(6)第二部:燃え尽き症候群の原因と背景;その① はじめに

はじめに

第一部では5回に分けて、燃え尽き症候群がどのようなもので、どのような病像を取りながら進行していくのか、そしてセルフチェックのための質問票を見てきた。

第二部では、もしあなたが自分は燃え尽き症候群であると感じるのであれば、それがどのような背景の元に引き起こされており、具体的にどのようなことが原因となっているのか、というものを見ていきたい。

燃え尽き症候群を起こす要因

政府は一時期年間3万人を超えていた自殺者が年々減少しているとしてその対策の効果を強調している。しかし実際には長時間労働や上司のパワハラなどの末に自殺を選ぶ労働者のニュースは後を立たない。

極端な残業や常軌を逸するパワハラの詳細を伝え聞く度にその企業や上司を非難する声が上がる一方、その程度で鬱や自殺に至るなど本人の問題であるという論調も必ず出てくる。

仕事に関連した抑うつや自殺といった燃え尽き症候群の終末像を見る時、職場環境の問題か個人の性格の問題かという対立した二つのどちらかが原因であると考えがちである。

しかし実際には、精神的に安定した状態の労働者でも精神的に強い負荷のかかる職場環境に置かれるとやがて精神的な問題を抱えるようになると言われている一方、同じ負荷がかかってもよりストレスを強く感じる性格や人格も存在し、結局は、個人的な性格や人格と職場の環境の関係性の問題であるということは誰でも理解できることであろう。

これらの個人的な側面と職場環境という側面に加え、その根底には現代社会の環境やその国々の文化や社会という問題も存在する。

このように、燃え尽き症候群は複合的なストレスが組み合わさることによって起こるものであり、一部の極端なブラック企業や非常に偏りのある個性を除けば単一の要因が原因で引き起こされるものでは無い、ということは非常に重要なポイントである。

今回はこれらの要因を幾つか層別に分類して簡単に解説を加えたい。

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