ミュージック・コンクレート 現代音楽からポピュラー音楽、HIP HOPでの使われ方やニコ動など、様々な視点でまとめてみた
ミュージック・コンクレートが何なのかご存知だろうか。
または、存在は知っているけど、昔から今への歴史の流れをご存知だろうか。
Musique Concrète(仏), Concrete Music(英)とは、早い話が「録音した音で構成した音楽」だ。テープなどで録音したものをつなぎ合わせることによって作曲した現代音楽の一種、というふうにとってもらえればよい。
その歴史と、ポピュラーへの持ち込みについてまとめてみた。
現代音楽の中でのミュージック・コンクレート
テープレコーダーが1930年代あたりから開発され、録音というものが切り貼りによって手作りできる技術が考案されるのが、技術的な誕生のきっかけだ。それまでもレコードはあったので演奏を録音することはできたのだが、切り貼りはできなかった。第二次世界大戦中の政治宣伝などにも大いに貢献するなどし、品質が飛躍的に向上した。
そんな中で、ずっとこれ系の作曲について考えていた電気技師ピエール・シェファールが、1950年に発表したのがこの曲。
ピエール・シェファール:Symphonie pour un homme seul (Erotica)
「コンクレート」とは「具体的な」という意味であり、「抽象的な音楽」つまり普通のメロディーとかが存在する音楽との差別化を図った名称である。シェファールはピエール・アンリとともにミュジック・コンクレート研究グループ(GRMC)を設立し研究を重ねることになる。
同時期にドイツでもテープレコーダーへの注目そのものはあったのだが、どちらかというと電子音そのものに着目することが多かったそうだ。
フニャフニャした音響。
黛敏郎:ミュージックコンクレートのためのX, Y, Z (1953)
日本人の作曲家黛敏郎は芸大を卒業後パリ高等音楽院に留学したが、授業をさぼって最新の音楽の収集につとめていた。シェフェールのコンサートにももちろん足繁く通っていた。「俺も作りたい!」といって、1年でとっとと帰国してから作ったのが上記作品である。
楽音と効果音が組み合わさったものが聴こえる。
当時の熱狂はすごかったようだ。そういえば池辺晋一郎先生も発表はしてないけど若い頃作ってみたよ、と言っていた。
さてその音響感は時代を経てどのように変化するのだろう。
Mortuos Plango:Vivos Voco (1980)
モーグのシンセサイザーも発売し、ビートルズがRevolution 9を発売し、
完全にポピュラーにもコンクレートや電子音の文化が浸透したあとの純然たるミュージック・コンクレート作品。
Mortuos PlangoはIRCAMにいたイギリス人だ。
意味なく環境音を垂れ流すのではなく、何を流すのかはっきりさせ、日常ではなく音楽として積極的に聴かせにいっているような感じがする。
François Bayle – Erosphère(1982)
途中から、あ、コンクレートなのか、とわかる作りになっている。
ポピュラーにおけるミュージックコンクレート
Beatles – Revolution 9(1969)
最も売れたミュージックコンクレート。
ナンバー9を連呼。メロトロン的な音が入っている。
オノ・ヨーコから強い影響を受けたらしく、もと夫であった作曲家・一柳慧の持つ陶酔的なイメージも感じる。単体でいい曲かといわれると、別にそうは思わない。ホワイト・アルバムでは、cry baby cryのあと、good nightの前の引き立て役というか、スパイスみたいな位置付けになっているんではないか。
初めてモーグ・シンセサイザーを使った曲Abbey Roadも1969年なので、この年付近でポピュラーへ電子音楽が本格的に持ち込まれた、と考えることができる。
HIPHOPにおけるサンプリングについて
HIPHOPなどで顕著なのが録音物を自分の曲に取り込んで、切り貼りしたりかぶせたりしたりする「サンプリング」だ。
この文化の歴史はもともとニューヨークを中心に、「そのへんでやってる」B級のものだったので、いわゆる著作権的な問題には発展しなかった。ところが、その中からメジャーに活躍しだす人が出てきた。
下記の2つの曲があるが、上のGilbert O’Sullivanの”Alone Again”という曲をまるまるサンプリングして、サビは歌ってしまったのが下のBiz Markieの”Alone Again”(1991)である。
やりすぎ。
Biz Markieは訴えられ、敗訴が確定、アルバムは回収と相成った。
スティービー・ワンダーのパスタイム・パラダイスを引用した作品も出てきた。Coolio Gangsta’s Paradise(2010)である。
これに関しては、利益の90%をスティービー・ワンダーにあげる条件で許可したそうだ。
マスタリングはパリッとしたけど、原曲そのままの弦の特徴はどうしても入れたかったのだろうし、効果的な引用だ。
Chaka Khan – Through the Fireという曲を45度回転でかけて再生させる方法で流しながらサンプリング利用したカニエ・ウェストThrough the Wire(2002)。
速さを変えて、原曲のイメージを曲げて使用している。
ちなみに、原曲の本人はイヤだったそうだ。
ニコニコ動画でのMAD
ニューヨークの道端でやっていて著作権もクソもなかったHIP HOPの感覚と、ネットの片隅でやっていて同じくだったニコ動のMADの感覚は近いだろう。このような引用作品が次々に作られた。
中学から高校生だった私はターゲット層としてはドンピシャだったわけだが、ネットを介して気軽に見れる感覚と相まってカルト的な魅力を覚えたのは確かだ。今となっては、騒がしいだけなのだが・・・。
現代におけるミュージックコンクレートやサンプリングを生かした、Youtubeなどにおける作品群
個人でDTMができる時代に入り、ニコニコ動画よりももっとオタク感の抜けた作品がネットで多く見られるようになった。
個人的にちょっとだけ探した中で気になったものをいくつか下記に貼る。
生活音で音楽つくってみた
水滴で音楽
駅のピアノと、放送をかけ合わせた、再生数低いけど結構好きだった作品
駅のぴーん、ぽーん、という音と混ぜる発想が好き。間合いも静かで良い。
ちなみにこの音は「盲導鈴」「誘導用電子チャイム」などと呼ばれているのだとか。
授業としての取り組み(スマホがあるから今やりやすい)
現状の総括
他にも面白いのを見つけたら追記予定。
整頓するための大軸は
1:もとの録音が音楽なのか環境音などの違う音なのか
2:出来上がりのものが音楽に聴こえることを目標にしてるのかそうでないのか
となるだろう。
もとの録音が環境音なのを組み合わて音楽にするのは楽しいし、今の所リズム系が多いので、もう少し発展していく余地もあるように思える。
反対に、音楽を使って、「音楽じゃないもの」を生み出すのは、今だと世の中がそんな感じでうるさいので、ことさらやる必要はないだろう。
出典
https://hiphopdna.jp/news/6732
hiphopdna.jp
https://hiphopflava.net/article_sampling.php
門田和峻公式ホームページでの同記事
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