとらんのじゃネタバレやめい!」「わしゃあ、舞台の裏側など見とうない!」という方はそっと×ボタンに触れていただければと思います。尚、同クルーのKZによる動画解説もございますので、合わせてそちらをご覧いただければ幸いです。


https://youtu.be/moDsPjrRFwE


①コンセプト
当初より「はしご酒」という方向性があったため、曲が進むにつれ、酔いに拍車がかかっていく流れにしていこうと構想がありました。1バース目でオオサカの街を闊歩しながら飲み屋で乾杯まで。途中酔いが回り熱くなって、締めはベロベロになるまでエスカレートしていくように段階を踏んでいこうとリリックを構成していきました。



②キャラクター
前述のコンセプトに沿うように描写するにあたって、誰を酔い潰れる役にするか話し合った結果、早い段階で盧笙が候補としてあがりました。ギャップはもちろんのことではありますが、どついたれ本舗のストーリーは盧笙というキャラクターの過去のトラウマとの対峙のストーリーとの側面もあると感じたので、お酒を通じて劣等感や罪悪感などの垣根を取っ払って簓に自分の思いの丈をシリアスすぎないバランスで伝えれるように描きました。
逆にひたすら乱れずマイペースに描いたのが零です。色々な思いが交錯する簓と盧笙に対して、零は関係性は希薄ではあるが何らかの意図があり行動を共にしてる立ち位置が独特なキャラクターではあります。
油断するとその異物感が、ただ単に浮いた人物として作用してしまうので、バースの随所に挟みこむことで、「2人+1人」ではなく3人のクルーであるように描きつつ、「半歩」くらい引いた立ち位置に出来るように全体を調整して書きました。



③各バースの説明
パートについてですが、
hook と3バース目の最後「少し飲み過ぎて〜」の下りがKOPERU。
この最後のパートは早めに完成していたので、ここを着地として僕とKZ君でバースを書いていきました

KZ君のパートは動画で丁寧に解説しているので、そちらを参考にしていただいて残りの部分が私KBDが書いたパートとなります。
(既に熱心なリスナーの方が色々な考察や解説を行っていただいてるので、ギミック自体の説明は控えめにその表現を用いた意図などを説明させていただきます)


●どこにいこうかホンマ悩ましい
茶屋町あたり一夜の過ち?
ばかばかしい 話花咲し
白膠木簓と愉快な仲間たち
やかましわアメ村無駄に通過して
縦断すりゃそこはニューワールド

前述の通り1バース目は「オオサカの街を練り歩いて店に入り乾杯まで行く」まで行きたかったので、3人がどこで飲もうか賑やかに話しながら南下しているのを地名を交えながら進行させてます。「アメ村を無駄に」の下りが飴村乱数にかかっていますが、ドラマパートで零との絡みがあったので加えました。河岸をミナミにするか新世界(new world)にするか悩みましたが、ライムの関係とコミックの方で通天閣を使ったギャグがあったので、新世界を採用しています。ちなみに、結構な距離を移動していますが、昔の梅田サイファーはサイファー終わり梅田から日本橋までよく歩いてたので、 「話しながら気が付くと長距離歩いてた」は我々的には割とあるあるです。

●はい優勝!
これぞ粉もんの王者
東のディビジョンなんぼのもんじゃ

KZ君が書いてきたバースでお好みなど食べ物を上げてくれてたので、簓の嫌いなもの「もんじゃ」に絡めながら、ボースティング(自慢)しながら他のディビジョンを挑発する内容になってます。どついたれ本舗らしくコミカルで騒がしく1バースを締めたかったので、採用しました。

●笑ってまうほど飲んでるポン酒
ペテン師集う呉越同舟
お上も狼も強制処分
ライバルとおると燃える性分
言の葉をつめてチョップ&ロール
俺らがこのまま頂点をとる
乗ってきたんとちゃう?盧笙っておっ?
あれ、目が? 焦点おおとる?

このパートは当初より全部同じ母音のライムで踏んでいこうと決めていました。入れ替わり立ち替わり踏んで行くことでコンビネーションを通じてチームの一体感を出すのが狙いです。
ペテン師の下りは「あゝオオサカdreamin'night」で「師と仰がれし者皆ペテン師」と繋がっているように作ってます。(クルーて素敵やん)「集う」と、「ごえつどう」の韻律が気持ちよくて気にいってる部分ですね。
お上と狼は、もちろん麻天狼などとも掛かってはいるのですが、 KOPERUの「ミナミで休日」という曲で
「お上が狼になり出してる」という好きなラインがあり、そこからの引用でもあります。
後半部分はお酒の力で盧笙らしからぬ事を言わせて「あ、いつの間にかこいつ酔ってきとるな」感を演出してブリッジの小芝居に持って行きたかったのでこういう展開にしました。常に酔いは目立たず秘密裏に進行して突然顕現するものです。素敵ですね。

●時流に媚びず燃やすスピリッツ
家でチルよりこれがDH流
一心不乱で遊びまくる
飲み過ぎちゃミスるマッコリが来る
空が白むまでに空くショットグラス
揺らぎだすシガーそっと燻らす
人生謳歌するナイトウォーカー
朝日が登るまでさあいこうか

ここのパートは当初無くて、KOPERUのバースだけで3バース目で締まる予定だったのですが、尺としてやや寂しかったので、全体のバランスを見て追加しました。KOPERUバースが酒の名前を入れるギミックがあったので、そこに乗っかったのと、もう少し、ヒプマイならではの要素を加えた形です。
時流に媚びずのラインは、昨今のコロナ事情や時代の変化で宅飲みやお酒離れが多くなってるのを少し寂しく思って、そこへ流されずにはしご酒で遊ぶみたいなイメージですね。
KOPERUパートが簓とのハチャメチャなかけあいだったので、自然と零パートが多くなりました。2人に言わせると鼻白むカッコつけた表現も零なら言えるのが楽しかったです。最後の「朝日が登るまで」は、当然、息子である山田三兄弟からの引用でありますが、彼らのイズムが零から受け継いだもので、音楽を通じて繋がっているように表現できたらと思いました。普段の音源ではできない創作物ならではのギミックができたと思います。ちなみに、ナイトウォーカーで踏んでから意図せずしてウォッカとかかってて歌詞まとめてから気付きました。ナイスパニック!



④ブリッジとアウトロ
僕らのやりすぎる性分が出たエピソードなのですが、最初アウトロ16小節くらいありましたw担当の方に聴いていただいて徐々に短くして最終ああなりました。
ベロベロになった盧笙を簓に任せて、全く酔ってない様子で帰っていく零とか、川に落ちそうな盧笙を簓が止めるみたいなのも考えたんですが、あくまで楽曲がメインだと考えると最終のスパッとした終わりでよかった気もします。
「悪くねえな。先へ進もうは、」皆様お察しの通り、ぺこぱさんのパロディです。誰が考えたって?KZ君や!



⑤終わりに
自分ではないキャラクターの歌詞を作るということに、当初は慣れない経験に戸惑うかなと思っていました。我々MCは自分たちのリリックを書くとき、大抵は自分の視点、自分の体験を基づきリリックを書くからです。このキャラクターたちがどういうことを経て、何を考えてどのくらいのことをさせていいのか。色々な人からお話を伺い、情報を集め、徐々に彼らのことを理解するうちに、少しずつ、まだ世には存在していない彼らの酒盛りが浮かぶようになってきました。多くの人に愛されているコンテンツだからこそ雑なリリックは書けないと思い取り組んだ結果、多くの人に好評の声を頂戴し、胸を撫で下ろすばかりです。「知る」ということが世界を広げてくれるんだなと改めて実感し、ヒプノシスマイクの世界の今後のさらなる展開を皆様と同じように楽しみにしてます。ヒプマイというコンテンツと我々のヒップホップの現場の理解が深まり、いつかライブなどでお会いできるなら幸いです。長文ですが、お読みいただきありがとうございました!

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