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#11 短編空想怪談「深夜のコンビニ」

僕の家の近所に新しくコンビニが出来た。
僕は一人暮らしで、仕事柄夜10時前後の帰宅や、遅い時は11時になることもある。
駅前にはスーパーはあるが、そのスーパーも10時を超えれば閉店してしまうので、このコンビニはありがたかった。

今日も仕事終わりに夕食を買って帰ろうと帰りにコンビニに立ち寄り、弁当や夜食を物色し、食料を買って帰る。
そんな日常が続いていた。

ある時気づいた事がある。
雑誌のコーナーに必ずかわいい女の子がいる。
いつから彼女もこのコンビニを利用してるのかは分からないが、気づくといつも居る。
パステルグリーンのパーカーに、少しサイズの大きめなデニムを履いていて、髪型は茶髪のポニーテール。

簡単な服装をしてることから、恐らく近所に住んでるのだろうと推測は付いた。
「この娘いつもいるなぁ」
と思いつつも話し掛けるわけでもなく、後ろ姿と横顔だけを眺めていた。

そのコンビニが出来て半年が経った頃。
彼女は突然そのコンビニに来なくなった。
引っ越したのか何なのか、僕は残念に思っていた。後ろ姿と横顔は可愛かったし、声をかけるタイミングも沢山あった。
何より、あんなにいつも居たのだから彼女だって僕の事を認識していたと思うし、一声かけても良かったかなと思っていたが、居なくなったのだから仕方ない。

そうしてまた一月程経った頃、彼女はまたコンビニに姿を現した。
前と変わらない髪型、服装も部屋着のような簡単な格好だ。
「良かった!また会えた!」と思っていたが、結局声を掛ける勇気は無く、その日も彼女の後ろ姿と横顔だけ眺めて満足していた。


僕の家は駅から向かうと、T字路を曲って数メートル先にあるアパートで、コンビニはそのT字路の曲がり角、道を挟んで向こう側で大通り面している、入口が曲がり角側。
外から雑誌コーナーを見ようとすると、帰り道が行って戻るか、そのままコンビニを回り込んでコンビニの裏道から帰ることになる。

それまでは、彼女の顔を見るためにわざわざ行って戻ったり、コンビニを回り込んで帰るのも億劫だったので、外から彼女は顔を見ようとはしなかった。
それに、そんな見方をしてしまったがために、気持ち悪がられてそのコンビニに来なくなるのもイヤだったし、そんな事になれば声を掛ける機会すら無くなってしまう。

でも今は心境が違う。
「また彼女が居なくなってしまうかもしれない」
そう考えたら顔くらいは見たいと思い、少しドキドキしながら、角側の帰り道には向かわず、外側から雑誌コーナーに向かいコンビニを回り込んで裏道から帰ることにした。

予想通り彼女の顔を見る事ができた。
できたのだが、直ぐに僕は彼女の顔を見てしまった事を後悔した。
というのも、彼女の顔半分は殴られたのか何なのか青く腫れ上がり、頬にも切り傷がある。

通り過ぎ様、一瞬だったので見間違いかとも自分の目を疑うも、あの顔は忘れようがない。
誰かから暴行を受けてるのは確実だった。

僕は怖くなりその場から逃げる様に直ぐに帰って、彼女の顔を忘れるようにした。
そしてその次の日。
怖いながらも結局気になってしまい、もう一度確認するために深夜、コンビニに向かうとやはり彼女は居た。

しかし今度は、服もいつもの部屋着のような服装なのだが、所々に靴の跡があったり、内側から滲み出た血の跡の様な痕跡もある。
さらには、髪の毛も前までは綺麗な茶髪だったのに、今は昨日と変わり、無理やり切られたかのように切り口がバラバラで一部は毟られてる様にも見える。

「このままじゃまずい…」
そう思い、多少の下心はありつつも彼女の力になれないかと声を掛けた。
「あの、すいません」
声を掛けると彼女が「はい?」とコチラを振り向いた。
その顔には相変わらず酷い青痣と切り傷、そして痛々しいのは目玉が無くなっている事。
目玉がくり抜かれている。

思わず悲鳴を上げてその場に尻もち付いて倒れるとレジの方から店員さんが「大丈夫ですか?!」と走り出して来てくれた。

気がつくと彼女は居なかった。

「大丈夫です」と答え、買い物を済ませ足早に帰った。






それ以来、そのコンビニには行ってない。

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