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エイリアンとは何だったのか。時系列設定が断続する「エイリアンシリーズ」

エイリアンシリーズがアマプラに追加され前日譚の「プロメテウス」から、「エイリアン4」、「エイリアンVSプレデター」まで追いかけた。

周知のとおりエイリアンシリーズは元々リドリースコットが監督をした話になるが、制作側と対立しエイリアン2からはジェームズキャメロン監督を初め、続編ごとに他の監督に継承されていく稀なシリーズとなっている。

作品ごとに「エイリアン」というパッケージについて監督の世界観や解釈が見られ、単品として見れば確かに面白いものもあるのだがシリーズとして細かく見ると断続的な要素は多々あり違和感が残る。

そこでリドリースコットが創造論と宗教観から立ち返りこの世界観を自分で再定義しようと作り直そうとしたのが前日譚シリーズだったが、このシリーズでも話があまり繋がってこないまま主人公が二重構造の話になってしまい観客はついてこられず打ち切られて終わった。このシリーズの個人的な考察はは別記事で書いている。


ただコヴェナントの最後を頼りにするとどうやらエイリアンは、アンドロイドが人間やアンドロイド自らをも超える「完璧な生命体」を創ろうとしたことで生まれた異性生物ということだった。

アンドロイドは人間だけでなく創造主だったエンジニアまでも滅ぼし、神をも超える「新たな創造主」になろうとした結果がエイリアンの誕生ということでこのシリーズは終わっていく。

そこからシリーズを追っていくと前日譚が後付けになるのもはじめ、監督が違うことでエイリアンやアンドロイドの解釈が大分変って矛盾してきてしまうのも分かってくる。

シリーズの感想を含め各作品のエイリアンを追いかけながら「エイリアン」とは何だったのか考えたい。



起源背景も既に構想されていた「エイリアン1」


前日譚から追いかけると余計にこれが一番見えやすく面白かったと思える。

序盤ではエンジニアの宇宙船や謎の巨人の化石が登場するが、この段階で既にエイリアンの起源の世界観も構想しているのは垣間見えるので感動する。

前日譚3作目はなぜこの惑星にエンジニアの船と化石があったのかの経緯も描きたかったのだろうが叶わずに終わった。ただエイリアンはエンジニアの遺物を用いた実験によって誕生した生物であり、ここから船にエイリアンが侵入しているフラグとしてはコヴェナントの伏線から成立する。

この時はクルーやリプリーもエイリアンを認知しておらず男が寄生されてしまい次々とやられリプリーが生き残る。この頃からアンドロイドとユタ二社だけはエイリアンを認知しており、エイリアンを地球に持ち帰るためにクルーを任務に利用していたと自白している。

生き残ったリプリーはここからアンドロイドやユタ二社の思惑を知り疑念をもつ唯一の存在に。リプリーは地球に帰還するために再びハイパースリープに入って終わる。

シリーズとしての断続感は否めない「エイリアン2」

2144年。57年間の冷凍催眠状態から救出されたリプリーは、音信不通となった殖民惑星・LV-426の調査の為、海兵隊員と共に旅立つ。そこでリプリーたちが遭遇したのは、卵を生んで繁殖し続けるエイリアン・クイーンの姿だった……!

ここからは監督が変わり今作ではジェームズキャメロン監督が脚本から手掛ける。宇宙海兵などの登場でアクション性に特化されて面白かったがシリーズとして見ると断続感も否めない。

ここではエイリアンクイーンと呼ばれる遥かに大きなエイリアンが登場し自らで産卵する機能も持ち始める。エイリアンの中にも社会が生まれていることも同時に見られクイーンを中心として役割を担い集団で動き始めていた。

リプリーはユタニ社が顧問とする宇宙海兵で宇宙船の任務をすることになり、そこでエイリアンと遭遇し戦っていく。最後はアンドロイドに助けられ終わっていくが、リプリーやエイリアン1で構築した設定としては繋がりが適当だった。

1でエイリアンに思惑を持っていたユタニ社は2では全く認知しておらずリプリーの発言も何も聞かない無能組織の象徴のように変わり、アンドロイドも思惑としては邪魔なはずのリプリーの撤退を最後に救うという意味では続編の展開としては特に繋がってない作品だった。エンタメ性に特化した単作として解釈している。


何もかも繋がりを破壊する「エイリアン3」


惑星LV426から離脱したスラコ号は突発事故に見舞われ、リプリーたちは救命艇で惑星フィオリーナ161へ不時着。ひとり生き残り労働矯正施設に収容されたリプリーは、その星が過酷な環境にある監獄星である事を知る。

こちらも2で共に脱出した少女とアンドロイドは不時着によって退場させられリドリーだけが生き残る。

序盤から2の繋がりは早々に破壊され監督が変わるごとの弊害が垣間見られるが、ストーリーとしては誰も上手く引き継ごうとして制作されておらず単独作品が羅列していることに気づいてくる。

舞台は囚人が労働施設として収容されている監獄星で過ごしエイリアンと戦うことになる。今作のエイリアンは犬に寄生し四足歩行のタイプとなってなんでもありに。

正直最後のリプリーとユタニが送ったアンドロイドの会話の件ぐらいでしか見どころがない。ここでようやくリプリーとユタニの思惑の対立の話が復活する。

エイリアンを地球に持ち帰りたいユタニは寄生したリプリーを研究材料として捕獲しようとするが、それを止めたいリプリーは溶鉱炉に飛び込みあっけなく死んでしまう。

2の単独要素を破壊したのはまだ理解できたが、結局引き継いだ1の設定も簡単に終わらせていてひどかった。パニック映画としても特に面白くなくシリーズでは一番酷評されてるのも分かる。


掟破ってまで無理矢理蘇生させた「エイリアン4」


エイリアンを宿したリプリーの死から200年。エイリアンの軍事利用を考える者が彼女をクローンとして再生し、その体に宿るエイリアンを摘出する。そして、宇宙船内での養殖が試みられるが、不測の事態が発生し、リプリーは宿敵と戦うことになる

3で終わらせられないと思ったのか死んだリプリーをエイリアンの血液を利用したクローンとして復活させ掟を破りながら蘇生させた4作目。無理矢理の設定には萎えるが、エイリアンと戦うエンタメ性としては2に引けを取らない面白さだった。

今作のエイリアンは実験体の人間の遺伝子を組み込み、知性を獲得し水中でも泳ぎ始める。

研究機関もユタニ社を買収した新たな組織となっており宇宙船に属する謎の機関で全く新しく設定を作りなおした話になっていた。

終盤に出てくる実験体の人間をエイリアンに組み込また途中段階の姿は露骨に表現されており、生物兵器として利用しているユタニ社以上のその先の非道さも描いている。

またアンドロイドはエイリアンと軍の悪用を察知し自ら改良されたモデルとして登場し、エイリアンは「ニューボーン」と呼ばれる新種まで登場しここまで産卵してきたクイーンまでも殺してリプリーを母親と認識するまでになる。

世界観としては続編シリーズと言うよりリブートに近い。そういう位置づけで作り直したかったのだろうし主人公変えてしまえば成功する可能性もあったが、シリーズとしては蛇足感がぬぐえないまま終わった。

アンドロイドによる完璧な創造物であったエイリアンがまた人間が作り替えるサイクルにまで届き始めているところは面白かったしそこを描きたかったのかもしれない。


アンドロイドによって生まれたエイリアンは生物兵器利用としてユタニ社と目論まれたが、それが想像以上に変幻自在に進化してしまい遂には開発元までも全滅させる異生物に至った。

何百万年も前から存在していた生物を残して進化し続けた生物が宇宙にいるかもしれないというロマンと、

その領域を侵そうとするたかだか数千年ほどの歴史しかない人間やアンドロイドが出会っても太刀打ちできるはずがないむごさも教える作品だったと思える。

シリーズを通じてリプリーはニューボーンと共に共生も計れるほどの存在になろうとしたが人間との対立性は変わらず、最後まで地球に持ち込まないための選択を選び続けて終わった。

前日譚でもそうであったが現代では地球移民を計る視点での宇宙探索も現実化し、地球に住むことができなくなればエイリアンとの共生というゴールも外せなくなる。

最近はエイリアンのリブートの発表もあった。過去はエンタメ性としては面白い作品となったが、未来における哲学の掲示のリブートも期待したいところもある。

リブートはやはり1から2に繋がる間から始まる時系列らしいので、ストーリーの断続性はなるべくないリドリーの設定を踏襲した良い続編を望む。





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