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#3 短編空想怪談「迷惑メール」

Fさんがまだ大学生だった頃の話しである。

Fさんの元に一通のメールが来た。
そのメールには本文が無く、画像データが一枚のみ、意味が分からなかった。

その画像も不可解で
画面全体が真っ暗で何も写っていない。
送信元も分からず、迷惑メールだろうとFさんは
深く考えずにそのメールを削除した。

その数週間後
また件の迷惑メールが来た。
相変わらず、本文は無く添付された画像は真っ暗。
ただ、今回は少し違った。
ほんの少しだが明るくなっている。
写っているのは、シルエットのみで、四角い長方形の物が雑然と並んでいる。
ビル群の様だった。
とはいえ、まだ暗くて分からない。
なんとなく気味が悪かったので、そのメールも直ぐに削除した。

それから、その送信元の分からない迷惑メールは数週間から数ヶ月おきにFさんの元に届いたが、
中身を見ないで直ぐに削除するよう努めた。

返信をしなかったせいかなんなのか、
いつ頃からかその
送信元不明の迷惑メールは来なくなった。

そうして何年かが過ぎ、Fさんはすっかりその存在を忘れていた。
Fさんは結婚していた。
またあのメールが来た。
だがそのメールが件の迷惑メールだとFさんは気づく事が出来なかった。
なぜならそれは何故か妻のメールアドレスで来ていたのだ。

Fさんはそのメールの存在自体を忘れていたし、妻のメールアドレスだったので、家族のメールを開く感覚でそのメールを開いてしまったのだ。
メールを開いて本文の無いところで何かおかしいと思い、ハッと思い出した。
「あのメールだ!」気づいたがもう遅い。
本文を探して下へスクロールしたら、やはり
また画像が一枚。
今回ははっきり見える。
そしてあの四角い長方形の正体が
ここで判明したのだ。

墓石だった。
何もかもが意味不明だった。
何故今になってまたこの迷惑メールが来たのか。
何故妻のメールアドレスで来たのか。
そして最も不快だったのは、その墓石に彫られた名前は妻の名前だったのだ。

その後、妻のメールの送信履歴を確認したが、やはりそんなメールは送信されていなかった。

後日、妻から離婚届けを突き付けられ、離婚した。
正にその日、また送信元不明の迷惑メールが来ていた。
やはり本文は無く。画像が一枚。
画像は振り出しに戻るように真っ暗だった。

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