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運動発達の視点からみた、幼稚園世代のサッカー全国大会に否定的な理由

先日、幼稚園の年代でのサッカー全国大会を開催すると言うニュースが流れてきました。

幼稚園世代のサッカーに関して、僕個人としてはメリットよりもデメリットの方が多いのではないかと考えています。


幼少期のスポーツには、将来のことを考えると、勝ち負けよりも将来に関わる要素を考えないと行けないと考えているからです。


今回は、幼稚園世代のサッカー全国大会に関して、僕が感じていることを記事にしたいと思います。



一つの運動よりもたくさんの運動経験を

デメリットを語る前に、全国大会をするメリットを書いてみたいと思います。メリットとしては、純粋に参加した子どもが勝負の楽しさを実感できるという事が考えられます。


しっかりと練習し、頑張った結果全国大会まで勝ち上がれば達成感はあるかもしれません。勝負の楽しさを感じる子もいるのではないかと思います。


ただ、ここまでメリットを書いてみたのですが、幼稚園世代の子どもがそこまで勝負の勝ち負けに執着するのかを考えると疑問が残ります。スポーツをする楽しさや勝負の楽しさは友達と遊んだり、クラブで試合をしていても得られるものであると考えてしまいます。



僕が全国大会が子どもたちのデメリットになると考える理由の一つに、「幼稚園世代の子どもには多くの運動を体験させた方が将来の運動神経は伸びる」という事が挙げられます。


一見すると、「幼少期から一つの競技に打ち込んだ方が将来のその子の運動神経は伸びんじゃないか? 」と感じるかもしれません。


しかし、子どもの運動神経の成長を考えると、一つの競技だけに打ち込むことは逆に子どもの運動神経の発達を妨げてしまう原因にもなるのです。



子どもの運動神経の発達において、幼稚園世代である6歳前後の年は「ゴールデンエイジ」と呼ばれています。この年頃に子どもの運動神経は急速に発達していくからです。


子どもの運動神経は、このゴールデンエイジの時期にどのような運動経験をしたかが非常に重要になります。


この時期には、全身を使った様々な運動を行う事が良いとされています。身体の色々な使い方で動かすことによって、全身の運動神経がくまなく発達していくからです。


蹴る、投げると行った運動はもちろんのこと、走る、跳ぶ、持つ、押す…数十個ある基本動作をこの時期になるべく多く、たくさん経験させることが非常に大事になるのです。


一方、全国大会を目指すために一つの球技に集中したとします。例えばサッカーなら蹴る、走るといった動作はうまくなるかもしれません。しかし他の動作の練習をしなければ、全身を使った運動神経をうまく発達させる事ができなくなってしまいます。運動に偏りが生じてしまうのです。


偏りが生じてしまう事で、その子が成長したさいに蹴る・走るといった動作以外の運動に対応できなくなる可能性があります。その結果スポーツの成績を落とすだけではなく、無理に身体を使った結果、最悪怪我や故障につながってしまう恐れがあるのです。


子どもの将来を考えるのなら、目先の勝利よりも、様々な運動を経験させて身体の土台を作っておく事が非常に大事なのです。



指導者、親は暴走しないか?

もう一つ僕が幼稚園世代の全国大会に否定的な理由が「子ども以上に指導者が勝利に執着する恐れがある」事が挙げられます。


子どもが勝ちたくて頑張るのなら、それは非常にいい事だと思います。


しかし、子どものスポーツクラブで、指導者が子どもよりも勝利に執着してしまうと話が変わってきます。



どうしても勝利したい指導者は、練習をよりハードにするかもしれません。子どもに対して、今まで以上に厳しく指導するかもしれません。


勝利に執着するあまり、子どもに無理な運動指導、根性論が先行した運動をさせる恐れもあります。


その結果、子どもが怪我する恐れや、運動に対しての意欲を取り下げる事が考えられるのです。



そもそも全国大会を開催するのは誰のためでしょうか。本当に子どものためになっているのでしょうか。



幼稚園世代の子どもが全国大会に出たいと思うほど勝利に執着するのだろうか。子ども以上に指導者や親が大会での勝利に執着する結果にならないか。僕はどうしてもそのように考えてしまいます。



どうしても子どもの運動指導を勉強している僕はこの全国大会をどうしても否定的な目線でみてしまいます。


これはあくまで僕自身の考えです。もちろん子どもの成長を考えて指導させている指導者の方も多いと思います。大会で勝って喜ぶ子どもも多いと思います。


ただ勝負の勝ち負け以上に、子どもにとって大事な事がある事を知った上でスポーツの育成に取り組んでもらいたい。僕は心からそう思っています。


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