さよならだけが人生か。でもさよならにも言い方がある。(29)

1月22日。
2万円のリードデフューザーを買った。

母が入院してからというもの、
そして、彼女の人生のカウントダウンを
自覚したときから特に、
母が好きだったクイズ番組を観て、
母がしていたように家の中を整えて、
母が好きだったパン屋の
母が好きだったクリームパンを買って食べ、
母が好きだったカフェでコーヒーを飲み、
彼女がもう一度したかっただろうと思うことを
追体験してきたけれど、実際のところ、
彼女が少しでも残りの人生を快適に過ごすために、
私にできることはあまりに限られている。

食べることも、本を読むことも
もう、できない母だけれど、
よい香りを感じることはできるんじゃないかと、
ふと、思いついた。

そこで、リードデフューザーを買うために、
デパートに出向いて、あれこれ試した結果、
思い知ったのは、

3000円のものは3000円の香りがするし、
6000円のものは6000円の香りがする、

ということ。

母がきっと最後に感じる香りになるのだから、
一番気に入ったものにこだわろうと思い、
最後の贅沢品のプレゼントとして、
アンティカ・ファルマシスタという、
はじめてきいたブランドの、
グリーンティーという香りを選んだ。

美しい。
ちゃんと2万円の香りがする(笑)。

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