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あじけない

そうか、こんな感じだったっけ。
久しぶりに味わっている、この胸を締め付けるようなどうしようもない感情は、失恋の心の痛みというものだ。

おそらく最後になるであろう言葉を私がラインで送って、既読がついて、それに対して彼からの返信は無くて、そして一か月が過ぎた。
二年という長い期間続いた関係も、終わるときはこんなもののようだ。

これまでにもそんな経験はあったはずだが、今回のは特にひどいらしい。
すべての事に関して全くやる気が起きない。
食べ物が紙の味になる、というのを死刑囚の手記で聞いたことがある。そんな事があるとは想像できなかったけど、身をもって実感することになった。

これは、パンだ、とは分かるけど。
今、お米を食べている、とは分かるけど。
好きだったアイスを食べてさえ、アイスだ、ということが分かるだけだ。
そしてさすがに、お肉は食べる気がしなくて。
食べたものはどれも、口の中に間違いなく存在していて、それぞれとても主張が激しい。
それを私は飲み下すことが出来ない。

なんてあじけない生活なんだろう、そう考えたところで、酸っぱい味の液体が口の中に充満してきた。

「酸っぱい」

そう感じながら、トイレに駆け込んで、体の中身を全て吐いた。

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