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誰も知らなかったGTアカデミーが果たした功績【映画「グランツーリスモ」】

公開当時はトップガンに匹敵するほどの好評を得ていたが、確かに実際に観てみるとゲーム映画とは思えない出来だった。

自分はアマプラで観たがこれもトップガン同様、映画館で音の臨場感を楽しむ映画だったのだろうと惜しまれる。

あらすじ
ドライビングゲーム「グランツーリスモ」に熱中する青年ヤン・マーデンボローは、同ゲームのトッププレイヤーたちを本物のプロレーサーとして育成するため競いあわせて選抜するプログラム「GTアカデミー」の存在を知る。そこには、プレイヤーの才能と可能性を信じてアカデミーを発足した男ダニーと、ゲーマーが活躍できるような甘い世界ではないと考えながらも指導を引き受けた元レーサーのジャック、そして世界中から集められたトッププレイヤーたちがいた。

驚いたのはGTアカデミーやヤンは実在し、史実を元に描かれた作品だったということ。映画ストーリーとしてもここが終始面白さの肝だった。

後半からは実際のレース映像と展開が話の軸になっていくがグランツーリスモをオマージュした演出やサウンドがよく盛り込まれており、エンターテイメント映画としても非常に丁寧に作られた作品だったと思う。

ストーリーとしては正直かなり王道的な話の展開なのでそこまで書くこともないし実際に観てもらって各々楽しめる程度のものだと思う。

また終盤でヤンを苦悩させる事故は実際にはあったようだが、史実としては彼がキャリアを順風満帆に積み上げたかなり後の出来事だったり、デヴィッドハーバー演じた鬼教官の存在も映画を盛り上げるためのオリジナルな存在だったらしい。

史実に厳しいひとは興ざめかもしれないが個人的にこういう作品を盛り上げるオリジナル要素が上手い作品は好みであり、正にゲームジャンルを使ったエンタメ映画としては繊細でレベルの高い作品だった。自分は面白ければ正直なんでもよく、そういう凝らした工夫が好きになる。

特にプレーヤーならではにおける映像視点とシナリオ演出は上手かった。制作はほとんどPlayStation Studioに任されたらしいが、衰退が続く映画業界においてもゲーム会社が一石投じる形で進化し続けている姿が近年見られるのは救われるところである。

グランツーリスモに関しては初期の2とPS2に出た4の2作しかプレイしていないライト層ではあるがタイトル作品としても満足できる作品だった。

一つ惜しかった点で言えばメインテーマが全く流れなかったことだろうか。

クライマックスは作品の邪魔をする意味で無理だったとしてもせめてエンディングにでも流してくれたらおじさんプレーヤーは爆上がりした映画になっただろう。正直見る前からあれを聞きに楽しみにしてた部分もあったのでそこだけは残念だった。


誰も知らなかったGTアカデミーの功績

この作品で知る人は多かったであろうGTアカデミーの存在。自分もその一人ではあるが驚いた。

遡ると2008年から始動して選手育成を始めている。ゲーマーの潜在能力をプロスポーツ選手として最大限に活かすことは現代では当たり前になったがその先駆けとして既に信頼していたのはここが一番早かったと思われる。

きっかけは作中にもいた日産のダレンコックスの提案

「グランツーリスモのプレイヤーは,プロのレーシングドライバーになれるかな?」とダレンから聞かれ,僕はその当時からそこに関しては確信があったので,「絶対なれると思うよ」と答えました。そこから,このプロジェクトはスタートしました。

日産としてはある種車を売るためのマーケティングの要素も大きかっただろうが、グランツーリスモクリエイターの山内氏としては2や3を制作した時からその確信はあったらしい。

映画で描かれたヤンは2011年からのキャリアだったが、既に2009年でアカデミー初期の生徒ルーカスオルドネス氏がヨーロッパのレースで2位となりわずか1年で表彰台の選手を輩出している。

リアルとシュミレーションの垣根はGTアカデミー初開催1年目から既に取っ払うことに成功しており、グランツーリスモプレーヤーが世界クラスのレーシングドライバーになれることを証明した。

映画のヤンでもいえるがトップクラスにいる人間たちは既に人間性が素晴らしいために実際のチームに加わってもレベルが上がるのは目に見えていたのだとか。1年目から初心者扱いは全くレーサーからもされずに認められ、環境の機会を与えるのがGTアカデミーの存在意義だったとも語っている。

GTアカデミーの功績は追えば追うほど素晴らしいが、そこに繋がったゲーム「グランツーリスモ」としての功績も非常に大きかったのは改めて感じられる。

当時のレーシングゲームはクソゲーと言われるゲームも多かった。今は小戸スピードや音が少なかったりだとか、ハンドリングが硬くてレースにならないゲームが多かったのはライトな自分でも感じる時代だった。

その中で全てのストレスを排除された画期的なゲームがこのグランツーリスモの登場だったとか。その後も周知のとおり現在まで進化スピードについてこられず一強で今やプロの現場でも必要不可欠な趣味レーションソフトである。

個人的に功績として大きかったと思うのはこれが全年齢対象で作られ販売されたことは素晴らしかった。日本でもプレイステーション2時代まではリッジレーサーや頭文字D、首都高バトルなどキャラゲームも含めてレーシングゲームが軒並み販売されたが、全て一定のプレーヤーに限られた層に向けてのゲームばかりだった。

グランツーリスモにおいては登場する車の種類やコース、シュミレーション技術やゲーム性全てを観ても、世代やプレイ層を絞ろうとしたマーケティングはなく、男女や子供でも刺さるようなゲームだった功績は大きかったと思える。

ヤンの話の場合は違ったがグランツーリスモにおいてはファンだった大人から子供に継承されやすくそういったレーサーが多かったのも聞く。

GTアカデミーに限らず無茶苦茶な感覚で運転していた昔の人より、現代の若い人の方が危機管理における認識力の素養を持ってる子が多いのも子供のころから運転シュミレーションに触れやすかった見えない功績も個人としても感じるところはある。

GTアカデミーの活動は10年を機に日産のダレン氏が退職したことで一度区切られたらしいが、リアルとシュミレーションの垣根を外し実際に育成として輩出したことで証明した役割は現代のプロスポーツ全体の発展においても潤文に役割を果たしたと言えるだろう。






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