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実際には撮影できない・撮影が難しい写真を広報に使うのはどうなんだろう?という話

こんにちは、フリーランスフォトグラファーのまちゃるです。

作業の合間にざっとTwitterを見ていると、もうすぐ始まる金沢・兼六園ライトアップの告知ツイートが流れてきました。

一見普通の告知なんですが、実は1枚目の雪吊りの写真は一般の方には撮影ができません。
というのも撮影場所が夜間は安全確保のため立ち入り禁止とされている場所だからです。
(地元の人でもかなり注意してツイートを見ないと気付かないと思いますが)

ただ、県観光連盟の公式情報として流れてしまっているので告知画像として適切かと言うと、かなり疑問が残ります。
(実際に指摘されている方もいました)


上記は1つの事例ですが、写真の使い方によって観光地に対する誤ったイメージを与えてしまっている事例はたくさんあります。

金沢の人気観光地の1つ、ひがし茶屋街での結婚式前撮りを検索してみると下記のような結果が出てきます。

多くのカメラマン、写真スタジオの方がこちらで撮影されていますが、ほとんど他の観光客が写っておらず、見栄えのある写真となっています。


しかし実際のひがし茶屋街は上の写真のように、日中は観光客がごった返していてどこを向けても大抵人が写真に入ってしまいます。

ではなぜ画像検索のようなすっきりした写真が撮影できるかと言うと、早朝や日暮れ直前など人が少ない時間帯での撮影 がされていることが多いからです。
(中には少人数の映り込みなら画像処理をしている場合もあるかもしれません)

また、比較的晴天の写真が掲載されているのも特徴ですが、実際には金沢は日本でもトップクラスに晴れと言える日が少なく、雨の日が多くなっています。

よって検索で出てくる写真実際に撮影できる写真に乖離が出てしまっており、そのことが「金沢に来て写真を撮ったけど、いい写真が撮れなかった」というガッカリ感をもつ観光客の方が少なからずいるという結果に出ていると感じます。

※実際に出張撮影のカメラマンとして相談を受けていると、金沢の観光客の多さや雨天の確率の高さは全国的にまだまだ伝わっていないと感じます。
その背景として、「参考にした旅行サイトやSNSでそう言ったことは書かれてなかった」という意見をよく聞きます。


同様に能登半島にあり、「日本で唯一車で走れる砂浜道路」として人気があるなぎさドライブウェイでも同様のことが起きています。

こちらは進入できるかどうかがその日の「波の高さ」によって判断されます。晴れの日でも波が高く、通行に支障があると判断されれば通行禁止となります。

通行禁止になる可能性がある旨の注意喚起はされているサイトもあるのですが、その魅力だけを記載するサイトも多いため、通行禁止の日も多い事実を知らない観光客の方もたくさんいます。

特に写真スポットとしては、愛車を入れた結婚式前撮りや夕日との撮影が人気があるのですが、通行禁止となると入ること自体ができないため、悪天候に備えて別の撮影場所も考えておく必要があります。

しかしその注意点を事前に知らなかったため、当日ドライブウェイの入り口に行ってみたら通行禁止でお手上げ・・・・というトラブルもよく聞きます。


ひがし茶屋街となぎさドライブウェイの例を紹介してきました。

実際問題として、SNSなどで誰もが気軽に大量に観光情報や撮影スポットを発信できる現在において、映える情報が優先的に投稿され、注意点や禁止事項といったネガティブな情報が敬遠されるのも仕方ないのかもしれません。

自治体や観光協会と言った公式な立場であっても、より多くの観光客を引き付けるため、より映える情報を出していきたい気持ちも分からないでもないです。

ただ、しっかり伝えるべき情報(混み具合や天候、入場の可否など)はたとえネガティブであろうと発信していかないと、観光地の誤った情報が広まり、結果的に大きなトラブルに繋がるのではないかと心配しています。


最後に、観光関係の仕事で撮影やコーディネートをさせていただいている1カメラマンからすると、観光地の情報発信をするにあたっての写真や動画の使い方を再考する時期に来ていると思います。

だいぶ落ち着きを見せてきた「インスタ映え」ですが、その裏で本来伝えられるべき情報(上記のネガティブな情報)が隠されてきたという弊害もありました。

最初の兼六園の事例に戻りますが、映えを多くの人が求めた結果、「あの人が撮っていたようなきれいな写真が撮りたい」「あの人よりいい写真が撮りたい」という欲が暴走し、全国各地のスポットでトラブルが起きています。
(進入禁止の場所に入る、公共の物や他人の所有物を壊すなど)

無数の人がSNSで発信し、多くの情報が飛び交う中でいきなり全てのトラブルを無くすことは難しいかもしれません。
ただスタートとして、自治体や観光協会など公的な発信者が情報の伝え方、注意喚起にアンテナを高く持ち、率先して実行していくことは可能なはずです。

そして少しずつ情報発信のルール、あり方を考える人が増え、適正な情報が交流されることが多くの人の利益に繋がっていくんじゃないでしょうか。


サポートしていただいたものは情報収集や撮影に使わせていただき、役立つ情報としてみなさんに発信できればと思います☆