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#10 短編空想怪談「窓の外」

私が高校生の時の話しだ。
私の実家は地方の田舎で、どこへ行くにも自転車か車移動が普通で、家の周りも田んぼや畑が囲んでた。

その日も学校が終わり、自転車で家に帰る途中だった。
田んぼを挟んで向こうに誰か居る。
時間は夕方の6時頃、夕飯時で買い物なら駅前や商店街の方に行くだろう。
もしくは散歩か、今が買い物の帰りか。

目の端にちらついた時はそれくらいで、気にはしなかったのだが、妙に後から気になってくる。
何故なら、ずっと視界に入るか入らないかのギリギリに居るのだ。
信号待ちをしていて、
ふっと横を確認するとやはり、畑や田んぼを挟んで一本向こうの道にいる。
行っても行っても付いてくるその人影が怖くなり、自転車を全速力で走らせ家路を急いだ。
帰ってくる頃には見えなくなっていた。
「あの人影は何だったんだろう…」

家に着き、夕食を済ませ、夜寝る前に宿題をしている時だ。
何となく、あの夕方に見た人影が思い出された。
気持ちが悪いが頭からどうしても離れない。
仕方なく宿題は一旦やめて窓を開けた時だ、
夕方に見た人影がじっとこちらを見て、家の前に居る。
影しか分からないが、何となくこちらを見ている気がした。

直ぐに窓を締めて、父を呼んだ。
「お父さん!私の部屋の前に誰かいる!」
私の部屋は一階の端、子ども部屋がそのまま私の部屋になっていた。
父は家から飛び出し、外に面した私の部屋の外へ確認しに行ったが父は「誰も居ない」という。
そんなはずはないと、自分でも確認したが、確かに誰も居ない。
見間違いだったのか、「今日はもう遅いから寝なさい」と両親に言われ、結局その日は眠る事にした。

明くる日の夜。
どうにも昨日の人影が忘れられず、もう一度ゆっくり窓を少しだけ開けて確認すると、やはりまた居る。
今度は静かに父を自室に呼び、窓から見てもらった。すると父から「誰も居ない」と言われ、自分も確認する。
父の言った通り誰も居ない。
自分の気にしすぎなんだろうか?
「明日もう一回確認してみよう」と父から言われ一旦はそれで落ち着いた。

3日目の夜もやっぱり誰か居る。
今度は警察を呼んだ。
警察の人達は直ぐ来てくれて、周辺も確認したが、田んぼや畑しかないそんな場所に人が、隠れられる場所はなく、結局最終的には私の勘違いで終わった。

流石に母親から「いい加減にしなさい!」と怒られ、その謎の人影は私の勘違いで片を付けられたが、その次の日もその次の日も、夜に窓の外を見ると誰かが居る。

「あれは私の勘違い、あれは私の勘違い」
そう自分に言い聞かせながら、私は自室の窓を昼間しか開けなくなった。

ある夏の夜。
相変わらずあの人影は私にしか確認出来ず、居なくなる事もなかったが、
近づく事もなかったので多少は怖かったが放っておくこともできた頃だ。
その日も窓は開けず、クーラーをつけて寝ていた時だ。

いつもはタイマーで目覚ましと同時にクーラーも切れるようセットしたのだが、その日は夜中に暑くて目が冷めた。
「クーラー付いてる?」と思い、確認するため起きると、自室にあの人影が居る。
余りの恐怖に一瞬固まったが、その人影も姿を目撃されるや否や消えた。
「え?」というその驚きの勢いで、思わず窓の外を確認すると、初めて見た時と同じ距離感で、畑や田んぼを挟んで家の向こうにいる。

「あの人影、もしかして近づけるのにワザと近づけないフリをしてた…?」

不意にそんな想像を巡らせてしまい血の気が引いた。
結局その日は居間で寝た。
次の日、父に内緒で父のゴルフクラブを拝借し、寝たフリをして窓を見ていた。
すると、あの人影がゆっくり窓をすり抜け、部屋に入ってきた。

その光景に恐怖しながらも、布団の中で隠し持っていたゴルフクラブを握りしめ、撃退の瞬間を狙う。
部屋の中央で止まりそこから動かなくなった。
今だ!と思い叫びながら布団から飛び出し、その人影に殴りかかるが、飛び起きた瞬間には消えて、ゴルフクラブは空を掻いてテーブルを殴打。

叫び声を聞いて両親が飛んできたが、部屋に居るのは私だけ。




その後、
ゴルフクラブを歪ませダメにした事を父に叱られたが、人影は現れなくなった。
その人影がお化けだったにせよ、何にせよ、その人影の目的は何だったのか、もう誰にも分からない。

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