見出し画像

オフコースのオリジナルアルバムを勝手にレビューするシリーズVolume7:「FAIRWAY」

自分でもすっかり存在を忘れがちになってますが、継続中なのはもちろんわかってますよ。単にいろいろあっただけです。
例によってグループ名にもはや中黒なし。なおかつ敬称略。

序説

この時代のオフコースは、既に事実上五人組だった。その辺りのことは前作の時にも述べている。

アルバムカバーには依然として小田と鈴木の二人しかフィーチュアされていないが、シングル「あなたのすべて」のジャケットには、小さいながらも五人のメンバーショットが載っている。

実際この頃、機運としては大間・松尾・清水の後発の三人を含む五人グループとして売っていけるだけのイメージはあったようだ。
実際、後発の三人のことは「バックメンバー」的な紹介をしていなかったというし、本当にそういう機運はあったのだろう。
しかし、この時は「オフコースという名前で縛るより、お互いの緊張感を大切に」という共有されたイメージで五人の意見が一致を見たことから、そうした観念の下で活動することになった。

アルバムのタイトル「FAIRWAY」はゴルフ用語として有名で、メンバー(特に小田)が熱心だったことからタイトリングされたものだろう。これは次作の「Three and two」にも当てはまる。

アルバム全曲を紹介しておく。

1:あなたのすべて
2:美しい思い出に
3:いつもふたり
4:夢
5:この空に羽ばたく前に
6:夏の終り
7:季節は流れて
8:失恋のすすめ
9:去っていった友へ~T氏に捧げる
10:心さみしい人よ

以上の10曲に加えて、最後に「いつもいつも」として知られる、クレジットのないトラックがある。但し、これも昔実際に発売されていた2in1のミュージックテープにはあったりする。その理由はよくわからない。
曲の作者は小田(1・3・6・9・10と「いつもいつも」)、そして鈴木(2・4・5・7・8)とほぼ半々。
他にシングルのカップリング曲として作られた「海を見つめて」が鈴木作である。

1:あなたのすべて

アルバムの前に先行シングルとして「海を見つめて」をカップリング曲としてリリースされている小田の作品。
プロデューサーの武藤によれば「高度なことをやっている」らしいが、何を指してのコメントかは不明。
オフコースとしては珍しいクラヴィネットなどが登場するアレンジを指しての発言だろうか。あるいは、頻繁に転調する展開のことを指しているのか。いずれにしても趣旨はわかりづらい。
(作詞・作曲:小田和正)

2:美しい思い出に

このアルバムのリリース時にはアルバム収録曲という扱いで終わっているものの、後にシングル「愛を止めないで」のカップリング曲になっている。
鈴木に言わせると「トム・スコットの路線を狙った」らしい。ただ、鈴木にしてみると「精一杯背伸びをしている」イメージにしかならなかったようである。
しかしながら、鈴木が意図していたかどうかは知らないが、リズムの取り方が独特で面白い効果を出している。
(作詞・作曲:鈴木康博)

3:いつもふたり

小田による小品。バンジョーのような音も聴かれる。そしてジャズ風味のエレキギターも加わり、これらが小田のエレピと絶妙の絡みを見せている。
アレンジや小田の歌唱から見ても、ジャズの要素を取り込んでいる。
(作詞・作曲:小田和正)

4:夢

前の「いつもふたり」からシームレスで始まる鈴木の作品。アレンジだけ聴いていると、ビートルズの「Dear Prudence」にも近い雰囲気すらある。
但し、近いと思われるのはあくまでもエレキギターのアルペジオ中心のアレンジ程度のことであり、「Dear Prudence」のようにテンポが上がったりはしないし、ドラムスも使われていない。
こちらはあくまでもギターのアルペジオを中心として、静かに奏でているバラードという趣。
(作詞・作曲:鈴木康博)

5:この空に羽ばたく前に

小田のエレピやシンセが大活躍するが、作者は鈴木。マリンバが絶妙なアクセントになっている。
鈴木の作品でギターは活躍しないのかというと、そんなことはなく、堅実なリズムを刻んだり、曲のボトムラインを作るのに寄与している。
サビで転調するのもミソ。本作に於いてもっと評価されても良いと思うのは私だけだろうか。
(作詞・作曲:鈴木康博)

6:夏の終り

小田の作品。序盤、小田のアカペラのバックに何もないように思われるが、ハイハットで細かくリズムが刻まれている。
ベスト盤「SELECTION1978-81」に収録されているように、佳作と評価されているフシがある。小田自身も後にセルフカヴァーした。
(作詞・作曲:小田和正)

7:季節は流れて

鈴木によるロック調の作品。「あなたのすべて」でも活躍したクラヴィネットが、ここでも活躍している。
ギターソロは鈴木だと思われるが、ここまで派手なソロを披露したのは、恐らくこの作品が初めてと言っていい。
「あなたがいれば」という例はある。また「こころは気紛れ」のシングルテイクもあるが、いずれにしろそうそうあるものではない。
(作詞・作曲:鈴木康博)

8:失恋のすすめ

鈴木による、前の曲からは一転して、ブラスセクションの影響もあってかコミカルなテイストもある、何処かブルーズのフレイバーもある作品。
スタジオテイクではエレキのソロが聴かれるが、ライヴではアコースティックなアレンジになっている。また、ライヴではブラスセクションが一切入らない。
(作詞・作曲:鈴木康博)

9:去っていった友へ~T氏に捧げる

小田によるアコースティックなアレンジ主体のバラード作品。ここでいうT氏について、存命かどうかも含めてハッキリしたことは不明。
非常にセンシティヴなピアノのフレーズから始まり、サビでアコースティックギターが絡んでくるというアレンジになっている。
ストリングスもこれに絡むのだが、そこまで音量は大きいわけでなく、軽く支える程度のアレンジになっている。
(作詞・作曲:小田和正)

10:心さみしい人よ

小田の作品。Aメロ、Bメロ、サビ、中間部の構成が非常に整理されている作品であり、本来はもっと高く評価されると良いと思う。
エレピ、シンセがだいぶ幅を利かせたアレンジになっている。また、中途に6/8拍子の部分がある。そうした試みはこれまでのオフコースにあまり見られなかった新機軸と言える。
(作詞・作曲:小田和正)

シークレットトラック:いつもいつも

このように表記すべきかどうか(正式表記でないだけに)迷ったが、独断でこのように表記する。前述のように2in1のミュージックテープでは、実際にクレジットされたこともあるのだから。
小田の作品で、アカペラのコーラス作品。このアルバムではスタジオテイクが収録されているが、「Three and two」の最終曲である「生まれ来る子供たちのために」のエンディングにはライヴテイクがくっついている。
なお、曲の長さは「心さみしい人よ」も含めて6分近くなる。
(作詞・作曲:小田和正)

アルバム全体の短評

個人的には結構好きな方のアルバムである。「Three and two」までのサウンドの質感と、ビル・シュネーがサウンドの面倒を見た「We are」以降の整理されたサウンドの質感とでは、前者の方が好きだ。

以下、個人的な印象を述べさせていただく。
私は、ラフで整理されていないサウンドの方が、安心して聴ける。

オフコースはむしろ、作り込まれたサウンドよりも、こうしたラフなサウンドの方が生きてくると思う。

もちろん「We are」以降のサウンドも良いけれど、何というか「工業製品」のようなテイストを覚えてしまう。

無論、そうした整理されてきれいになったサウンドを好む人も多いだろうと思う。好みは人それぞれであり、何ら否定されるべきではない。

わかりやすい例で言えば「Yes-No」という曲がある。あれの、シングルのミックスとアルバム「We are」でのミックスとを聴き比べてみてほしい。
もちろん、両者は曲の長さが違うが、シングルのミックスは、何というか微妙にサウンドが重い。
アルバム「We are」のミックスには、この重さが乏しい。

あるいは、「YES-YES-YES」でもいい。あれも、シングルのミックスとアルバム「I LOVE YOU」でのミックスは全く違う。
シングルは日本のエンジニアがしたミックスであり、いろいろとハッキリ聞こえてくる。終盤でAメジャーのキーに転調してから、その辺りの違いが顕著に出て来る。
あと、音量が微妙に異なる。アルバムミックスは少し小さめなのだ。シングルミックスはデカい。
たぶん、日本側のエンジニアと、ビル・シュネーとの感覚の違いなのかもしれない。この辺りは「We are」辺りで話した方が良いだろうから、ここではサラッと触れる程度にしておく。

このアルバムが出た翌年の1979年、オフコースは一つの転機を迎え、大きく飛躍することになる。

その辺りは、次項「Three and two」に譲りたい。

基本的に他人様にどうこう、と偉そうに提示するような文章ではなく、「こいつ、馬鹿でぇ」と軽くお読みいただけるような文章を書き発表することを目指しております。それでもよろしければお願い致します。