さよならだけが人生か。でもさよならにも言い方がある。(23)

1月8日(土)。
昨日私が友人と寄席に行っている間に、
弟のところに母の主治医から
連絡があったらしい。

前回同様ミネラルのバランスが崩れている、
というのが、主な内容だが、
カリウムとナトリウムの数値が、
あまりにも崩れているため、
いつ心不全を起こして
死んでしまってもおかしくない、とのこと。

なので、3連休のどこかで面会を、
とのことだった。

まだ、すごく緊急ではないのだろうけれど、
万が一、手遅れになってしまうようなことに
なったらいやなので、
連休初日に面会のために病院を訪れた。

今回は、一度に会えるのはひとりのみ、
1時間まで面会できるとのことで、
まずは私が病室に入った。

前回よりも、目も開いて反応もあり、
聞き取りづらいながらも、
言葉を交わすことができた。

「どうしてこんなことに
なっちゃったんだろう。
言ってもどうしようもないけれど」
「つらい。早く楽になりたい」
「ごめんね、ありがとう」
といった、理解可能な言葉のほかに、

「小さな子どもが肩のあたりに
かじりついて離れない。
帰りなって言っているのに、
帰らないし数が増えている」
といった、パーキンソンの薬による幻覚と
思われる症状がでていることもうかがえた。

「そんな子どもいないよ。大丈夫だよ」
と言っても、泣きそうな顔をして、
「いるよー!!」と譲らない。

それでも、「3日前におでん作ったよ。
それからずーっとおでんばっかり食べてる」
と言ったら、かすかに笑ってくれた。

母が少し笑ってくれるだけで、
こんなに気持ちが楽になるなんて
そんな日が来ようとは、
いままで想像したことがなかった。


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