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虚誕解説 Part5(Ever17 Loop3)

この解説は、以下のinfinityシリーズのネタバレを含みます。
以下の作品をプレイしたことのない方は、解説をご覧になる前にプレイすることをお勧めします。
なお、このマガジンでは、Ever17についてXBox版の内容を含みません。

  • Never7 -the end of infinity- 

  • Ever17 -the out of infinity-

ココ

Ever17は、プレイヤーと同じ俯瞰者であるBWを当事者に仕立て上げます。
しかし、統合するまでのBWは視点先の人物として振る舞うので、普通はBWと交流することは出来ません。
その中でココだけが超能力によってBWを認識し、メッセージを送ることが出来ます。

[補足]Ever17では、メタ発言がいくつかあります。
その中でも、ココの発言にはNever7のネタが多く存在します。
これも超能力によってNever7のキュレイ空間を覗いていたからだと考えられます。

キュレイ空間の性質上、空間内で起きる超常現象は、BWの視点で妥当性と理想性を備えていることになります。
それならば、ココの超能力にも現実化の条件を満たすことが求められます。
特に、ココの超能力は第3視点を借りていることによるものです。
BWがそれを知らないはずがありません。
Ever17中にココが超能力を得る切っ掛けとなった場面があるはずです。

八百比丘尼

ココは、真相を暗示する話をいくつか語ります。
その中で八百比丘尼伝説が、ココの超能力と関係しています。
八百比丘尼は、人魚の涙を飲んで不老不死となった人物です。
不老不死といえば、キュレイウィルスを連想します。
ですから、八百比丘尼は、一見キュレイ種のつぐみを暗示しているように思えるかもしれません。
しかし、この話でつぐみの立場と一致するのは、八百比丘尼に不老不死を与える人魚です。
ココは、天真爛漫な彼女には珍しく、自身の立場を八百比丘尼に重ねて同情しています。
これは、3次元体にして第3視点を借りることになったココの苦悩が表れているからです。

「ロマンチック、かぁ……」
「ココは、ロマンチックって言うよりも、ちょっぴり悲しい気がするなぁ……」
「?」
「?」
「だってさぁ……」
「暗ぁーい暗ぁーい洞窟の奥で……」
「ずーっとずーっとずーっと……『彼氏さん』が来るのを待ってるんだよ?」
「寂しくて、寂しくて、寂しくて……」
「だけど、死んじゃうこともできなくて……」
「人魚の涙なんて、飲まなければよかったのに……」

Ever17 -the out of infinity-
5月4日 ココ編 比丘尼涙

第3視点は、キュレイ空間の4次元情報を得ることが出来ます。
4次元情報を得ることは、3次元の過去と未来のあらゆる情報を得ること――第3の眼の開眼と同義です。
ココは、キュレイ空間のあらゆる情報を得ることになります。

一方、キュレイ空間は、BWの認識によって異なる可能性に収縮します。
ココが救われるには、BWがBWであると自覚して統合を果たす必要がありました。
逆に言えば、統合を果たすまでは当事者のBWにとってココが救われる可能性はないのと同じです。
ココは、あくまで第3視点を借りているに過ぎません。
キュレイ空間のあらゆる情報を得ることが出来るといっても、BWが認識出来ない情報を得ることは不可能です。
こうして、第3視点のもたらす無限の可能性の中に、自分の救われるものが存在しないという絶望を味わうことになります。

ココが八百比丘尼に同情的だったのは、長年待ち続けても恋人との再会を果たすことのなかった八百比丘尼に、BWの救出を待ち続けた自分を重ねたからです。
こうした振る舞いは、幻のココにも表れています。
幻のココが悲観的だったのはこのためです。

他にも、八百比丘尼は幻のココの生体反応の理由付けになります。
洞窟にこもった八百比丘尼は、生存の証として鈴を鳴らし続けました。
それと同じように、幻のココはBWの救出を願って生体反応1を返し続けます。

かつて交わした約束と。いつか還るべき場所へ。

さて、ココと八百比丘尼との一致を確認したところで本題に戻ります。
ココが超能力を得る切っ掛けとなったのは何なのか。
八百比丘尼は人魚の涙を飲んだことで不老不死となりました。
Ever17で不老不死といえば、キュレイウィルスです。
つまり、キュレイウィルスがココの超能力の源です。

キュレイウィルスは、Never7のキュレイシンドロームと密接な関係があります。
キュレイシンドロームは、妄想が伝播する様子を症候群と捉えました。
キュレイウィルスは、不死が伝播する様子を感染と捉えます。
伝播の方法の違いがあれど、超常的な現象はキュレイによって現実化したものです。
それならば、キュレイウィルスの作用として説明された不老不死は、キュレイの力の一端に過ぎません。
その本質は、人々の願う妄想――奇跡です。

ココは、コールドスリープの直前でつぐみの血液から生成した抗体を接種しています。
これこそがココの超能力の源である人魚の涙です。
接種直後、高次元体であるBWを視認出来るようになります。
ゲームの登場人物とプレイヤーに近い関係の2人にとって、まさに望んで止まなかった奇跡です。

武とBWはそれぞれ、コールドスリープの間ココのそばにいることと、ココとの再会を約束します。
武とBWは、視点を貸し借りする関係です。
互いの思いは妄想として伝播するので、BWもココのそばにいることを誓ったことになります。
3次元体の武とは違い、BWにとってのコールドスリープの間というのは、ココルートの世界を迎えるまでのことであり、3次元空間の時系列に縛られません。
こうして、BWが――過去と未来を含めて――ココのそばにいることとなり、ココが超能力者だったことになります。

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