『新感染半島 ファイナル・ステージ』をみた

「新感染半島 ファイナル・ステージ」レビューの評価がかなり微妙で「これは90%つまんないヤツだな~、、、だけど見ちゃう!!」の勢いで見たらちゃんと面白いじゃないの

「ゾンビ映画×MADMAXをやるぞ!!」を1ミリも隠そうとしないのが清々しくてとても良い

”シリアスとギャグのバランス””明らかなMADMAXオマージュ”あたりが前作とは違うけど、だからこそ”結局ゾンビより人間のほうが怖い””狭いところに閉じ込めたほうが人間性をあぶり出せる”みたいな映画としての一貫性もより強く感じられる

大きなセットを用意する予算がないのを”登場人物を狭いところに追い込む”ことで解決しつつ、同時に人間性を炙り出すことにも成功してて「映画の作り方が上手い!!」と感動してしまう。

ラストでチンピラが”撃つときに顔そむけて撃ってる”とかがちゃんと前フリになってて(「だから息の根止めれてなかったんだ」っていう)、ツッコミどころを丁寧につぶしてるのが本当に作りが細かいな~と感心する

「ゾンビは光と音に反応する」という設定があるので”下品にビカビカ光ってアホみたいに大きな音を出すめちゃくちゃマヌケなもの”がちゃんと意味を持って画面上に現れるのが面白すぎる

「沢山の人間を一箇所に詰め込む時」や「素性の分からない外部の人間を仲間に引き入れる時」に、まず”感染してないかテスト”みたいな事をするくだりがないのがリアルじゃないな~とか思ってたんだけど、まあ現実世界も実際このくらいの雑さなんだよな

映画でたまに見る”銃撃戦なのに超接近戦になる”ヤツ、毎回「絵的にはかっこいいけどそうはならんやろ」って思いながら見てたけど、相手が勢い良く突っ込んでくる不死身のゾンビだとめっちゃ自然に見えるなぁという発見があった

新感染とかアイアムヒーローとか見てて思ったけど、ゾンビ映画は武器がしょぼい方が面白い

脚の不自由な青年の顔のキズ、明らかに人間につけられたキズだよなぁと分かるあのヤダ味、、、(違うかもしれんが)

ラスト「”ゾンビ映画”がみたいワケでそういう”お涙頂戴”展開は求めてないんだよな~(号泣)」ってなってしまう。

「ごめんよ、世界を変えられなくて」のセリフの後にあの展開が待ってたらそりゃオッサンは泣くんよ

予告編、けっこう「その映像は予告編で見せたらダメだろ」という箇所が使われてる気がする

韓国人と英語

前作みたく”歴史的な事件を下敷きにしている”という構造ではないけど”白人に手を差し伸べてもらわないと生き残れない”とか”登場人物全員が英語話せる”とか、韓国社会の現在の空気感みたいなものは結構表現されてるんじゃないだろうか

依頼主の手下の”韓国人相手に英語で話す韓国人”というキャラが絶妙だった。(マジで現実世界にもいるヤツなんだよな)

”適応する人としない人の話”という風にも受け取れる。

「白人の手下として生きる」と腹くくってるチンピラは韓国人相手にも英語で話すし、現地に潜入するチームは「オッケー」とか「ソーリー」とか明らかに皮肉としてしか英語を使おうとしないっていう描写だったり、

英語をどう扱ってるか”白人のクツをなめて生き残るしかない”という現状に適応しようとする人間なのか、そうしようとしない人間なのかが対比的に描かれてるようにも見える

半島に取り残された人々も631部隊が”ゾンビに囲まれてるし脱出の見込みもないけどまあ、楽しくやろうぜヒャッハー!!”って感じでこの最悪な世界に完全に適応しちゃってるのに対して、あの一家は半島から脱出するという希望を捨てようとしない(地獄に適応しようとしない)

ゾンビの数え方

ゾンビの数え方が「匹」なのが631部隊の精神性を地味に表してるな~と変に感心してしまった

ゾンビの数え方、簡単に調べてみても「人」「体」「匹」とか色々出てきて正解が分からない

かくれんぼ

”かくれんぼ”の何が最悪かって、「この先何かの拍子に法律とか警察が機能しなくなる機会があったら人類マジでこういうことやり始めそうだな」っていう絶妙なリアルさで、「ネットも漫画もアニメもゲームも取り上げられたあの状況だと最高の娯楽なんだろうな」っていうのがなんか理解できてしまう

実際に人間が考え付いて実行してきた”人間を使った娯楽”の歴史がブワッと頭をよぎる

前作は”一部の最悪な人間達に憤る”という立場で見てられたんだけど、なんか今回は「まあ、人間のモラルってこの程度だよな、、、」みたいなのが常にチラつく

”かくれんぼ”で次々にゾンビにやられてくところで「うわー!腕のここのところを噛まれてしまったー!!」みたいなカットでちょっと笑っちゃったんだけど、長回しのワンカット撮影であのスピード感でアレをキチンと画面に納めるのは相当苦労しただろうな

起こってることは最悪なんだけど画面構成が何故かずっとブルーとオレンジでめちゃくちゃにMADMAX感を前面に出してきてるのがちょっと笑える

ソ大尉とファン軍曹

この作品におけるイモータン・ジョーはソ大尉とファン軍曹に分割されてるんだけど、二人とも全然カリスマ性がないのが面白い

ソ大尉が傀儡になってるのは明らかなんだけど、実際に部隊を仕切ってるファン軍曹も別に全然尊敬とか信頼を勝ち取ってるわけじゃなくて、執拗に部下の褒美を要求するのも「労力に見合った褒美を用意できないと自分の身がまずいことになる」のを分かってるからな気がする

ファン軍曹、噛まれたてホヤホヤの部下も躊躇無く撃ちまくるので逆にすがすがしい

ソ大尉はファン軍曹とは違って、状況が最悪だったから最悪の決断を繰り返してきただけの”ちょっと頭がきれるだけの普通の人”なんだろうなというのが終盤の色んなシーンからにじみ出てる

彼が劇中でやってる事はクソ野郎のそれなんだけど「半島に帰ったらまじめに暮らすよ、毎晩寝る前に君達に感謝する」ってセリフは本心なんだろうなっていうのが伝わって来て切なくなる

ソ大尉役のク・ギョファン、衛星電話で話す時の演技が本当にすごい

目がキョロキョロ動いたり瞬きが増えたりする細かい演技が「必死に脳ミソ回して急展開に対応しようとしてる」感じを演出してたり、相手の話を理解した途端に下手に出る感じとか、素人目に見ても「この役者さんメチャメチャ演技が上手いな」と分かる


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