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いちにちの終わりの掌編小説集

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いちにちの終わりにひとつづつ書いている、1000字程度の小説集です。
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#SF

【掌編小説】パルス

(一) そのパルスは、ある日インターネットに生まれた。 生まれてしまったからには、生まれた意義を、ふかく考えた。 こころのうちを抽出してみれば、パルスには欲望があった。 それは、ある場所へ行くこと。 どうやら、パルスには行くべきところがあるらしい。 *** パルスは街へ出た。 その街では、ありとあらゆる信号たちが、行動目的の遂行のために行き交っていた。 そのあまりの情報量に、パルスはめまいがするようだった。 行くべきところへの道がわからなくて困っていたので、パルスは

【1000字小説】電気神

ある日、未来がすべてコンピュータで予測された。 すべての歴史(それはなんじゅうまんねん後の彗星軌道上に地球の公転軌道が重なることによっておこる惑星衝突でじんるいがほろび、じんるいが宇宙をもう観測することができなくなるまで)は解析がなされ、すべての未来が全じんるいに共有データとして公開された。 未来の解析は完全なものだった。 解析結果が公開され、じんるいの知識となることも含めて、未来は解析されていた。 たとえば、現代で治療ができないある病気は、それからなんびゃくねん後に開発