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【シーズン2-8:エグゼクティブの成功マインドを磨くCEOコーチング】フォワーダーの姿勢③ ~レシーバーが自ら答えを出すようにする

(1)言いたくなっても言ってはいけない台詞


こんにちは。
エグゼクティブ専門コーチの久野和禎です。

シーズン2では、CEOコーチングの中でも、とくに重要な要素である「未来思考:フィードフォワード」を軸にお話ししています。

 ここまで、「フォワーダー」と「レシーバー」の心得や具体的な技術について説明してきましたが、今回は「まとめ」の回として「ここだけは押さえておきたい」ポイントを中心にお伝えしていきたいと思います。

 まず、「フィードフォワード」をする際、「フォワーダー」がもっとも注意すべきポイントの1つは、自らの発言によって、「レシーバー」の意識を過去に飛ばしてしまわないことです。

 「フィードフォワード」は「相手の意識を未来に飛ばす」ために行なうものですから、当たり前と言えば当たり前ですが、ついつい染みついた癖で、「どうしてそうなったんだ?」と聞いてしまうことがあります。

 「どうして?」と聞かれると、相手は「過去」のことを話します。

たとえば、子どもが忘れ物をしたとき、「どうして忘れたんだ?」と言いたくなりますよね。

あるいは、部下から「すみません。ファイルを送りそびれました」と言われたら、「どうして送りそびれたんだ! 昨日言ったじゃないか!」と言いたくなるはずです。

 もし、「すみません。ファイルを送りそびれました」と言われたら、「いますぐ送るんだ!」ではなく、一呼吸置いて、「じゃあ、どうする?」と言ってみてください。

言いたくなっても言わない。それでも言ってしまったら、一呼吸置いて、未来に意識を飛ばす質問をするのが、「フォワーダー」としての基本的な心構えになります。 

(2)潔く訂正して「未来思考」の会話に切り替える


別のシーンで考えてみましょう。
2週間ごと、あるいは1カ月ごとに定例会をしていると、「前回、こういうふうに言ったよね?」と言いたくなると思いますが、言ってはいけません。
前回の話題に触れてしまうと、相手の意識を、2週間、あるいは1カ月前に引き戻してしまうからです。
 
せっかく2週間なり、1カ月なり、前に進んできたのに、わざわざ過去のことを思い出させることに意味はありません。
 
もし、言ってしまったなら、潔く訂正してください。「おっと、それは過去のことだから、まあいいか。とりあえず、これからについて目を向けましょう」と言い直せばいいのです。
 
相手が「フィードフォワード」を理解しているのなら、「あっ、いま、部長は昔の話をしたな」とわかるはずですから、取り繕ったり、ごまかす感じではなく、「おっと失礼。未来に目を向けよう」とはっきり言うのがよいでしょう。
 
もし、相手が「フィードフォワード」について知らないのなら、「以前、こう言っていたけれど、今日はどう?」と言ってしまったとしても、「この間のことはこの間のこととして、これからどうするかを話しましょうか?」と言って、未来思考の会話に切り替えていけば、問題なくスムーズに進行するでしょう。

(3)「時間の制約」をどう考えるか


次のポイントは「時間の制約」。

結論からお伝えすると、意見、アドバイスを求められた際、社長やリーダーがどう答えるべきかは、ケースバイケースになります。どういう役目として関わるか、どういうシーンで関わるかによって、答え方は変わってくるからです。

 「フィードフォワード」の本質的な目標は、「レシーバー」が自分で答えを見つけることですので、「どうしたいか?」「どうしたらいいと思うか?」と問うことによって、未来思考で考えるように促すことがベストではあります。

 ただし、そうは言っても、「時間の制約」がある場合があります。

ミーティングや面談をしている会議室の予約時間があと5分しか残っていないとか、そろそろ次のオンラインミーティングがはじまってしまうといった「時間の制約」があると、「レシーバー」が自分で答えを見つけるのを待つのが難しいものです。

 

先述したように、「レシーバー」が自分で答えを見つけるのがベストだということは間違いないのですが、そうもいかない場合には、答えを教えてしまっても構わないのです。

 

「ミーティングの残り時間」ではなく、もっと大きな時間軸で考えた場合はどうでしょうか。

 たとえば、いまの部下の経験では、永遠に答えが出ないケースも存在します。明らかに経験が足りていなかったり、未知の分野だったりすると、上司や先輩が「どうしたい?」と聞いても、「わからないです」としか答えようがありません。

 

それでも、目の前の課題は解決する必要がありますから、リーダーは「私の考えをお伝えしますね」と言わなければなりません。原則としては「フォワーダー」の役割は「話を聞くこと」ですが、アドバイスをしたり、答えを提示すべきときもあるのです。

 

ただし、上司や先輩のアドバイスや回答が正しいとは限りません。

もっといいアイデアがあるかもしれない、あるいは全然違う答えがあるかもしれない――。そうした可能性も含めて総合的に考えたうえで、「あくまでも私はこう思う」と伝えるのがよいでしょう。


(4)すべてのコミュニケーションに求められる「コンシステンシー(Consistency)」


最後に、「フォワーダー」の心得をもう1つお伝えしましょう。

「フォワーダー」であるリーダーは、受け答えをしたり、考えて判断をする際には、「整合的」(コンシステンシー)であるべきです。たとえば、気分次第で、相手を責めてしまったり、教えなかったりするのはやめましょう。

 

実は、「コンシステンシー」を含め、ここまでお伝えしてきた内容は、特別なコミュニケーションの話ではありません。

「フィードフォワード」に必要なちょっとした技術を活用して、相手を否定するのでも、こちらの考えを押し付けるのでもなく、相手が未来に目を向けられるように促すことで、少しだけ洗練したコミュニケーションになるというのが、私の考えです。

 「ちょっとした技術」とはいえ、効果は絶大です。

本記事では基本、心得、実践的な話まで幅広く取り上げてきましたが、拙書『いつも結果を出す部下に育てるフィードフォワード』(フォレスト出版)を読んでみたり、オトバンクさんのオーディオブックを聞いたうえで、あらためてこの記事に目を通していただくと、より大きなスケールで「フィードフォワード」の全体像をご理解いただけると思います。

 次回からは、「組織の中でどうやって『フィードフォワード』を運用していくか」について、突っ込んだ話をしていきたいと思います。

 今回も最後までお読みいただきありがとうございます。

次回またお会いできるのを楽しみにしています。

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