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【考察】全ては撮影後に並び替えられた映画芸術のメタ作品【映画「Xエックス」】


ミッドサマーやラムを制作したスタジオで知られるA25の作品映画「X エックス」を観た。

今回は元から決まっていた三部作のシリーズとなっており「エックス」はその一作目になる。

2作目も今年既に公開されているらしい。


1作目からただものではないスラッシャー映画なのは感じた。
3部作である時点でストーリー性も関連する映画の作りなのは間違いない。

2作目の予告も出ていたのでそれも含めながら「エックス」の考察を書いていきたい。

あらすじ
1979年、テキサス。6人の男女が、それぞれの野心と思惑を胸にポルノ映画を撮影するため、老夫婦が暮らす農場の離れを訪れる。しかし、彼らに場所を提供した夫はどことなく落ち着きがなかった。

マキシンとパールは「同じ」何か。

作中でも度々マキシンの象徴的な化粧である青いシャドウとパールに関連する何かと同一する見せ方をするシーンが多かった。

パールの家にある人形に青いシャドウが塗ってあったり、ポルノを撮影中のマキシンとパールがフラッシュバックのように重なるなど、

あえて強調的に見せていたのはマキシンとパールは同一する何かであるということだろう。

それが時間軸をいじくった同一人物であるということなのか、魂や生き方として同じであるということなのかはまだ分からない。

ただパールの物語を描いているとされる2作目の予告を見る限り同じ役者であることや人生を辿ってる雰囲気を見ると、

シンプルに前者の解釈の方が強そう。

また時間軸で映画を操る巨匠マーティンスコセッシのメッセージを予告冒頭で見せている時点で、ほぼほぼ確定な気がしている。


キリスト説教映像とRJの発言

映画の舞台は1976年でありカラーテレビも普及している時代の中、度々移るキリストの説教の映像が白黒なのも違和感はある。

ただ単に田舎だから進んでいないという可能性はあるが、この辺も先ほど述べた時間軸に関しての伏線になると感じる。

あの映像自体は遥か過去のもので最後に明らかにされた宣教師の娘もパールであったのだろう。

そうなるとここに出てくる若い人間たち含めマキシンはなぜ老いたパールに出会うことができているのか。

これらはRJがガソリンスタンドで発言した「最初に映像を撮って、後に編集して時系列を並び替える」のような言葉に隠されていると思える。

つまりこの三部作は時系列は関係なく撮れるものを撮って後に編集して時系列も自由に操れる、映画マジックの裏もメタ的に表現した作品ということではないだろうか。

ラストシーンの警察官は目の前の事件現場をスラッシャー映画作品としてメタ的に表現して締めくくった。

この辺りも三部作のテーマの伏線を示す発言であれば、それまでなぞであった老人二人と若者との時間軸と関係性はRJの発言と絡めると若干晴れることはできると感じた。


なぜパールと夫はポルノ撮影陣を裁いたか

白黒のキリスト映像の話に戻ると、牧師は世俗による快楽を悪だと訴え、

娘に関してはソドムとゴモラの話に例えて悪魔によって連れていかれたと話していた。

キリストにとって性的変態の人間が集まる街を滅ぼしたという話もある。

性交を人種や愛も関係なく娯楽的に楽しみながら、またそれを誘発する商品にもしようとしているのはキリスト教的に悪の対象になる。

それをパールや夫が信じていたのは謎だが、彼らもまた性交を「愛を満たすためのもの」として捉えている。

そしてパールは長い間愛を満たされないでおり、夫はそれが年齢によってしてやれないことをもどかしく感じていた。

その不満こそがキリストの悪の対象として重なっていきポルノの撮影陣を裁いていたということだろう。

二人も裁くことには慣れていたことから定期的にそのような若者に土地を貸してはそれを行い、性交以外の手段として二人の愛の確認をしていたと考えられる。

パールはなぜマキシンだけを逃そうとしたのかは、おそらくマキシンだけは愛に飢えていたためにポルノを撮り女優を目指そうとしていたのを誰よりも知っていたからだと思える。

結果的に裁きの対象になりながら逃れられたのもマキシンの言う「聖なる介入」が入ったからだということだろう。

その聖なる介入は言葉面では神かとも思えるが、作品の論理的には「悪魔」だと捉えられる。

そうなると最後にパールがマキシンを撃とうしたのは彼女を裁こうとしたのではなく、現在の自分を知る彼女なりの「救い」として撃とうとしていたとも思える。

しかし悪魔の介入によってそれは妨げられ、彼女の人生がまた2作目へと続いていくといったところだろう。夫との出会いの過程も影響しているかもしれない。


A25作品は過去作も含め、ファミリーやカップルが来やすい時期とヴィジュアルを設定し見事に内容でドン引きさせるものが多い。

この「エックス」もB級スラッシャー映画に見せてストーリーがどぎつかった。2作目も相変わらず夢見る少女のミュージカルの雰囲気に見せているのは笑う。

書いている今時期は公開されているが、ぜひ一人で観に行くことを薦める。




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